2007年12月18日 (火)

「押入れのちよ」 荻原浩

押入れのちよ 押入れのちよ

著者:荻原 浩
販売元:新潮社
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荻原さんも気づけば10冊目なんですが、
10冊目にして、ようやく自分が荻原さんが苦手なのだと気づきました。
どこが?って、下品なところが。何食わぬ顔でわざと下品に書くところが。
下品な言葉を書けば、皆が笑ってくれるという考えは間違いじゃないかと。

「押入れのちよ」
五万円以下で、風呂付きの家。
失業保険で暮らしている恵太にとっては、その金額でさえも辛い。
最初は渋っていた不動産屋だったが、何やら古びた間取りを取り出した。
迷う余地なくその家に決め、入居してつかの間、
恵太は部屋で見知らぬ少女を見かけた。七五三のような格好で、
おかっぱ頭、少女は鍵をかけてもかけても入ってくる。
もしかして幽……恵太は頭をふり、少女に会話を試みる。

荻原さん、色々読んだけど、短編集はそう言えば初めてだった。
でも、個人的にはかなり微妙……。
勿論一つ一つのアイディアは荻原さんらしくていいと思う。
だけど、短編の書き方に不慣れなのか、苦手なのか、
「それがどうした」というようなラストが目に付く。
要すると、ストーリー構成が薄く、思いついた設定を、
ただ重厚にするために引き伸ばしている、という感じがするのだ。
例えると、濃度の薄い食塩水と言った感じだろうか。
中身はSSサイズなのに、枠は短編なので、スカスカな感じが漂う。
アイディアは悪くないし、どちらかと言えば下手な長編よりいいと思うが、
何とも賞賛しがたい内容であることに違いはない。
それと、下品=笑ってもらえる、と言うのは間違いだろう。
まぁ笑ってくれる人も半分はいるだろうが、
中には顔を歪めてる人がいることも考えてほしい。
この本の中には無数に糞尿の描写や男性の性的反応が書かれている。
そんなところよりも、感情表現に力を入れたらどうでしょうか、
とか、お節介ながらも発言しつつ、このへんで纏めておきます。

★★★☆☆*80

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2007年11月15日 (木)

「噂」 荻原浩

噂 (新潮文庫) 噂 (新潮文庫)

著者:荻原 浩
販売元:新潮社
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噂の「噂」を読んでみました。
え?シャレかって?そうですちょっと洒落ました。
一言目の感想は、荻原さんは刑事モノは無理があるなぁ、です。
いや、今後は分かりませんが、とりあえずこの本は微妙ですね。

「レインマンは女の子だけを狙って足首を切り落とすんだって。
でもミリエルの香水をつけていれば、レインマンに襲われないらしいよ」
企業が自分たちの利益のみを考え少女たちに流したキャッチコピー……
その噂は、いつの間にか渋谷全体に広がっていた。
噂は尾ひれがつき、あるいは変形して伝わってゆく。
そんなある日、都心の真ん中で殺人事件が起きた。
被害者は18歳女性。死後数日がたっており、目撃情報も乏しい。
ただ一つ変わった事といえば、足首から先がなかったことだった。

