2008年4月29日 (火)

「スローモーション」 佐藤多佳子

スローモーション (ピュアフル文庫) スローモーション (ピュアフル文庫)

著者:佐藤 多佳子
販売元:ジャイブ
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あああ…この話し口調どうにかならんのか…。
これだけで、かなり読む気失せるんです。
そもそも、なぜギャルしゃべりの女を主人公にするのか…、
私個人は生理的にパスです、すみません。

私の兄ちゃんは昔交通事故を起こして左足が悪い。
本当ならリハビリをすれば治るはずなのに、
何を思ってか兄ちゃんはそれについて何もしようとしないのだ。
その上、悪趣味な事に、兄ちゃんの部屋には、
その事故の瞬間を収めた写真が飾ってある。
まったく何考えてんだがわかんない。
母親がちがくて、微妙に気を使う私の家…ギクシャクする摩擦が、
次第に大きくなり始めた頃、私はとあるクラスメイトと、
密接なかかわりを持つ事になった。及川周子、のろまで変わり者。
しかしいつもゆっくり動作をするのには、理由があった…

うーん?というところである。
押し出したい「スローモーション」なのは、
人間の摩擦を避けるため、と言うのが、かなりインパクトが弱い。
その上に、この話し口調…どうにかならんのか?
と個人的に思いながら読んでいたので、
どちらかと言えばイライラしていた部分の方が多かった気がする。
佐藤さんの少年のしゃべり口調は好きなのだけど、
ギャルっぽい感じとか、ちょっと個人的ではありますが好きになれません。
なぜ、ギャルにする必要があるのか、
という根本的なところに辿り着きます。
だってこの話だと、普通の女の子でも成り立よ?と。
ギャルにするからには、それなりのギャル的な訴えたいこと、
というようなものを押し出して欲しいと思う。
ちょっと変わった雰囲気にしたので、ギャルにしてみました、
というのは何だかとてもいただけないなぁ、と思ったのでした。
そんなこんなで、文章短っ。ですが、このへんで。
梨木さんの「西の魔女が死んだ」以来の、
文章が原因の途中放棄を考えました。佐藤さんは好きな作家です。
その点は、重々、押しておきます。「一瞬の風になれ」は★5です。

★☆☆☆☆*--

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2007年10月25日 (木)

「サマータイム」 佐藤多佳子

サマータイム (新潮文庫) サマータイム (新潮文庫)

著者:佐藤 多佳子
販売元:新潮社
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うーん、ちょっとイマイチ、だと私は思ったんですけど、
アマゾンのレビュー評価は高いようで、単なる好みの差かもしれんです。
何せ、この本舞台が近未来だったので…(拒否反応)
なんで近未来にするのか、頗る謎です。

「サマータイム」
雷が鳴り響く嵐の日に、僕がであったのは片腕の少年だった。
右腕だけで力強く「サマータイム」を奏でる広一くんの姿は、
妙に僕を惹き付け虜にした。夏にピッタリな悲しい曲。
次第に仲を深めてゆく二人だったけれど、僕はいつも
彼の左腕の事と死んだ彼の父親の事を考えずにはいられなかった。
母親の再婚がダメになり、そして広一くんは突然街を出てゆく。
僕は戸惑い困惑する中、いつも彼の「サマータイム」を思い出した。

好きになれなかった原因として、多分二つの事がある。
一つは、無駄にこの話の舞台が近未来型区画住宅であることだ。
なんでそんな設定にしたのか、皆目見当がつかない。
ちょっと錆びれた田舎町にしたほうが、哀愁が漂ってよかったのでは、
とすら、思ってしまったほどだった。うーん、好みですね。
そして、もう一つは、結局は何が言いたかったのか、という根本。
勿論「サマータイム」というところからしても、
忘れられない過去の、あの夏の思い出、と言う懐古の気持ちは分かる。
情景も分かるし、一つ一つの事が輝いて見えた、
幼い頃を思い出す気持ちもきちんと伝わってくる。
それはそうなのだが、何か物足りないというか、
結局は弾かなくなってしまった広一の「サマータイム」とか、
そう言うものばかりに気をとられてしまった。
これから彼らはどうするのだろうか、変わってしまった広一と、
変わらない僕と佳奈は、またあの「サマータイム」のように、
歩みより、あの頃のような三人に戻ってゆくのだろうか?
何だか酷評になってしまったけれども…私は佐藤さんは好きである。
「黄色い目の魚」何かは特に良かったんだけど。
うーん佐藤さんは小学生というよりは、中~高校生の描写が好きかな。
といって、強引に締めくくってみる。

