2013年1月21日 (月)

「清く! 正しく! 潔く!」 真中みこと

清く! 正しく! 潔く! ? 1 (Ray文庫)

        真中 みこと 主婦の友社 2012-11-29
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こちらもエブリスタより。面白かったので二巻続けて読み終わりましたが、
何ともいえない「デジャヴ」な感じが否めない小説でした。何のデジャヴ
かって? 少女漫画「はぴまり」の。微妙な設定やキャラの性格は違う
ものの、これがウケるってことは、世の中の女性が求めるのはコレかと。

川岸菊乃、28歳。そろそろ結婚を焦りはじめるお年頃。ところが、
結婚を約束していた恋人が浮気、そして破局……。結婚はしたいけれど、
また1から始める恋になかなか積極的になれない。そんな菊乃の元へ、
心配した両親からはお見合い写真が届く日々。「知りもしない人と
結婚なんて、絶っ対、嫌! ! 」。いい加減うんざりしてそう突っぱ
ねる菊乃に、「それじゃあ、私と結婚しましょう。知っている相手
なら文句はありませんよね」と名乗り出たのは、“冷酷メガネ"と
恐れられ、菊乃が苦手とする上司、有沢清吾だった。……って、
そういう事じゃないんですけど! !菊乃の知らないところで、どんどん
進んでいく結婚話。マイナスから始まった出会い、そして、いきなり
の夫婦生活! ?二人の結婚生活はどーなる?

唐突ですか、この本は二巻の方が面白いです。一巻はとってつけたような
恋愛漫画にありがちな、「ありえないと思っていた男と結婚して
実はいい恋愛に発展する」というものでした。「エブリスタ」という
小説投稿サイトの関係上か、素人作家が延ばし延ばし書いている印象
があり、ストーリーを最後まで詳細に考えずに書き始めた感がありました。
その点二巻目は、自分が書いているキャラの個性を引き立てようと、
弟やその他の旧友などが登場し、人物像がようやく浮かび上がってきた
ような気がしました。恋愛漫画にありがちな、二人だけでラブラブ、
というような話は、小説ではぞっとするほどつまらない事が分かります。
(だからこの本は二巻目まで読んだほうがいいです)ところで、
この菊乃さんが結婚することになった「冷酷メガネ」さんですが、
読んでいてもどうも冷酷メガネっぽくありません。彼は冷酷メガネで、
という記述があるだけで、どのような事をするから冷酷メガネとして
恐れられているのか、という深みがあったら、もっと面白かったろうに、
なんて思いました。しかしながら、ベタでありがちな恋愛小説をつい
読んでしまうのは、最後は絶対にハッピーエンドで終わる、という
暗黙の了解があるからだとも思いました。間違っても、夫が途中で
死ぬなんてことは、恋愛小説ではないのです。安心、安心。

★★★★☆*86

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2013年1月 6日 (日)

「溺れる獣と甘い罠 1」 松崎真帆

20130106_2
スマホで読める電子書籍サイト「エブリスタ」で人気を集めて、
満を持して書籍化された本です。電子書籍から紙媒体に!何だか
それも悪くない気がします。2巻も話が続くようで、まだ話の途中。
内容は恋愛小説というか、女性向け大人の小説というか、そんな所。

広告制作会社で働く羽村澪。彼女の密かな癒しは、取引先の憧れ
のキミ・神谷響への淡い想いだった。しかし、完璧超人の皮を
被った同期のオレサマ・長瀬恭にその秘密を知られ、体の関係まで
持つことに。一方、憧れの神谷からもアプローチを受けた澪。
甘く意地悪な悪魔・長瀬と、クールで優しい王子様・神谷の間で
戸惑い、揺れ、迷う。好きじゃないのに、愛しい。好きなだけ
なのに、苦しい。澪の結論は…。(amazonより)