最初に言っておく事は、この話の全部は、最後の一行のためにある。
そんな事を言ってしまうと、思わず最後の行を見てしまいたくなるが、
是非その最後の一行まで辛抱強く読んで欲しい。
この本の着眼点はとても面白い。噂が一人歩きし、形を変える。
様々なその噂に人々が惑わされ、困惑する姿が上手く表現されていた。
そう言った点で発想・物語として、この本は最高だった。
だが、評価が低い理由は、その他の部分に問題があるからであり、
もしもこのテーマで、この構成で、この物語で、東野圭吾が書いたとしたら、
失礼な話、私は拍手喝采を贈っているところであろうと思う。
問題なのは主人公が刑事である事。私の予測ではあるが、
荻原さんは刑事職について詳しくないのだろう。
勿論取材や、調べ物はしたろうし、その努力になんら文句はないが、
微妙に違和感を覚えた。例えば死後硬直の時間であったり、
死体の描写、不毛な捜査があまりにも単調に続く点や、
明らかに怪しいだろう、という主人公達の報告が認めてもらえない点。
そして、要らない説明が多い点。そんなところから、
きっと不慣れな刑事役を苦労して書いたんだろうな、と思った。
おまけに荻原さんは時折「ひょうきん」な比喩をする。
それはこの本に限らないし、味なんだろうと思うのだが、
このレインマンの緊張した連続殺人事件の中では、非常に似つかわしくない。
家族の会話ではいいかもしれない、だが、やはりもう少し
事件と向き合った時の焦燥感・ピリピリ感を書いて欲しかった。
あとは「主人公は朝食を食べ、家を出た。向かった先は警察だ」、
と言うような、小出し展開が否めないところ。
事件の内容でやるのはスリリングでいいが、主人公の登場でこれはいらない。
…と、散々書いてしまったが、この小説の最後の一行は鳥肌ものだ。
まるで、夏目さんの「こころ」でKの血飛沫を見たような…いや、違うな。
まぁそれに匹敵するような、寒気が走る。ので、願わくば、
もう少し警察を勉強してから書いてほしかったな、と纏めておく。

★★★☆☆*85

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2007年9月 2日 (日)

「ママの狙撃銃」 荻原浩

ママの狙撃銃 ママの狙撃銃

著者:荻原 浩
販売元:双葉社
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ちょっと幻滅するほど詰まらない本でした。
うーん、私がいけないのか、それとも何か問題があるのか…
何せ荻原さんですしねぇ。個人的には「コールドゲーム」以下、
30Pくらいで挫折しました。ページの進みが遅いこと、遅いこと…。

順風満帆な生活に、子供は二人、憧れだったマイホームを購入し、
猫の額ほどの土地で、ガーデニングを楽しむ。
家のローンに少々文句はあるが、大きな問題はない。
そんな主婦・曜子はひょんなことから、昔の仕事を始める事になった。
ある日突然掛かってきた電話、そこから話されるのは、
次のターゲットと報酬の金額。そう、彼女は腕利きのスナイパーなのだった。

まず始めに、暗殺業務から逃げるように生きてきたのに、
毎週銃の手入れをしているあたりが可笑しいと思う。
前半祖父の事を語る時も、
「電話が掛かってきたのでたった今思い出したのだ」
というような形になっているのだが、毎週拳銃を手入れしているのなら、
その時に毎回思い出しているはずだ。
むしろ、拳銃を手入れしているシーンは、
祖父の回想シーンの前に入れておくべきなんじゃないかと思う。
その上、夫が仕事を辞めるにあたり、
選ぶ職業があんなに嫌悪したスナイパーなのは本末転倒だろう。
安い賃金でよければ、いくら英語訛りが酷くても雇ってもらえるはずだ。
そう言った点で、曜子をスナイパーに仕立て上げるための設定が安直で、
こんな安っぽい動機で、人殺しを引き受けるのか?と納得がいかなかった。
そして描写が三人称でありながら、視点があっちこっち飛ぶ。
特に出だしの部分では、いきなり夫視点で始まるところがあり、
その後突然曜子視点に変わっており、かなりの違和感がある。
そして連発する無意味な体言止め。
これは本当に荻原さんが書いたのか?と疑い、
もしやデビュー間もない頃なのか?と疑い、
後ろを確認すると荻原さんだし、しかも2006年発行。ちょっと幻滅した。
と言いつつ、物語自体はとても好きだった。
特に娘のいじめを撃退する当たりは清々しい雰囲気でよかったし、
殺した人間がシックスセンスのように付いて廻るのも、
なかなかリアルで、考えられているな、と思えた。
なので、その分「人を殺す」ということに対する主人公の判断が、
安っぽいというか、簡単に引き受けている当たりが際立っていた。
語り口が軽いと言うのも原因だろうが、
もう少し追い詰められてもいいんじゃないかと思う。
そうすれば、最後のシーンで(私は好きではない)
もう少し涙を誘えたのではないか?と思ったりもした。
なんだか、色んな意味で残念な本と言うのが一番の感想です。

