2007年7月17日 (火)

「温室デイズ」 瀬尾まいこ

温室デイズ 温室デイズ

著者:瀬尾 まいこ
販売元:角川書店
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学校に蔓延するいじめのお話です。これで瀬尾さん全部かな?
この話で書かれている状況はリアルなのか…?分かりませんが、
主人公たちの不安や葛藤などは、少し共感できました。
でもラストかがなぁ結局いじめに終局はないと感じてしまう。

学校が教室が生徒が、だんだん壊れてゆく。
今止めなければ手遅れになってしまうのに、大人は気づかない。
私の中学校は今まさに壊れようとしていた。
増えつづける喧騒、暴力、いじめ、もうここまで来たら、
後は崩れ落ち、ただただ終わるのを待つしかないのだ。
そんな時、一人「悪」に立ち向かったみちるは、いじめの標的になった。
いじめはどんどんエスカレートする。日々続けられるみちるへの
陰険な嫌がらせを見ていられず、私は学校へ行けなくなった。

生徒は皆、気づかないうちにいじめに関わっている。
いじめている人間もそうだし、勿論いじめられている人間もそう。
そして、周りで傍観している人間もそうである。
このお話にも書かれているのですが、いじめが起こりうる問題として、
生徒の環境の崩れがある。例えば授業への関心が著しく低下していたり、
器物破損が日常化していたり、人を嫌う事が当たり前になっていたり。
しかし根本的なところを突き詰めれば、これらの問題は、
平和な学校に、突然と現れたわけではないのだ。
それは家庭環境が原因であったり、ちょっとした事件が原因であったり、
本当に小さな出来事から、だんだんだんだん影を潜めながらやってくる。
子供達の歪んだ心のストレスの発散場所が学校になり、
そして誰にも止める事の出来ない負の悪循環が始まるのだ。
この話にも主人公もまたいじめられる側と、傍観する側として出てくる。
「崩壊」を目の当たりにし自らの体で感じる事で得るいじめの現状と、
「崩壊」をそっと離れ次第に悪化する様をただひたすら眺めている現状。
二つの立場から描かれた話は、「いじめ」という実態のないものを、
どこか三次元的に表して影響の広さを伝えてくれている。
しかし、なかなか当事者の気持ちを描けていないところが残念だと思った。
学校が怖くなり教室に入れなくなった優子。
彼女はカウンセリングを受けるのだが、至って精神は健康だった。
経験者から言えば、そんな事ありえないと思う。
学校にいけないが、本当は元気。そんな事ってないだろう。
きっと彼女にも何らかの原因や症状があるはずだと思う。
私も以前学校に行きたくない時期があったのだが、親が無神経だったので、
私は嫌々学校に通っていた。気分が悪い時は大抵が保健室にいて、
またある時はカウンセリングの先生と話をしたりした。
私もカウンセリングを受けろと言われた時は「馬鹿にするな」と正直思った。
カウンセリングの先生も私の会話や検査はあまりの正常だったので、
「早く教室に戻って勉強できるようになりなさい」と言った。
しかし、私はある日愕然とする事実を一つ見つけてしまったのだ。
授業中ノートに黒板を書き写している時、ふと数ヶ月前のページが
チラリと目に入り、私は目を疑った。
そのページ書かれた文字は、とても大きく溌剌としていたのだ。
それに比べ、今書いていた文字は、ミミズがのたくった字をしている。
その違いを発見した時、初めて自分が病んでいたのだと気づいたのです。
このようにきっと優子にもその苦しみが出ている部分があると思う。
またみちるだってそうだろう。この話は「いじめ」を書こうとするあまり、
「いじめ」によって生まれる個別の症状を、イマイチ描けていない。
そして学校で先生が刃物を振り回したら逮捕されるから現実的じゃない。
折角学校崩壊の様子が描けているのに、少し残念な気がしました。

★★★☆☆*84

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2007年7月11日 (水)

「強運の持ち主」 瀬尾まいこ

強運の持ち主 強運の持ち主

著者:瀬尾 まいこ
販売元:文芸春秋
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何とも胡散臭いお話でした…いや、だって占い師の話だから。
主人公が語る内容は、結局は人生相談。
人生上手く行くかどうかは、最終的には自分次第という本です。
うーん、何だかこの設定で話を進めるにはインパクトが…と思いました。
連続短編です。

