2012年4月 3日 (火)

「シアター!」 有川浩

20120403

ものすごい天気が続いていますね。東京は脆いと思います。地震がきたら、
一発で地獄の町と化するでしょう。なんて暗い話はさて置き、明るい明るい
有川浩を読みました。すばらしい。以前の感想をお読み頂ければ分かると
思いますが、わたしは有川否定派みたいなことを言っておりました。撤回。

小劇団「シアターフラッグ」―ファンも多いが、解散の危機が迫っていた…
そう、お金がないのだ!!その負債額なんと300万円!悩んだ主宰の春川巧は
兄の司に泣きつく。司は巧にお金を貸す代わりに「2年間で劇団の収益から
この300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」と厳しい条件を出した。
新星プロ声優・羽田千歳が加わり一癖も二癖もある劇団員は十名に。
そして鉄血宰相・春川司も迎え入れ、新たな「シアターフラッグ」は
旗揚げされるのだが…。(Amazonより)

一ヶ月十冊の本を読めると爽快な気分になることが分かりました。本で
なくてはなりません。何かが完結していなければなりません。何という
ことでしょう。雑誌は何も完結せず、困ったものです。それでも毎月
出来上がるのですから、誰かが作ったものを十冊読む、ということが
鍵のような気もします。と前置きはさて置き。わたしはいままで有川さん
の本を斜めに読んできましたが、この本は手放しで「面白かった!」と
喝采した本でした。次の日に2巻を買いに行きました。その本の続編が
いますぐにでも読みたくなるなんていつ以来だろうと思ったりして、
そこまで楽しい気分にさせてくれたただそれだけで、感謝したいです。
ちなみに、続編が気になるほど楽しみに読んだ本は、と思い出したのは、
あさのあつこの「バッテリー」でした。相当昔の話です。物語はもとより、
この本のすばらしさは、キャラクターの書き分け。主人公(?)である
巧が行っているのと同様、キャラクター個々に対する思い入れや背景、
家庭事情や個性、すべてをしっかり決めた上で舞台で演じさせている、
という枠組みの強固さが圧巻だったこと。この本のために生まれたのではなく、
あたかもどこかで生きている人間を描写し、それでいてお得意の
軽い筆運びで物語が進んでいくので、あれよあれよという間に本の中に
引き込まれ、まるで自分も客席で公演を観ているような心持になった。
「シアターフラッグは、軽い話が売り」ということがたびたび出てくるのだが、
それはこの本、有川さんの作風のことでもあるだろう。しかし、軽く
大衆受けするためだけの物語ではなく、キャラクターひとりひとりに
愛情を注いでいる。物語は人数が少ない方がまとまるだろう。それは
当たり前の事である。けれどもこの本のなかでは、人数が多いこその
まとまりを見事に感じることが出来た。その2つのポイントの奇跡的な
マッチング、それから演劇の何かを皆で作る、という共同作業の楽しさ
が溢れていた本だった。わたしも演劇をやっていればよかった。なんて、
思わせてくれるそんな本。そう思わせてくれる本こそが演劇の魅力を
真に表すことが出来ているとも言えるのではないだろうか。余談ですが、
解説も面白いです。そして演劇をやっていればよかったと思うのでした。
そして禁断の図書館戦争シリーズをついに読むべきか迷うのでした。

★★★★★*98

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2012年3月25日 (日)

「ふじこさん」 大島真寿美

久しぶりに大島さんを読んだ。単に文庫コーナーに並んでいたので、
たまたま手に取ったのだけれども、やっぱり輝きが違うなあと思った。
いつしか角田光代のような存在になってくれるだろう、なんて期待を
存分に持ちながら、次回作を楽しみにしている。わたしのための、宝物。