★★☆☆☆*65

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2007年6月22日 (金)

「メリーゴーランド」 荻原浩

メリーゴーランド (新潮文庫) メリーゴーランド (新潮文庫)

著者:荻原 浩
販売元:新潮社
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久しぶりに荻原さんでした。半年ぶり……?随分読んでませんでした;
読み始めて再認識しましたが、やっぱり荻原さんの話は面白いですわ。
途中まではページを忘れてすいすい読んでいました。
が、問題は展開の悪さかな……後半にかけて凄くつまらなくなるんですよね。

お役所勤めの啓一は、いつも何をするでもない仕事をこなし、
定時に帰宅するという味気ない生活を送っていた。
民間企業から転職した事もあり、会社での風当たりも強く、
また、友人などには「いいよな、公務員は」と嫌味を言われる。
そんな啓一はひょんな事から、市内にある錆びれたテーマパークを
再建する事になった。何のとりえも無いその観光施設は、閉演寸前だ。
啓一はどうにか繁栄させようと、公務員という柵を捨てる覚悟をする。

問題はどこをラストにするか、という所にあると思う。
読んでいて中盤まではとても面白い。
テーマパーク再建に向けて、旧友の大道芸人団体が登場したり、
手伝ってくれるボランティアがヤンキーだったり、
と個性も色々で楽しめるし、再建に向けた意気込みの表し方もよい。
再建に向けて絶対に成功させなければいけない、
ゴールデンウィークイベントと言うのも、何だかんだいって、
纏まり始め、公務員では味わえなかった達成感や、
遊びの楽しさを実感でき、お役所的なガチガチの仕事はダメだと教訓になる。
しかし、その冒頭から中盤にかけてほぼイベントの事しか触れてないから、
読者としては、「きっと素敵なテーマパークになり、そして、
メリーゴーランドが廻ってるんだろうなぁ…」という期待があるのだが、
そもそもメリーゴーランドが不許可で設置できない上に、
突如として、仲がよかった妻が敵対勢力になったり、
いきなり選挙で知事が変わり、テーマパーク閉鎖、などとなり、
かなり強引な展開のイメージを受けた。
その強引さが、折角の最後のシーンを台無しにしているだけでなく、
前半で主人公が頑張った成果が水の泡になり、一体何が言いたかったんだ?
と疑問が残る。せめて「――三年後」とかにして、
頑張ったがどうしても再建できず閉園になったテーマパークで、
メリーゴーランドを乗ったらいいのにと思った。
そのためには、選挙の部分は要らないし、イベントとともに終了でよさそう。
うーん、微妙。お薦めしない。これなら「オロロ~」や
「神様から~」の方が楽しいと思うのでそちらを是非。

★★☆☆☆*76

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2006年12月26日 (火)

「ハードボイルド・エッグ」 荻原浩

Hardboild01 ハードボイルド・エッグ

著者:荻原 浩
販売元:双葉社
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終始ウケ狙い。まさか「明日の記憶」の作者が書いたとは思えない、
読んでいて思わず笑ってしまうエンターテイメント小説。
感動小説もいいけど、たまにはこう言うのもいいかもね。
私的に主人公は阿部寛でした・・・トリックの上田みたいな感じ?
でももう少し若い気もしなくもない、かも。