ひょんなことから占い師になるこに決めた私は、
ルイーズ吉田として、ショッピングモールの小さな店で働く事になった。
次々にやってくる悩みをもった人々に対し、
初めは数式などを駆使し真面目に占っていたのだが、
いつしかそれさえも面倒になり、私は直感で占いを行う事にした。
他人の性格や、傾向を考えるのは、まるで人生相談のようで楽しい。
しかし、自分の運勢となると、冷静に見ることが出来なくなり…。

うーん、なんだがちょっと私には微妙でした。
一つ一つの題材はいいと思うのです、瀬尾さんらしい温かさもあり。
例えば「ニベア」なんか、心温まる親子愛を感じられて、
凄く好きだったのですが、何となく「占い」で邪魔されている気がする。
主人公もただの人なわけで、結局は騙している?感が漂う中、
続ける善意の行動が、いいのか悪いのか、悩むところです。
そういう職業なのだと諦めるしかないのか…。
「嘘」まではいかないけど、出鱈目な事を言い、お金を取る主人公に、
とても共感できず、折角のドラマが薄れたように感じました。
これなら、役所や何かの窓口で働いているのに、
いつの間にか人生相談が評判になり、人が来るようになった。
とかそういう方が、もっと前向きに喜べた気もしました。
まぁ最終的に言いたいのは、自分の人生の舵を決めるのは、
結局は自分なのだ、という事。占い師は、その決めかねている人の、
その背中をそっと押し、いい方向へ向うようにしてあるのが仕事である。
そう、上手く纏められているので、楽しく読むことは出来ます。
願わくば、もう少しばれないように引っ張ってくれると嬉しかったかなぁ、
途中で「きっと振り向かせたいのは父親だろう」と、
気づいてしまったりして、私の勘が鋭くなったのか、
それとも見え見えな事を、わざわざ主人公だけが気づかないのか…。
瀬尾さんの本は残り「温室デイズ」だけになってしまいました。
気がつけば結構読んでいるものです。次は佐藤さんでも攻めてみようかな。

★★★☆☆*80

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2007年6月14日 (木)

「見えない誰かと」 瀬尾まいこ

見えない誰かと 見えない誰かと

著者:瀬尾 まいこ
販売元:祥伝社
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さり気なく手にとったら、実は連続ショートエッセイでした。
私エッセイ苦手なんですよ、でもなかなか楽しめました。
ほんの殆んどが学校の話ですけれども、
読んでいると学校先生になりたいな、と思える本です。

エッセイなのであらすじ省略。
現役教師である瀬尾さんの日常、過去、の学校話が載っています。
子供たちとの接する大変さや、教育者としての不安……、
そんなことが瀬尾さんの柔らかい口調で、つらつらと表現されています。
瀬尾さんの本を読んで思うことは、明らかに私と違う視点の人間だ、
と言う事です。角度でいってしまうと180度くらいきっと違う。
だから、文章を読んでいると、「え?何でそこでそんな風に思えるの?」
とか疑問が湧いたりするのです。
しかし、自分と同じ考えの人よりも、違う人のものを見たとき、
その分得られるもの、量が違うと思います。
そんなところをしみじみ考えながら、読めました。
学校での子供たちの出来事も、例えば、悪口を言われたりとか、
嫌がらせをされたり、と言うとき、私だったらならば、
もっと陰険な文になり、教師なんてこんなもんかと挫折したり、
とりあえず負の方向に考えると思うのです。
しかし、瀬尾さんはプラス思考。「子供はこんなもんだと思っていた」
くらいの一言で済まされていて、「え?何でそこでそんな風に思えるの?」
と思うのです。しかし、本当は瀬尾さんだって、
負の事を考えているかもしれない。だけど、わざといい物を見つけ、
よりそれの魅力を引き出そうという精神が窺えました。
それが、私には出来ない。なので、この文章を読んで、
「あぁそうかこう言う時は深く考えないようにして、
こうゆう時は人に優しく接すべきなのだ」と不思議な魅力で
しっかり伝えてくれるのであります。
とりわけ楽しい話題も、面白い内容もありませんが、
ありのままの瀬尾さんの考え方を知る事が出来る本です。