そもそも、わたしは恋愛小説が嫌いなんです(断言)が、その
理由の一つとして、市川拓司などが挙げられます。市川さんの文章
自体が苦手というよりは、「恋愛小説なんだからこういう気持ちに
なるの分かるでしょ」的なラブストーリーが性に合わないようです。
恋愛小説というのは、恋愛をしたことがない人をさせたい気分に
するように書くか、恋愛に疲れた人に、疲れますよね分かります的
に書くのが親切ではないかと思うのです。恋愛している最中の人は、
自分の恋愛に満足している状況なわけで、問題はその他の方々では
ないか、と思うからです。話がだいぶそれましたが、この本は、
大人の女性が読みたい淫らな描写のある、「少女コミック」を
文章化したような本でした。物語の内容はズバリ恋とセックス。
それ以外の何者でもありません。いつも純文学と呼ばれる本を多数
読んでいる人間としては、恋とセックスのために仕方なく物語が
進んでいる感がどうもいなめない気分になりました。どこか、連続
ドラマのシナリオを読んでいる気分になるのです。恋とセックスの
ために、脚色はない。しかし、文章は読みやすく、とても惹きこまれ、
世の中の女性は、そうまさにこういうありそうでありえない、
非現実的でさっくりとした物語を求めているんだろうな、なんて、
思ったりもしました。小説は読まないけど、少女漫画は読む、
なんていう女性には、活字に触れてもらういい機会のようにも感じます。
続きが気になるので(気になるという時点で面白い証拠ですが)、
もちろん2巻目も読みますが、読み終わった後に「で?」という
感情が浮かばないことを願うばかりです。読みやすくていい文体
なので、この何とも言えない深みのなさにもどかしさを覚えます。
しかし、これが世の中の大半の人が求めているものなのかもしれない。
それにしても、ここでも「オレサマ」キャラ登場。草食男子では
煮え切らない女子が起こした流行でしょうか。

★★★★☆*87

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2012年11月 7日 (水)

「人生がときめく片づけの魔法」 近藤麻理恵

20121201_4 

わたしの人生を変えてくれた本でありました。わたしは昔から物を捨て
られない性分……しかも本やCDを買い漁るので、部屋はみるみるうちに
物であふれかえる。仕方がないと諦めてきた人生でしたが、心のどこかで
きれいな部屋に住みたいと思ってました。だって人を呼べないんだもの笑。

この本は、「一度片づけたら、二度と散らからない方法」
について書いた本です。「そんなことはありえない」そう思った方にこそ、
じつは読んでいただきたい本でもあります。 著者の近藤麻理恵さん
(こんまり先生)は、床が見えないゴミ部屋をホテルのスイートルームの
ように劇的に変える 片づけコンサルタント。5歳のときから 「ESSE」や
「オレンジページ」等の主婦雑誌を愛読し、中学3年のときには、
ベストセラー『「捨てる!」技術』を読んで開眼、以来、本格的に片づけ
研究を始めたそうです。 そして、大学2年のとき、コンサルティング
業務を開始、「こんまり流ときめき整理収納法」を編み出しました。
(Amazonより)