固ゆで玉子・・・ではなく、ハードボイルドに成り切れない私立探偵・最上。
マーロウに憧れ私立探偵事務所を営んでいるが、
舞い込んでくる仕事はお尋ね人ならぬ、お尋ねペットばかり。
そんな傾きかけた経営と気分を立て直そうと秘書を雇う事にしたが、
こちらも失敗、やって来たのは年齢を詐称した婆さんだった。
追い返すわけにもいかず、最上は婆さんを背負ったままペット探しに繰り出し、
ワン事件やニャン事件をハードボイルド気取りに珍解決してゆく。

面白かった。「ハードボイルド・エッグ」とは何の事は無い、
最上の言葉を借りれば、茹で過ぎてしまった玉子の事だ。
と、言うのは冗談で、ハードボイルドに成り切れない探偵の事。
ひょんな事からパートナーになる婆さんとのコント紛いの会話が面白く、
またハードボイルドを気取り、必ず失敗する行動に思わず笑いが沸く。
相手の攻撃を俊敏にかわし、パンチを食らわせる格好いい私。
その想像を丸っきり相手にやられた自分の体は吹っ飛んでいた・・・、
など、心の声が聞こえた後、失敗する様子が滑稽極まりない。
話は、ペットにまつわる事件から、殺人事件へ。
お決まりな感じの話の展開ですが、飽きさせないギャグ盛りだくさん。
いつも足手まといなのについて来る婆さんを貶しながら、
実はどこかで思いやっていて、言い訳の様に答える最上の性格がいい。
ただし、この本の欠点は、汚らしい・・・。
事件の解決にホームレスが重要な鍵だったり、
動物が出てくるので糞尿や匂いの描写があったり。
面白おかしく読んでいるので、あまり気にならない?とは思いますが、
決して綺麗な話ではない。まぁそんな汚いシーンがあるから面白いのかも。
ラストはちゃんと感動もあったりして、
話の流れだと、ケタケタ笑って「なーんちゃって」って終わりそうですが、
失速して涙を求めてくるのは荻原さんらしいかな。
最後は感動で。荻原さん作品、そこんとこ重要ですから。

★★★★☆*89

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2006年12月10日 (日)

「さよならバースディ」 荻原浩

さよならバースディ さよならバースディ

著者:荻原 浩
販売元:集英社
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なんか・・・もう一息。って感じ(苦笑)
うーん、いいと思うんだけど、何か足りない。
サルを通しての会話がじれったいのかもしれないし、
もしくは別に死ぬほどでも無いんじゃないの、とかそう言う感想が;
題名からして、内容ではなく結末が見えるってどうよ。とも思う。
映像化したら面白そうだけど、難しいだろうな。主人公は私的に妻夫木君。

僕の研究室・霊長センターでは、サルのボノボに知識を身につける実験をしていた。
名目では知的障害を持つ人間の子どもへの教育と言う課題があるが、
着実に言語を増やし、人間の言葉を理解するようになるバースディは誇りである。
一つ問題があるとすれば、前任の教授が謎の自殺を遂げた事くらいだった。
しかしある日突然、同じ研究室の助手で恋人である由紀がまたも自殺をする。
その謎をめぐり、僕はバースディに事件の真実を語らせようと力を尽くす。

うーん、感想書きづらい。なぜならば抑揚の無い話だったから。
アマゾンの評価がとても低いのが気になっていたのですが、
読み始めは「結構面白いじゃん」と思っていました。
問題は中盤から・・・と言うか半分より前?位で由紀が死んでしまうのです。
後はその・・・サルにどこまで言葉を覚えさせるか、と
サルの記憶をどこまで辿れるか・・・と言う2点に絞られてしまい、
途中から「これは一体何を伝えたいんだ?」と首をかしげる。
サルの保護と言いつつ、恋人の死んだ理由が知りたくて我慢できない。
だから仕方なく「ごめんよバースディ」と言いながら、サルに尋ねる。
最後の方はグダグダな上、由紀の気持ちの反映ってどうよ?と。
その行為に「なんだかなぁ」と盛り上がるべき所で、少し白けてしまった。
文章には全然出てこない、と言うかラストで「また話を聞こう」、
みたいな事を言っていますが、私はどちらかと言えば、
むしろ感情を理解して話をする動物を無理やり作り出すのはどうかと思う。
勿論動物だって人間の表情で機嫌を伺ったりしますけど、
それを理解させすぎると、こうして人間が死んだ時も尚、
悲しみ続ける動物が増えるのかと思うと、やっぱり「なんだかなぁ」と思うのです。
雰囲気は好きだったのですが、ちょっと何か足りない。
これじゃサルがいなかったら、ただのメロドラマじゃん!みたいな。
うーん荻原さん。「明日の記憶」みたいにならないものか!(懇願)