★★★☆☆*80

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2007年3月 3日 (土)

「卵の緒」 瀬尾まいこ

卵の緒 卵の緒

著者:瀬尾 まいこ
販売元:マガジンハウス
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良いお話でした。
これは現実的にはこんな事ってあんまりないだろうな、
なんて思いつつもいつの間にかその愛情に頷きました。
瀬尾さんが書く温かさの源ここにあり、と言う感じですね。
家族の愛を感じました。

「卵の緒」
僕は捨て子である。
薄々感じ始めていたその疑惑を、どうしても確認したくなった。
僕には父さんがいない、だから色々な事を聞くのを躊躇っていたけど、
青田先生は例え父親がいなくても、親子の証に「へその緒」があると言う。
僕が母さんにそう問い詰めると、母さんは渋々小さな箱を取り出した。
蓋を開けてみると、そこには卵の殻が入っていた。

捨て子、とは少し違うけれど、血の繋がらない子を進んで育てるのに、
この話はちょっと奇異な理由ではないか、と思ったりもした。
別に不妊で悩んでいるわけでもない若い女が子供を引き取るのだから、
それ相応の理由があってもいいはずではないかと。
しかしこの母親は幼い育生を見た瞬間に、
その子供を手に入れたいと心から懇願するのだ。
ちょっと妙ではないか・・・と思わなくもない。
でも本当の母親が我が子を産み、手にした瞬間、
それって多分この母親と同じ気持ちになるのではないかと思った。
又、ずっと子供が出来ず悩んでいた夫婦などが、やむを得ず里子を貰い、
そうしてやって来た血の繋がらない子を見た時、そう思うのでは?と。
そう言う人たちにとっては、血の繋がりなんて些細な問題なのだろう。
確かに大きくなった時に、こうして育生が自分の生い立ちを知ったように、
母親はちょっとした話を設けないといけないかもしれない。
だけど、そんな面倒まで省みずに引き取り、育て上げたのは、
きっと他の誰よりもその子供に愛情があるからであり、
例えその愛情が「へその緒」の様に形ある証拠として残らなくても、
この抱きしめた時の温かさは誰にも負けないでしょう?と。
良いお話でした。
そんな愛情が羨ましいです。

★★★★☆*90

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2007年1月24日 (水)

「図書館の神様」 瀬尾まいこ

図書館の神様 図書館の神様

著者:瀬尾 まいこ
販売元:マガジンハウス
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ちょっと・・・うーん、イマイチ。
何となく繋がりが曖昧で要するに何を伝えたかったのかが不明瞭。
勿論、過去を振返り、あの頃の自分を見つめなおす事、
自分のしてしまった過ちを、そして友人を見舞う事、
など素敵な部分は多々あるのだけど、図書館との関係が良く判らない。
本の様に整理し、そして中身にはそれぞれの物語が広がっている、
と言う事なのだろうか?私はそう解釈しましたけど、よくわからん・・・。

私はどこかで神様を信じていて、間違った事はしていないと思っていた。
バレーボールに魅せられ一心不乱に練習し、ついには部長にまでのぼりつめた。
試合で勝つためには怠けた練習もやる気の無い返事なんてもっての他。
友人の心をへし折ってまで貫いていた、あの時の心は一体何だったのだろうか。
どれが正しくて、どれが間違っているか、物事はそう簡単に
分ける事が出来るはずが無いと、図書館の本たちが囁いている。

不倫をする主人公に一体どんな思いが込められているのだろうか?
上で書いたように図書館との関係が良く判っていない上に、
この不倫をする事によって主人公が何を得たのだろうか、と疑問である。
候補としては、「見返りの無い愛情」。
これに起因しているのは、友人の死であると考える。
全てが全てではないにしても、少なからず
自分の過ちによって自殺した友人のお墓に毎月お墓参りに行く。
そこで例えいくら反省をし、謝ったとしても何も直りはしないし返らない。
もう一つは、「主人公の判断基準の更生」。
これは間違っていて、これは正しいのだ。とはっきり線引きをし、
間違っているものは排除する。友人はその考えによって自殺したわけで、
少なからず主人公が「自分の考えは間違っているのかも知れない」と
思わせる要因であったと言う事。
また、不倫は初めから不条理な恋愛でありながら、止める事が出来ない。
しかしやっとの思いで関係を無かった事にして、振返れば、
いつでも心が幸せになるような美味しいケーキが残る。
これらの予測からどちらも、失敗によって気づいた重要な生き方である。
そしてそれに気づくのが図書館という場所で、そこから見える客観的な風景と、
多種多様な本から得られる、「物事には様々な考え方がある」と言う事だ。
主人公にとって、自分をより正しい方向に導いてくれたのは、
他ならぬ図書館であり、それは今まで信じてきた「神様」のようだ、
と言う事なのかな?と頭をフル回転させましたが、よくわからない。
うーん、皆さまどうでしたか?