離婚寸前の両親の間で自分がモノのように取り合いされることに
うんざりしている小学生のリサ。別居中の父が住むマンションの
最上階から下をのぞき、子供の自殺について考えをめぐらせる
ことがもっぱらの趣味。ある日きまぐれに父の部屋を訪れると
見覚えのない若い女の人が出迎えてくれて…。ほか二編。
(Amazonより)

一番最初に読んだ大島さんの本はなんだったか。「ほどけるとける」
だったか、「戦友の恋」だったか。この本を読んで改めて感じたことだが、
大島さんの本は、「欠けた」ものしか登場しない。そしてその欠けた
ものを気づかないように努める姿をとてもうまく描く作家である。
今回3編入った中の「ふじこさん」はとくにそれを上手く捉えていて、
なぜだか分からない心惹かれたものが、後になって自分の宝物であった
と気づく話だ。渦中にいる、ぐちゃぐちゃした感情に飲まれて、
本当に救われている部分に気づけないでいる。しかし、気づけないで
いたと分かることすらも、「いつしか浮上してきた私」というところに
立たないと実感を得ることができないという。でも、本当にそうなのか、
というと、それは自分の中の問題なのであって、その「渦中」が過ぎ
去るのは、今日かもしれなく、明日かもしれなく、そして、主人公の
ように椅子が届いたときであるかもしれないのだ。もう過ぎ去った
ときに、そこにその人がいなかったら、いまの自分が保てないような
不安と有り難さを感じるそれこそが宝物といえる代物なのだ。
と教えてもらった本だった。死にたがり。一度くらいは、水中を浮上し
水面に顔を上げるみたいに「やったー」と健やかな喜びを人生で
感じてみたいものである。

★★★★☆*90

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2011年4月17日 (日)

「阪急電車」 有川浩

阪急電車 (幻冬舎文庫) 阪急電車 (幻冬舎文庫)

著者:有川 浩
販売元:幻冬舎
発売日:2010/08/05
Amazon.co.jpで詳細を確認する


あ、あらすじ書くの面倒くさくなってきたなこいつ、と気づいたあなた。
ご明察ありがとうございます。そもそも200Pを超えるストーリーを
数行に要約するのは、至難の業である。(だからいつも失敗している)
かといって下記のようなAmazonの説明もどうなんかしら、とも思うのだが。

恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車……関西のローカル線を舞台に
繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。大ベストセ ラー
『図書館戦争』シリーズの著者による傑作の連作集。
(Amazonより)

有川さんだから甘々なストーリーだろうと予想していたが、予想以上だった。
甘く見ていましたすみません。なんだかこう「胸キュン」を通り越して
むず痒くなって、しょっぱい何かを食べたくなった。個人的には。
ストーリーは阪急電車今津線をモチーフにした人間ドラマ。電車に
乗り合わせた人びとの小さなやり取りが、失恋の慰めだったり、
諍いの仲裁であったり、恋だったり、恋だったり、恋だったり、恋だったり、
に発展してゆく。世の中恋じゃねぇか、ちくしょう。という気分になり、
いくぶんやさぐれた感情を得るのは、わたしが満たされていない証拠だろう。
実に残念である。だから、それらを満たされた方々が読むに当たっては、
ほのぼのとしたご当地アットホームドラマが生き、日々の過ごし方、
なんかを考えたりするんじゃないか、と思ったりした。例えば、通勤電車で、
いつも乗り合わせる人の人生を考えてみたり、とか。電車はある意味で、
すし詰めになる残念な乗り物と思っているが、解説の児玉清同様、
運命共同体でもあるな、とか思ったりして、そう考えると毎日顔を合わせる
人びとの話を少し聞いてみたいような気分にもなるものだ。それにしても、
「刺身の切り身を売るような小説」と解説で述べられているが、まさしく
その通りの小説に出来上がっていると思う。それはいい意味でも、悪い意味
でもだ。刺身は生ものだから、「今」それも「今、若者である」人にしか、
受けない、という残念さである。この本はモチーフも面白くキャッチー
なのだから、もう少しつっこんで書いたら、「今」だけではなく「冷凍保存」
できるような小説になったのではないか、と思わなくもない。この状態では
100年後に生まれた人間が読んだから、理解不能な部分や説明不足がたくさん
あるに違いない。後世に残らなくても、今がよければ、というような、
「刺身の切り身を売るような小説」と言いきった有川さんに少し失望
(いや、失望まではいかないか……でも残念ではある)した気分だ。
面白い本である。現代人、特に若者にはお薦めである。しかし「今が旬」だ。
同時に「今しか旬がない」とも言える。