★★★☆☆*77

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2006年10月 4日 (水)

「明日の記憶」 荻原浩

明日の記憶 明日の記憶

著者:荻原 浩
販売元:光文社
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泣けた、泣けた。
荻原さんの他の作品でもいいお話は多いですが、
いつも「いいなぁ」と思うだけで、泣いた事はありませんでした。
今回は何でかな、渡辺謙とか樋口可南子のイメージが当てはまり過ぎて、
あまりにもシリアスで現実的に読んだからだろうか。
理由は判らないけど、泣いちゃうくらいいい本。

広告会社に勤める佐伯は50歳を迎え、会社でのポストも部長を勤めていた。
一人娘が結婚する話がでた頃、佐伯は徐々に物忘れが激しくなった。
初めは更年期やストレスからくる度忘れだと決め付けていたが、
病院に掛かってみると検査の結果、若年性アルツハイマーだと診断される。
妻と一緒に次第に消えてゆく記憶と、必死に戦う姿が美しく描かれている。

記憶が消える、それは一体どなんな感覚なのだろうか。
つい先程机に置いてあった物を忘れ、数分前に問いかけた質問をもう一度する。
誰にでも起きる記憶の交差だろうと願い、いっそ誤診だと告げて欲しい、
病院で診断された後もその結果を信じる事が出来ず否定する姿が悲しかった。
さっきまで知った道を歩いていたはずなのに、
次の瞬間見覚えのない空間になって、辺りを見回すのが怖い。
見知った人間に「初めまして」と言い、傷つけるのではないかと言う恐怖もある。
まるで頭の中の地図が欠落し、代わりに黒い物がどろりと流れ出ているようだった。
朝起きたら、妻や娘の顔さえも忘れているかも知れない。
自分の記憶が消えるなんて考えただけでも身震いした。
文章は「私」が語りかけるように書かれていますが、話が進むにつれ、
自分の症状を再確認するように自らの口から述べられる部分が泣けてきます。
それと中に出てくる日記も同じ事が2回書いてある。
そんな様子を文章で読むのが辛くて、もしも自分がしていたら、と不安になりました。
ラスト、泣けます。CMにもなっていたみたいですが。
「こんにちは」
その一言がどれだけ心に響いたろう、と考えるだけで泣けました。
重い題材だからか、清々しいまでの美しい終わり方がとても気持ちがいいです。
映画観たかったな、渡辺さんと樋口さんはイメージにピッタリです。
DVDそろそろ出るみたいなので借りてこよう。
小説もかなりお薦めです。荻原さんはシリアス路線の方がいいです。
渋好きなのだろうか、私は「神様からひと言」より断然好きですね。

★★★★★*97

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2006年9月28日 (木)

「神様からひと言」 荻原浩

神様からひと言 神様からひと言

著者:荻原 浩
販売元:光文社
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随分前に読んだのですが、再読しました。
やっぱりねぇ「コールドゲーム」よりも全然いい!!
荻原さんの書くサラリーマンはカッコイイです=学生は止めた方がいい。
どちらかと言えば「オロロ畑でつかまえて」系。
昔のお勤めが広告会社だったのでしょうか?面白いです。