★★★☆☆*83

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2007年1月23日 (火)

「しゃべれどもしゃべれども」 佐藤多佳子

しゃべれどもしゃべれども しゃべれどもしゃべれども

著者:佐藤 多佳子
販売元:新潮社
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始めに言っておくと、これは模倣風作品です。
実に見事に夏目漱石の「坊っちゃん」を現代的に再現しています。
いや、それが悪いと言うのではなく、現代風に素敵にアレンジされていて感嘆です。
主人公が江戸っ子勇み肌で喧嘩っ早い所とか、
登場人物に奇天烈なあだ名をつける所、
しかも「山嵐」と対峙するように「村林」などと文字数まで合わせてくるから、
話のテンポも調子づき、ひょいと江戸の風味が現われる。
実にお見事。これはまず本家本元「坊っちゃん」をお読みになってからどうぞ。

短気で勇み肌、おまけに喧嘩っ早く、女にゃ疎い。そんな俺は、
「三つ葉」と言う芸名で高座に座る噺家、いわゆる落語家である。
3度の飯より落語が好き。そう胸に秘めながら揚々と喋るのだが、
他人の真似ばかりをし個性を出さない芸は師匠にも見限られ、
いまいち笑いの起きない席にもため息が出るばかりだった。
そんな時、俺はひょんな事から「喋り方教室」なるものを引き受けてしまう。
集まったのは無口な美女に、口下手な男、どもる青年に勝気な少年。
他人との会話におぼつかない人間に、自分が教えられるのはやはり落語しかない。
しかし自分自身でさえ人を笑わせるのがあれほど困難だというのに、
果たして一体何を教えられるというのだろうか・・・。

しゃべれどもしゃべれども、伝えたい事は伝わらず・・・。
この作品には暗にこのような意味も含まれている。
どれだけ人を笑わせられるか、それを競うため面白い噺をするのが落語である。
そんなイメージを蹴破って、実は人の心を引き合わせる道具になったりとか、
実は自分を見つめなおす機会を与えてくれたりとか、色々力があると教えてくれる。
話しを進める中で、重要なのがやはり「坊っちゃん」こと「三つ葉」である。
落語家としては風上に置けないような気性の激しさを武器に、
ところ構わず喧嘩腰になる、といった一風変わった人物設定がスパイスになり、
日本のワビやサビと言った文化を斬新に纏めてくれているようだ。
この効果がかなり効いていて、所々夏目さんの「坊っちゃん」をふいに思い出す。
やはり見所は、村林のくだりでしょうね。ジーンと来るものがありました。
今までいがみ合い、火花を散らしていた視線が緩み、
思わず噴出してしまうほどの笑いが溢れた時、
人を笑わせる事の大変さと、大切さと、嬉しさを胸いっぱいに感じて、
そしてその笑いの向こうにある明日が、少し明るくなった気がするのだ。
明日が昨日より少しでもマシな保証はどこにもない、
だけど、笑って空気が弾けた事により何かが、
見えないどこかが変わったような気がしてならないのである。
しゃべれどもしゃべれども、伝えたい事は伝わらず・・・。
本当に言いたいことは言葉では伝える事が出来なかったりするもの。
でもそんな時は決して臆することはなく、
あの4人のように言葉の無い空間で隙間を埋めさえすればいいのだ。
それが例え笑いの中で初めて緩んだ視線であったとしても、
それが例え言葉が出てこない不器用な沈黙であったとしても、それでいい。
そう思える本です。

でも、本を読んで映画は観たくなくなったような・・・。
と言いつつ観るかもしれませんけどね。
「や~なこった」とか言いそうな所が、伊東四郎は合っている気がします(笑)

★★★★☆*89

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2006年12月17日 (日)