近藤さんの存在は、中居君の金スマで知っていました。洋服の畳み方の
紹介をしていて当時わたしもテレビを見ながら実践した記憶がありました。
近藤さんの畳み方は、確かに洋服がかさばらず衣装ケースは一時的に
きれいなりました。しかし、少し経つとやはりキレイな畳み方は続かず、
取り込んだ洗濯物がベッドにまであふれ部屋は一向に汚いままでした。
さて、わたしの汚い部屋の話はとりあえずさて置き、この本の特徴として、
片付けの本なのに「一切図説がない」という所です。そのため手っ取り
早く部屋を片付けたいと思っている人にとっては、相当不満だと思います。
だって普通、カタログのようなキレイになった部屋の写真や物の収納の仕方
便利グッズの紹介が載っているものだとみんな思うでしょう。図や写真が
ない、ということは、裏を返せば「それ以外のことを伝えたい本」という
ことになります。ここに書かれているのは、近藤さんの「片づけマインド」
という名の、物に対する気持ちの持ち方です。物を取っておくか捨てるか。
そして取って置く物をどうしまったらよいか。それが片づけの軸であり、
「掃除をする」ことや「整理」は「片づけではない」ということを
教えてくれます。片づけの心得を学べる本、と考えるのがいいでしょう。
片づけの仕方を教えてくれる本、ではありません。読んでいるうちに、
うずうず片づけをしたくなってきて、読み終える前には、物とのお別れ会
を始めていました。文章中に片づけは「人生に片をつけること」と出て
きますが、まったくその通りだと思いました。部屋を片づけているうちに、
「あ、こんなのも持ってたな」「懐かしい」という物たちがたくさん出て
きました。でも、いくら懐かしくても「今は絶対に使わない物」もたくさん
ありました。それらは、この本に書かれているこのから学んだ「片づけ
マインド」に従って、捨てたり、取っておくことにしたりしました。
すごく買った高いけど、使わない物も処分。買ったときに「ときめかせて
くれたことに感謝」することで、あっけないほど簡単に、部屋はキレイに
なりました。あっけないとは言っても、ゴミ袋20袋以上、本200冊、CD30枚
は確実に処分しました。自分の人生に、この「物」が「いる」「いらない」
「必要」「必要ない」ということが分かるようになる本でした。これからも
いらない物をたくさん買ってしまうでしょう。少なくてもわたしは本を、
今後の人生においても大量に買い続ける自信があります。でももう大丈夫
です。心に響いた本だけ残しておく。そうした心積もりができたのでした。
「読み物」として一読の価値があります。皆さまぜひお読み下さい。
この本は、何かを(近藤さんの場合は片づけを)極めた人にしか分から
ない極みが惜しげもなく書かれています。

★★★★★*96

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2012年11月 3日 (土)

「探し物は恋なんです」 白石まみ


実家の近くの本屋に特設平積みされていたので、買ってみました。最近
漫画「はぴまり」にはまるなど、少女漫画的な要素が足りていない様子。
この本はとても合コンに行ってみようかな、という気分になる本でした。
思っていたよりもハッピーな内容ではないですが、前向きになれます。

彼氏いない暦=年齢のOL、直美29歳。仕事も家庭も手に入れたいと願う、
陽子30歳。お嫁さんになりたい歴女、麻衣子27歳。自分とお金しか
信じない女、聡子33歳。女子会好きの現代っ子、愛22歳。仕事に
疲れてしまった、千草37歳。超恋愛氷河期を生きる女性たちの声が
連作短編に!恋や人生を探しているあなたへ、元気がでる6つのストーリー。
(Amazonより)

内容がとてもよかった、というよりも、内容のバラエティの豊かさに脱帽
した本でした。読み終わって作者の経歴を見てみると(わたしは大抵
読み終わってからしか作者の経歴を読まない)編集者の経験を持っている
とのこと。何を隠そうわたしも編集者です。きっとこの方もライター業を
行っていたのでしょう。取材に取材を重ね、取材に明け暮れる日々に疲労
した努力が、その文章の中に滲み出ていました。この本に対しての苦労
ではなく、これまでの経験の厚みというのでしょうか。そんなところです。
なので、この本はとても真実味と納得を持って読める本でした。未婚女性
が増えている世の中。もちろん、未婚男性も増えている。でも、問題なの
は本当はそこではなくて、結婚したいけどしていない人、が多い事。
「結婚したいけど、相手がいない」「いい出会いがない」「自分から
積極的に男性にアプローチできない」など、消極的な人が大多数になり、
恋愛が枯渇状態にあることだと思います。少女漫画を読んでいいなあ、
こんな恋愛!と思っている人ばかり。この本は、そんな問題提起を的確に
ついて、その微妙な女性心理を描いていました。だから突然ハッピーエンド
にはならない。けれど「合コン行ってみてもいいかも」「生活を改めよう」
とか地味ながらも、何もしない消極的な世界から抜け出そうと思わせて
くれるのだった。世の中のせいにするにはまだ早い。未婚女子に
オススメしたい本。きっと何かが変わるはず。ところでこの本聞いたこと
ない出版社ですね。どこだろう?新しいところなのかしら。