バントを諦めきれないまま決めた涼平の再就職先は、売れない乾麺会社だった。
広告会社の経験を買われて雇われたはずなのに、それをよく思わない部長と衝突し、
ダメ社員の掃き溜め・お客様相談室に飛ばされる事になった。
「お客様の声は神様の一言」と言う社長の言葉も虚しく、クレーム続きの最低の会社。
毎日の謝罪で身に付いた低姿勢も、彼女に対しての対処は全く思い浮かばない。
そんな時涼平の前に現れた神様が言った一言は・・・・と言う話。

毎日続く掃き溜め・お客様相談室での電話の格闘、凄く面白い。
時には乾麺の作り方の問い合わせが、味がまずいとの文句、
ハエが入っていたと言うクレーム、さらにストーカーのクレーマーまでいる。
受話器を上げた瞬間に響き渡る怒声を聞いたら、
思わずこちらも怒って切ってやろうかなんて思いますが、そこは辛抱。
「謝罪の天才」篠崎にならって、徐々に対処に慣れてきた涼平が、
客の怒りをサラリとかわせるようになる辺りは爽快です。
中盤でヤクザ気取りの男たちとの対決がありますが、
そこでの篠崎と涼平の手合いも、思わずお見事!と言いたい感じでした。
実際でも思いますけど、自分がさして悪くないのに謝るのって大変ですよね。
そんな技量?を身につけていくうちに、自分はこんなに謝ることが上手くなったって、
篠崎や涼平が結局自分自身の周りの環境では役になっていない。
別れて住む妻に切り出す言葉や、失踪した彼女を引き戻す言葉が見つからない。
そんな様子がとても切なく感じました。
会社に対して客が、閉店後のラーメン屋がホームレスの神様のように、
涼平にとっても助言を求める神様がいたっていい。
そんな荻原さんの心意気と言うか、こんな事だって神様のお言葉だって言えるんだよ、
ありがたく思えばなんだってそうなんじゃない?って言っているようです。
あと「謝る時は大切な人を庇う様に電話の前でもお辞儀をする」
と言うような文が出てきますが、これもなるほどなと思わず頷きました。
褒めておいて難ですけど・・・
私的には神様の言葉がもうちょっとインパクトあってもー・・・なんて思いましたが、
その質素さがまた涼平の神様にはぴったりなんだ、ってオチです。
どうぞ、「オロロ」と合わせてお読み下さい。
そう言えば、題名からしてしっとりな感じに思うかもしれませんが、
結構コミカルで、すかさず笑いも狙っています。涼平の一人ツッコミが面白いです。

私は「明日の記憶」も買ってしまったので、しばらくは荻原ワールドです。

*92

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2006年9月 7日 (木)

「オロロ畑でつかまえて」 荻原浩

オロロ畑でつかまえて オロロ畑でつかまえて

著者:荻原 浩
販売元:集英社
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この作品って「すばる新人賞」らしいですよ。
ってあれ?この間の金原さんの「蛇にピアス」もじゃなかったでしたっけ?
一体どんな作品に賞が与えられているのかさっぱり判らない、すばる。
「コールドゲーム」読んでから読むとちょっと拍子抜け。笑
馬鹿げた事を本気でやる大人たちか滑稽で面白い。