「黄色い目の魚」 佐藤多佳子

黄色い目の魚 黄色い目の魚

著者:佐藤 多佳子
販売元:新潮社
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現代版「耳をすませば」みたいな雰囲気を感じた。(耳をすませばも現代か?
うーん、でももうちょっとゴタゴタしてるかな?
それにしても佐藤さんっていつの間にストーリーに引き込んでくれるんだろう?
途中から止まらなくなりました、青春っていいなとか思ったり(笑)
しかしながら、最初の章はどうして読みにくいんだ?
「一瞬の風になれ」もそうでしたが、どうも佐藤さんは最初でつまづく・・・;

絵の虜になって死んだ父のようになるもんか、と意地を張る少年・木島。
家族を嫌い、絵描きである叔父を絵も彼も心から好きになる少女・みのり。
ある日の美術の授業中ひょんな事から2人はお互いにデッサンする事になる。
人前で絵を描くのが恥ずかしい事だと思っていた木島の心に芽生えたのは、
「彼女をもっと描きたい」と言う素直な一つの願いだった。
モチーフとしてのみのりと、恋としての憧れの似鳥ちゃんへの感情。
しかしいつも頭のどこかに住む父が邪魔をし、その思いのゆくえを阻んでしまう。
キャンパスの上から伝わるデッサンの様々な思いと、
絵に対する真直ぐな感情にある、温かい気持ちが2人を少しずつ成長させてゆく。

この話、どうしても木島中心で見ちゃったのですが、どうなんだろう?
だって木島で始まって木島で終わってるし・・・とか言ってみる。
中盤まではお互いに話をしないからか、主体である時の性格の印象と、
相手を通した時の印象が異なっていて少し違和感があった。
特に木島は無口でサッカーをしてるヤツ、としか伝わらなかったし、
木島が語りになるとしょくしゃべるし(当たり前ですが;)、
「へぇこんな一面もあったんだ」と言う感じがしていたけど、
後半過ぎからは徐々に親しくなりお互いに心を許し始め馴染んでいる様子が好き。
ここで、「あぁ青春!」とか遠い目をしたりする私(寂しい人
やっぱり、「え?あ、村田」のシーンがいいかな、木島が可愛い(笑)
私的に木島のキャラクターがとてもよかった気がします。
ちょっと控えめで時には騒ぐけど心から真面目なヤツ。それが絵に伝わっている。
しかしながら、恋愛だけではなくて、みのりの他人をすぐ嫌いになる性質とか、
木島のやる前に諦めてしまうところとか、そう言うそれぞれの悩みに
必死にもがき葛藤して、突破口を見つけようとする所もしっかり描かれている。
佐藤さんは話し言葉で感情表現型な文章で、直にその気持ちが伝わってくるし、
主人公たちが考えている言葉が年相応でなるほどね、とも思う。
でも、それが裏目に出ている部分も有り・・・。
私だけかもしれませんが第一章の10歳の木島。
ちょっと無理があるのでは?と思ったりした。
だって10歳で語り手やらせたらそりゃ幼くなるって・・・と言う感じで。
確かに臨場感?は出ますけど、過去の回想シーンにした方がいい気もしてしまった。
そこでそうしないのが佐藤さんなんだよ!
とか言われそうなので、個人的意見として閉まっておきます。
全体的に良かったです。
ちょっとウルウル来るところもあったりして。

★★★★☆*92

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2006年11月16日 (木)

「一瞬の風になれ 第三部:ドン」 佐藤多佳子

一瞬の風になれ 第三部 -ドン- 一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

著者:佐藤 多佳子
販売元:講談社
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思わず泣いた。
100Mを11秒足らずで駆け抜けた瞬間、人は皆涙を浮かべるものだと思う。
その努力がついに実った時、見せるであろう表情が目の前に浮かぶようで、
私はずっと涙が止まらなかった。

いよいよ最高学年になり、インターハイへ向けての挑戦が始まった。
新しく入った一年のエース・鍵山を加え、俺・連・桃内がチームを組んだ。
軽快なスタートを見せた新チームだったが、早々に鍵山が故障してしまう。
怪我が回復するまでの穴埋めのためだけに起用された根岸の心中を思うと辛く、
またこのまま今まで通りの根岸がいるチームでいいのでは?
と言う危険な迷いが生まれてしまった。バトンパスの下手な鍵山より、
安定し心の通じ合った根岸の方がいいのでは?と俺は錯覚する。
しかし、それはインターハイに対した甘い考えであり、
甘えを許しただけの馴れ合い過ぎないと根岸に思い知らされる。