★★★★☆*85

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2012年10月31日 (水)

「ブラを捨て旅に出よう」 歩りえこ

20121201_2_2

あとから知ったことですが、書いている方はグラビアアイドル。
なるほど、写真もだいぶ「キレイ」に撮られていて、自分を美しく
写そうということに力を入れられた本でありました。でもそれって……。
しかしながら、旅行の楽しさを教えてくれる本です。一読の価値有り。

うら若き乙女が2年間をかけほぼ世界一周、5大陸90ヵ国を旅した。
かけた費用はたったの150万円という、想像を絶するチョー貧乏旅行。
襲われたり、盗まれたり、ストーカーされたり、危険だらけの旅のなかで、
著者が出会った人情と笑いとロマンスとは!?読むだけで元気が出る
型破り旅行記。文庫書下ろし。(Amazonより)

世界中の国を旅してみたい!……とまったく思わないわたしであります。
もちろん興味はあるし、行ってみたいという気持ちはあるのですが、
こうしてのんべんだらりと日本で暮らしていると、その一歩を踏み出す
力が衰えているような気分になります。それはどこの国にいても同じ事
を考える物なのだろうか?異国の情緒にふけるというか。なんというか。
この本を書かれている方は、日本を捨てずに、海外の国をつまみ食いして
いる印象が深かった本でした。斜に構えた言い方をすれば、少し海外を
馬鹿にしているような印象もありました。日本人は体臭がなくいい、
というような文章が出てくるのですが、そうした言葉の端々に、疑問を
少しばかり感じたりしました。確かに日本は衛生的で、発展している国
なのかもしれませんが、そしてそこで生まれ育ったわたしたちは、悪臭に
耐えかねるのかもしれませんが、それを卑下するような物言いは、あまり
よろしくないように感じました。なぜか、世界を感じ得ないからです。
日本から離れず、他の国を見て回る、というのはいい面もあれば、
絶対に他の国には染まらないという、微妙な意識の差があるように
感じるのでした。しかしながら、旅をしたくなる本でした。最近の若者の
女子が読んだら、なお一層共感を得られるのではないでしょうか。
まったく海外旅行にいく熱意をもっていなかったわたしが、韓国くらい
なら行ってみようかしら、なんて思いました。あとはいつかまあ
ブータンに行きたい。誰か連れて行ってくださいませ。

★★★★☆*84

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2012年9月12日 (水)

「岸辺の旅」 湯本香樹実

20110912

まったく更新していないにも関わらず、実は更新していたときよりも
訪問者の方が多く、この感想文のストックは放置していてもまあまあ
役に立っているのかしらんなんて思っていたりします。いやはや、
のろのろ更新されるブログにお付き合いくださりありがとうございます。

なにものも分かつことのできない愛がある。時も、死さえも。
あまりにも美しく、哀しく、つよい至高の傑作長篇小説。
(Amazonより)

最後はどうなるのだろう、とそわそわ読み進め、最後はどうにもなら
なかったのだけれど、これもありかな、と思わなくも、むしろ、
どうにもならなかったからこそ、読後に印象が残っているのかもしれ
ないとも思った。はじめ主人公は死に向かっているように感じる。
「しらたま」という唐突でつるするとつかみどころのない形容は、
最後までどう受け止めたらいいのか分からない。だから、受け止め
たらいいのか分からない、それがしらたまの答えなのだと思う。
主人公とその夫が進んでいくさまざまな過程は、夢のようだ。
とぎれとぎれで、昨日が今日であったり、今日が一昨日であったりする
ような、日にちの感覚を逸脱した雰囲気がある。そのため、物語の中
わずかに夫が消え行く様子がとても静かに進み、けれど抗っている
ように感じるのだった。最初にも書いたけれども、最後はどうにも
ならない。はっきり何かが分かるわけでもなく、だけど、主人公は
2人分の荷物を持ち歩き始める。だから、不安な気持の中進んでいく
その気持は、実はもうすでに諦めに達していたのではないかと思う。
もうダメなのだ、と気づいて、諦めた、しかし、ふと気が向いて作って
みたしらたま。いなくなったとしても、それは分かっていたことで、
怒ることもなく、悲しむこともなく、ただ感謝を述べて立ち上がる。
静かな前進の物語である。はっきりしたものを読みたい人にはお薦めしない。