★★★☆☆*83

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2006年12月27日 (水)

「優しい音楽」 瀬尾まいこ

優しい音楽 優しい音楽

著者:瀬尾 まいこ
販売元:双葉社
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面白い事思いつく人だなぁ、とちょっと感心した。
瀬尾さんのふんわりとした作風は健在で、
正面から考えると曲がったり歪んでしまう心を、優しく包み込む様に描いている。
しかし伝えたい事ははっきりしっかり訴えて、
それでいて嫌味にならない独特な雰囲気を携えている。短編3本。

「優しい音楽」
駅で衝撃的な出会をし、恋人になった千波。
次第に親密になってゆくが、何故か千波は僕を家族に紹介しようとしない。
やっとの事で彼女を説き伏せ、両親に会った時の彼らの反応は、
彼女が僕をはじめて見た時の表情とまったく同じだった。
不思議で偶然な出会いから生まれる、必然の恋と愛情の話。

始めの方で展開は読めてしまったのですが、心が温かくなるいい話でした。
兄とそっくりな彼氏。それってどうなのかな?と思うけども、
例え偶然顔が似ているから、と近づいた2人であったとしても、
その後その間に生まれる感情は2人のものだから、顔がどうって物じゃない。
2人で過ごす間にその愛の深さを感じる事が出来るのだろうけど、
ではやはり問題なのは千波の家族との関係である。
あまりの酷似に、まるで息子のように接する両親の思いは、
重すぎるし、どれだけ主人公を悩ませ、傷つけただろうと思う。
しかし息子を亡くしてばかりの両親の立場を取って考えれば、
まるで息子が帰ってきてくれた奇跡の様に映るのかも知れない。
そうした2面からの矛盾が続き、その隙間を埋めるために、
例えば、もし自分が嫌いであっても兄が好きだった物を美味しいと言う、とか
努力しなければならないし、どちらかが何かを我慢しなければいけない。
そんな複雑に絡まった問題を胸に抱いていたとしても、
自らが奏でる音楽のセッションで心を通わせると、
「自分は亡くなったお兄さんではないけれど、
お兄さんとは違った色で、この家族に溶け込んでもいいですか?」
と言う暗黙の温かな問いかけが流れ分かち合えて行く気がする。
そこが、この作品のとても魅力的なところである。
優しい音楽、まさにその通り。

★★★☆☆*87

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2006年12月21日 (木)

「天国はまだ遠く」 瀬尾まいこ

天国はまだ遠く 天国はまだ遠く

著者:瀬尾 まいこ
販売元:新潮社
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瀬尾さん2冊目。なかなか。
もうちょっとラブな最後になるのかしら、何て思っていたのですが、
微糖でおさえて、尚且つ華やかにする瀬尾さんワールドに拍手。
長生きするのもいいかもね、なんて思っちゃいますね(笑)

北。そのまた北の小さな集落、そこには客の来ない民宿・たむらがある。
何をやっても上手く行かない仕事と、拗れた人間関係に圧迫され、
身も心もボロボロになった私は、人生に見切りを付け睡眠薬で自殺をはかった。
しかし、私は死に切れず、2日後の朝に目を覚ましてしまう。
美味しいご飯や、人里はなれた広大な自然で過ごす気持ちよさと、
悩みや話の相手になってくれる民宿の田村さん。
1日、2日・・・5日・・・1週間とただただのんびりと生活しているうち、
今までのことは凄くちっぽけな事だったんじゃないか、と考え始める。