「ど田舎・牛穴村を村おこししよう!」を目標に、
村民や、弱小広告代理店が躍起になる話。
何も取り得のない村にどうにか華を持たせるため、
村一の湖でネッシーならぬウッシーが出現したとデマを流す。
結局うそがばれてしまい、酷いバッシングを受けるが、
有名アナウンサーが嫁に来たりして円滑に進み始める。
しかしそんな大げさな作り話をしなくても、
実はオロロ畑にそ村復古のネタは転がっていた・・・!と言う話。
田舎丸出しのセリフばかりで、ある意味清清しいほど。
あまりに山深過ぎたせいか、閉鎖的な生活を送る村人と、
ひょんな事から契約する事になった都会の広告代理店のやり取りが、
上手い具合に噛みあってなくて面白い。
実際の広告店でもそうだと思うので、笑ったら失礼かも知れませんけど、
コンドームのキャッチフレーズの所では大うけしてしまいました。
「おい、社長寝てんのかよ!」とか。笑
荻原さんらしく、会話部分で登場人物の心理を読め!的な部分が多々あり、
この人は一体どう思っているんだろう?と考えるのが大変。
あとはそうだなぁ、核心を突くのが遅い気も・・・。
「オロロ畑でつかまえて」って題名でてるのだから、
もうちょっと早くに登場させて、結末は村が新聞の一面に!
みたいなのが希望でした・・・。なんて。
個人的意見なので、わがままだけかも知れません。
ちょっと村人の様子が「平成狸合戦ぽんぽこ」の狸のようでした。笑

*82

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2006年8月28日 (月)

「コールドゲーム」 荻原浩

コールドゲーム コールドゲーム

著者:荻原 浩
販売元:新潮社
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あれれ。荻原さんの本てこんな感じでしたっけ?とちょっと疑問形になった。
随分前に読んだのが「神様からの一言」だったからかも知れないけど。
うーんなんて言うかもうちょっとハードボイルド系に仕上げてもらえると・・・
なんて、それは私の個人的な趣味ですが。笑
「コールドゲーム」なんて硬い名前ついてるから、ついね。

光也が中学時代クラスぐるみでいじめていた、「トロヨシ」こと廣吉が、
5年たった今、突然クラスメイトに復讐を開始する話。
クラス内で起きていたいじめは酷く陰湿かつ残酷なものだった。
復讐は個人のその「いじめの関与具合」で代償が決まる。
目をアザにしたヤツは顔面に傷を、
パンツを脱がせたヤツは下半身裸で海に放り投げる。
ついにはクラスメイトから死者までが出てしまった。
光也と亮太は自分が過去にした過ちと、今起きている事件に驚愕するが、
どうにかこれ以上被害を出させないよう呼びかけようとクラス会を開く。
ある法則性に従って襲われていくクラスメイト達は事件を阻止しようと必死だったが、
自分たちの手には負えない事件であると認識し始め、徐々に手を引いてしまう。
しかし次のターゲットはいじめの中心的存在だった亮太であり、
皆生命の心配をするが、有志を募って果敢に廣吉に対抗する。

うわっ、そう言うオチでしたか。
と突っ込んだ後に、あぁでも現代でも起こりうる事件かも、
と思ってしまいちょっと寒気がした。
全体的には集団意識の強まりの怖さを物語ってます。
いじめ・・・本人がいじめだと思ったら、もうそれはいじめだ、とよく言いますが、
まさにその通りだと。この話のように行き過ぎたからかいが、いじめになり、
いじめが自殺の原因になり、自殺が復讐の動機になるわけです。
私的にはハムラビ法典万歳ですが、日本ではそうはいきませんしね。
話の中に約20人(もっとかな?)位登場人物がいますが、
特徴を的確に言ってくれる、と言うかあぁこんなヤツクラスにいたわ、
って言う感じなので、沢山出てきてるはずなのに気にならない。
が、しかしながら主人公の説明がイマイチ。うーん周りの説明は上手いのですが。
話は若干わくわく感強めで進んでいきますが、キーポイントが少ない。
デジャブのロゴマークも結局正体が判ってから確信するし、意味無いじゃん的。
あと、美咲を好きだった光也がちらりと書かれていますが、
出来るならこの部分は全面的に押して欲しかった!と残念がる。
手の込んだ事件描いてるのに、男女関係まで書くと
話がごちゃごちゃになりそうだったから止めたのかなぁ?、と勝手に思ってしまった。
うん、そんなわけで私の一番好きなのは亮太の「悪かったな」です。
この一言のお陰で亮太の格がぐんとアップしてる気がします、人としでですが。
終始恐怖に追われたい時に。(そんな時無いって

*74

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