★★★★☆*86

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2012年4月 3日 (火)

「シアター!」 有川浩

20120403

ものすごい天気が続いていますね。東京は脆いと思います。地震がきたら、
一発で地獄の町と化するでしょう。なんて暗い話はさて置き、明るい明るい
有川浩を読みました。すばらしい。以前の感想をお読み頂ければ分かると
思いますが、わたしは有川否定派みたいなことを言っておりました。撤回。

小劇団「シアターフラッグ」―ファンも多いが、解散の危機が迫っていた…
そう、お金がないのだ!!その負債額なんと300万円!悩んだ主宰の春川巧は
兄の司に泣きつく。司は巧にお金を貸す代わりに「2年間で劇団の収益から
この300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」と厳しい条件を出した。
新星プロ声優・羽田千歳が加わり一癖も二癖もある劇団員は十名に。
そして鉄血宰相・春川司も迎え入れ、新たな「シアターフラッグ」は
旗揚げされるのだが…。(Amazonより)

一ヶ月十冊の本を読めると爽快な気分になることが分かりました。本で
なくてはなりません。何かが完結していなければなりません。何という
ことでしょう。雑誌は何も完結せず、困ったものです。それでも毎月
出来上がるのですから、誰かが作ったものを十冊読む、ということが
鍵のような気もします。と前置きはさて置き。わたしはいままで有川さん
の本を斜めに読んできましたが、この本は手放しで「面白かった!」と
喝采した本でした。次の日に2巻を買いに行きました。その本の続編が
いますぐにでも読みたくなるなんていつ以来だろうと思ったりして、
そこまで楽しい気分にさせてくれたただそれだけで、感謝したいです。
ちなみに、続編が気になるほど楽しみに読んだ本は、と思い出したのは、
あさのあつこの「バッテリー」でした。相当昔の話です。物語はもとより、
この本のすばらしさは、キャラクターの書き分け。主人公(?)である
巧が行っているのと同様、キャラクター個々に対する思い入れや背景、
家庭事情や個性、すべてをしっかり決めた上で舞台で演じさせている、
という枠組みの強固さが圧巻だったこと。この本のために生まれたのではなく、
あたかもどこかで生きている人間を描写し、それでいてお得意の
軽い筆運びで物語が進んでいくので、あれよあれよという間に本の中に
引き込まれ、まるで自分も客席で公演を観ているような心持になった。
「シアターフラッグは、軽い話が売り」ということがたびたび出てくるのだが、
それはこの本、有川さんの作風のことでもあるだろう。しかし、軽く
大衆受けするためだけの物語ではなく、キャラクターひとりひとりに
愛情を注いでいる。物語は人数が少ない方がまとまるだろう。それは
当たり前の事である。けれどもこの本のなかでは、人数が多いこその
まとまりを見事に感じることが出来た。その2つのポイントの奇跡的な
マッチング、それから演劇の何かを皆で作る、という共同作業の楽しさ
が溢れていた本だった。わたしも演劇をやっていればよかった。なんて、
思わせてくれるそんな本。そう思わせてくれる本こそが演劇の魅力を
真に表すことが出来ているとも言えるのではないだろうか。余談ですが、
解説も面白いです。そして演劇をやっていればよかったと思うのでした。
そして禁断の図書館戦争シリーズをついに読むべきか迷うのでした。

★★★★★*98

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2012年3月25日 (日)

「ふじこさん」 大島真寿美

久しぶりに大島さんを読んだ。単に文庫コーナーに並んでいたので、
たまたま手に取ったのだけれども、やっぱり輝きが違うなあと思った。
いつしか角田光代のような存在になってくれるだろう、なんて期待を
存分に持ちながら、次回作を楽しみにしている。わたしのための、宝物。