凄く世界の狭い話ですけど(笑)とてもいい話でした。
だって田村さんと久秋くらいしか名前出てこないしね。
仕事が行き詰って、人間関係がもつれて、体調が悪くなって・・・。
とても経験があるので、頷きながら読んでしまったけど、
そんな時って凄く視野が狭く、目の前にあることしか考えられない。
仕事なんて今の時代いくらでも転職できるって言うのに、
いざ辞めるとなると、陰口を叩かれるんじゃないか、と心配する。
(鬱になるいい例かと思いますが、こんなんじゃまだ鬱ではありませんよ)
あぁ死んでしまえたらどんなに楽だろうに・・・と思うのです。
でも、目覚めてしまって気づいたように、
自分はなんて恐ろしい事をしたんだろう、と蒼くなる。
自ら命を投げ出す時、その時の意思は確固たるものだと思っていたのに、
改めて見てみれば、それはただ勢いづいて周りを見失っていただけなのだ。
その事に改めて気づいた主人公と、周りを囲む穏やかな景色が心地いい。
ここにずっといれたらいいだろうに。
そう思うけど、これもやっぱり間違いで、
私にはここでは無い場所にきちんと居場所がある。
それがどこにあるがはまだ判らないけど、私は戻らなくちゃいけない。
振り返ってみた時、「あの時はよかったな」と後悔を含め思い出すのではなく
「あの時のお陰で今があるんだ」と思える暖かい場所。
ラストのマッチもまた会えるのかな、なんてロマンスがあるのかなと思ったり。
ほんわかないいお話。瀬尾さんは深刻な事を柔らかく優しく伝えてくれます(笑)

★★★★☆*87

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2006年12月11日 (月)

「幸福な食卓」 瀬尾まいこ

幸福な食卓 幸福な食卓

著者:瀬尾 まいこ
販売元:講談社
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初めて瀬尾さん読みましたが、雰囲気はメレンゲ。
ここまでふんわりとした雰囲気を小説の中で作れる作家さんて凄い。
と、思ったけど「幸福な食卓」と言うわりに、見た目が幸福じゃないけど。
でも、そっとどこかで守られている。
瀬尾さんワールドはとても温かいです。

私の家族は必ず4人揃って朝食をとり、そしてその場で悩みも相談する。
ある日、母さんが家を出てゆくと言ったのもそんな朝だったし、
またある日、父さんが「父さんをやめる」と言ったのも朝だった。
家族にどんな事が起きても時は止まる事無く、必ず朝はやってくる。
母さんがいなくなった家には、父さんではないお父さんと、直ちゃんと私。
皆はそれぞれ上手くいっているようだけど、やっぱりどこかが可笑しい。
そんな時、私の前には大浦勉学が現われた。

物語の書き出し、「父さんは、今日で父さんを辞めようと思う」
どんなに悲劇的な話の幕開けだろう、
と思いきやなんて事は無い、父さんが父さんをやめるだけ。
出て行ってしまった母さんも母さんで一人暮らしは上手く行っている。
瀬尾さんの文章でふんわりと仕上がった舞台だけど、
よく見れば凄く歪んでいて、「これって家族って呼べるの?」とも思う。
3年前の父さんの自殺未遂によって生まれた歪みは、
まだ拭い去る事は出来なくて、むしろそれに慣れてしまうそうな自分に
少し怯えている佐和子の気持ちがよく判る。そんな時現われる、大浦勉学。
救世主的に現われた大浦君は佐和子のより所であって、
家族がたとえ崩壊しても大丈夫、だなんて言うけど私はやはりヨシコと同じく、
家族をもっと見るべきだったんじゃないかなと思う。
不謹慎だけど大浦君がいなくなって落ち込んでいた佐和子を見かねて、
母さんは「帰ろうかな」と言ったのだし、ヨシコと揉めていた直ちゃんだって、
いつの間にか佐和子を心配する側にまわっていたのだから。
まぁ、それで家族がまた同じ屋根の下で暮らして上手く行く、
と言う確信はないけれど、大浦君が言ったように、
大浦君に限らず、佐和子は色々な人に守られている。
ふと振り返った時に人の優しさに気づき、じーんと来る本。
でもラストは私的に少し後味悪めでしたけど、全体的は好きです。

映画の主人公、北乃きいちゃんがとても合っていて可愛いです。
観なくては!

★★★★☆*88

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