★★★★☆*86

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2008年1月 1日 (火)

*他 その他:女性作家

11.04.17 「阪急電車」 有川浩
11.04.10 「太陽のパスタ、豆のスープ」 宮下奈都
11.03.06 「田舎の紳士服店のモデルの妻」 宮下奈都
11.02.23 「葛橋」 坂東眞砂子
11.01.12 「ほどけるとける」 大島真寿美
11.01.05 「切羽へ」 井上荒野

10.08.09 「死国」 坂東眞砂子
10.07.08 「炎上する君」 西加奈子
10.07.07 「かけら」 青山七恵
10.06.14 「ごめん」 原田マハ
10.05.15 「かもめ食堂」 群ようこ
10.05.14 「沖で待つ」 絲山秋子
10.04.27 「ななつのこ」 加納朋子
10.03.13 「静子の日常」 井上荒野
10.03.07 「ズームーデイズ」 井上荒野
10.02.14 「きのうの神さま」 西川美和
10.02.01 「指先からソーダ」 山崎ナオコーラ
10.01.31 「白い巨塔 2」 山崎豊子
10.01.04 「白い巨塔 1」 山崎豊子

09.12.05 「人のセックスを笑うな」 山崎ナオコーラ
09.12.01 「九月の恋に出会うまで」 松尾由美
09.11.24 「ゆれる」 西川美和
09.11.10 「キネマの神様」 原田マハ
09.10.02 「漢方小説」 中島たい子
09.08.30 「そろそろくる」 中島たい子
09.08.29 「告白」 湊かなえ
09.07.30 「にわか大根」 近藤史恵
09.07.29 「盆栽マイフェアレディ」 山崎マキコ
09.04.26 「建てて、いい?」 中島たい子
08.12.18 「やさしいため息」 青山七恵
08.09.29 「蹴りたい背中」 綿矢りさ
08.09.26 「風味絶佳」 山田詠美
08.09.14 「感染」 仙川環
08.06.09 「ハミザベス」 栗田有起
08.05.23 「夏の階段」 梨屋アリエ
08.05.11 「子どもたちは夜と遊ぶ 上」 辻村深月
08.04.16 「団欒」 乃南アサ
08.01.04 「精霊の守り人」 上橋菜穂子
07.12.24 「レモン・ドロップス」 石井睦美
07.12.20 「つくもがみ貸します」 畠中恵
07.12.19 「窓の灯」 青山七恵
07.12.13 「山妣」 坂東真砂子
07.11.28 「あおい」 西加奈子
07.11.22 「anego」 林真理子
07.11.07 「レインツリーの国」 有川浩
07.09.22 「しゃばけ」 畠中恵
07.09.12 「ジョゼと虎と魚たち」 田辺聖子
07.08.13 「号泣する準備はできていた」 江國香織
07.08.08 「ミーナの行進」 小川洋子
07.08.05 「ぼくは悪党になりたい」 笹生陽子
07.07.27 「観覧車」 柴田よしき
07.05.03 「夢を与える」 綿矢りさ
07.03.05 「少年アリス」 長野まゆみ
06.09.04 「蛇にピアス」 金原ひとみ
06.08.30 「インストール」 綿矢りさ
06.08.08 「西の魔女が死んだ」 梨木香歩
06.07.14 「博士の愛した数式」 小川洋子
06.07.13 「天使の卵」 村山由香

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