離婚寸前の両親の間で自分がモノのように取り合いされることに
うんざりしている小学生のリサ。別居中の父が住むマンションの
最上階から下をのぞき、子供の自殺について考えをめぐらせる
ことがもっぱらの趣味。ある日きまぐれに父の部屋を訪れると
見覚えのない若い女の人が出迎えてくれて…。ほか二編。
(Amazonより)

一番最初に読んだ大島さんの本はなんだったか。「ほどけるとける」
だったか、「戦友の恋」だったか。この本を読んで改めて感じたことだが、
大島さんの本は、「欠けた」ものしか登場しない。そしてその欠けた
ものを気づかないように努める姿をとてもうまく描く作家である。
今回3編入った中の「ふじこさん」はとくにそれを上手く捉えていて、
なぜだか分からない心惹かれたものが、後になって自分の宝物であった
と気づく話だ。渦中にいる、ぐちゃぐちゃした感情に飲まれて、
本当に救われている部分に気づけないでいる。しかし、気づけないで
いたと分かることすらも、「いつしか浮上してきた私」というところに
立たないと実感を得ることができないという。でも、本当にそうなのか、
というと、それは自分の中の問題なのであって、その「渦中」が過ぎ
去るのは、今日かもしれなく、明日かもしれなく、そして、主人公の
ように椅子が届いたときであるかもしれないのだ。もう過ぎ去った
ときに、そこにその人がいなかったら、いまの自分が保てないような
不安と有り難さを感じるそれこそが宝物といえる代物なのだ。
と教えてもらった本だった。死にたがり。一度くらいは、水中を浮上し
水面に顔を上げるみたいに「やったー」と健やかな喜びを人生で
感じてみたいものである。

★★★★☆*90

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2011年4月17日 (日)

「阪急電車」 有川浩

阪急電車 (幻冬舎文庫) 阪急電車 (幻冬舎文庫)

著者:有川 浩
販売元:幻冬舎
発売日:2010/08/05
Amazon.co.jpで詳細を確認する


あ、あらすじ書くの面倒くさくなってきたなこいつ、と気づいたあなた。
ご明察ありがとうございます。そもそも200Pを超えるストーリーを
数行に要約するのは、至難の業である。(だからいつも失敗している)
かといって下記のようなAmazonの説明もどうなんかしら、とも思うのだが。

恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車……関西のローカル線を舞台に
繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。大ベストセ ラー
『図書館戦争』シリーズの著者による傑作の連作集。
(Amazonより)

有川さんだから甘々なストーリーだろうと予想していたが、予想以上だった。
甘く見ていましたすみません。なんだかこう「胸キュン」を通り越して
むず痒くなって、しょっぱい何かを食べたくなった。個人的には。
ストーリーは阪急電車今津線をモチーフにした人間ドラマ。電車に
乗り合わせた人びとの小さなやり取りが、失恋の慰めだったり、
諍いの仲裁であったり、恋だったり、恋だったり、恋だったり、恋だったり、
に発展してゆく。世の中恋じゃねぇか、ちくしょう。という気分になり、
いくぶんやさぐれた感情を得るのは、わたしが満たされていない証拠だろう。
実に残念である。だから、それらを満たされた方々が読むに当たっては、
ほのぼのとしたご当地アットホームドラマが生き、日々の過ごし方、
なんかを考えたりするんじゃないか、と思ったりした。例えば、通勤電車で、
いつも乗り合わせる人の人生を考えてみたり、とか。電車はある意味で、
すし詰めになる残念な乗り物と思っているが、解説の児玉清同様、
運命共同体でもあるな、とか思ったりして、そう考えると毎日顔を合わせる
人びとの話を少し聞いてみたいような気分にもなるものだ。それにしても、
「刺身の切り身を売るような小説」と解説で述べられているが、まさしく
その通りの小説に出来上がっていると思う。それはいい意味でも、悪い意味
でもだ。刺身は生ものだから、「今」それも「今、若者である」人にしか、
受けない、という残念さである。この本はモチーフも面白くキャッチー
なのだから、もう少しつっこんで書いたら、「今」だけではなく「冷凍保存」
できるような小説になったのではないか、と思わなくもない。この状態では
100年後に生まれた人間が読んだから、理解不能な部分や説明不足がたくさん
あるに違いない。後世に残らなくても、今がよければ、というような、
「刺身の切り身を売るような小説」と言いきった有川さんに少し失望
(いや、失望まではいかないか……でも残念ではある)した気分だ。
面白い本である。現代人、特に若者にはお薦めである。しかし「今が旬」だ。
同時に「今しか旬がない」とも言える。

★★★★☆*86

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2008年1月 1日 (火)

*他 その他:女性作家

11.04.17 「阪急電車」 有川浩
11.04.10 「太陽のパスタ、豆のスープ」 宮下奈都
11.03.06 「田舎の紳士服店のモデルの妻」 宮下奈都
11.02.23 「葛橋」 坂東眞砂子
11.01.12 「ほどけるとける」 大島真寿美
11.01.05 「切羽へ」 井上荒野

10.08.09 「死国」 坂東眞砂子
10.07.08 「炎上する君」 西加奈子
10.07.07 「かけら」 青山七恵
10.06.14 「ごめん」 原田マハ
10.05.15 「かもめ食堂」 群ようこ
10.05.14 「沖で待つ」 絲山秋子
10.04.27 「ななつのこ」 加納朋子
10.03.13 「静子の日常」 井上荒野
10.03.07 「ズームーデイズ」 井上荒野
10.02.14 「きのうの神さま」 西川美和
10.02.01 「指先からソーダ」 山崎ナオコーラ
10.01.31 「白い巨塔 2」 山崎豊子
10.01.04 「白い巨塔 1」 山崎豊子

09.12.05 「人のセックスを笑うな」 山崎ナオコーラ
09.12.01 「九月の恋に出会うまで」 松尾由美
09.11.24 「ゆれる」 西川美和
09.11.10 「キネマの神様」 原田マハ
09.10.02 「漢方小説」 中島たい子
09.08.30 「そろそろくる」 中島たい子
09.08.29 「告白」 湊かなえ
09.07.30 「にわか大根」 近藤史恵
09.07.29 「盆栽マイフェアレディ」 山崎マキコ
09.04.26 「建てて、いい?」 中島たい子
08.12.18 「やさしいため息」 青山七恵
08.09.29 「蹴りたい背中」 綿矢りさ
08.09.26 「風味絶佳」 山田詠美
08.09.14 「感染」 仙川環
08.06.09 「ハミザベス」 栗田有起
08.05.23 「夏の階段」 梨屋アリエ
08.05.11 「子どもたちは夜と遊ぶ 上」 辻村深月
08.04.16 「団欒」 乃南アサ
08.01.04 「精霊の守り人」 上橋菜穂子
07.12.24 「レモン・ドロップス」 石井睦美
07.12.20 「つくもがみ貸します」 畠中恵
07.12.19 「窓の灯」 青山七恵
07.12.13 「山妣」 坂東真砂子
07.11.28 「あおい」 西加奈子
07.11.22 「anego」 林真理子
07.11.07 「レインツリーの国」 有川浩
07.09.22 「しゃばけ」 畠中恵
07.09.12 「ジョゼと虎と魚たち」 田辺聖子
07.08.13 「号泣する準備はできていた」 江國香織
07.08.08 「ミーナの行進」 小川洋子
07.08.05 「ぼくは悪党になりたい」 笹生陽子
07.07.27 「観覧車」 柴田よしき
07.05.03 「夢を与える」 綿矢りさ
07.03.05 「少年アリス」 長野まゆみ
06.09.04 「蛇にピアス」 金原ひとみ
06.08.30 「インストール」 綿矢りさ
06.08.08 「西の魔女が死んだ」 梨木香歩
06.07.14 「博士の愛した数式」 小川洋子
06.07.13 「天使の卵」 村山由香

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