「いいコンビだ。おまえらは」
そう言われ、思わず顔を見合わせた2人の笑顔が思い浮かぶようだった。
レーンの上ではライバル同士で、言葉では「お前には負けない」と言いながら、
同じ決勝レースの場でこうして肩を並べ競り合う事を楽しんでいる。
その姿がまるで小学校の帰り道、思いついては「かけっこ」をした時のように、
無邪気で、それでいて漲った闘志がぶつかる迫力が赤いレーンの上で輝いていた。
前にいる連を追いかけ、追い上げる仙波を抑える。
そんな感覚を味わっている新二はやっぱりどこか半信半疑で、
本当に自分がこの2人と走れているのか?と言う問いと喜びが読んでいて楽しい。
こつこつと積み重ねた冬場の特訓が、ようやく実態となって現われ始め、
いつしかみっちゃんが宣言していたように、
自分は「速くなった」のだと気づいた時の胸をくすぐるゾクゾク感が新鮮である。
そしてリレーの決勝、夢の40秒台。
4人の力がガッチリと噛みあって、バトンがすべるように渡っていく。
新二の夢・チームの夢・根岸の夢・先輩の夢・みっちゃんの夢・兄貴の夢・・・
そんな物が全部詰まったバトンを手に、自分は走るのだ!と言う興奮が凄かった。
最後の最後、電光掲示板が一度付いて、消えて、
正式なタイムが出るまでの数秒のもどかしさは、ちょっと言葉では表せないけど、
あの瞬間の喜びときたら、他に何も思いつかない。

中学校3年の時、私の学年の男子4経も全国大会へ行ったけれど、
やっぱり大きな大会では大きな奇跡が起こるもので、
その時も、42秒80で大会新記録を打ち出し関東大会で1位をもぎ取った。
応援だけだった私でさえも、それはそれは鳥肌のたつほどの感動を覚えた。
一走者が飛び出し、二走者が3人ごぼう抜きし、
ダメだダメだと言われていた三走者が見事な走りをし、4走者がガッツポーズする。
その光景が今でも頭の中に鮮明に残っていて、彼ら4人はずっと笑い続けている。
それくらいこの一瞬は重く、そして衝撃的で、そして感動的だ。
「人間、嬉しい時って泣くんだ」ってあの時思ったのを思い出す。
先生も泣いていたし、部員も全員泣いていた。
それは4人の今までの苦労を見てきたし、
またその一員である事によって得た物は大きかったに違いない。
そんな思い・・・と言うか思い出である古い感情が、
新二や連に重なって、思わずあの光景を見ているような気がした。

最後、兄貴出てくるとなお良かったんだけど・・・!
でもスパイクだけでも十分かな、すごくよかった。
1→2→3巻でどうぞ。これはもう読むしかない。

★★★★★*94

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2006年11月14日 (火)

「一瞬の風になれ 第二部:ヨウイ」 佐藤多佳子

一瞬の風になれ 第二部 一瞬の風になれ 第二部

著者:佐藤 多佳子
販売元:講談社
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一瞬の風になる・・・。
そんな気持ち味わってみたい、そう改めて思った。
いいね、佐藤さん。止まらなくなるほどいい。
今3巻を買っておかなかったことを酷く後悔しました。笑
明日買おう。給料日まで待てないや。

連、それから仙波や高梨と競えるようになる。
目に見えない進化にジレンマを抱えながらも、自分の中で確実に彼らを捉えてゆく。
そんな中訪れるのは、今まで励まされ、そして戦ってきた先輩との別れ。
共に走り勝ち取った試合の喜びと、いなくなってから気づく先輩の存在感は、
計り知れず、何者にも替えることが出来ない。
それは判りきっている事だけど、でもやっぱり俺たちは前を目指すのだ。
俺が大きな夢、とも称される過酷な目標を前に走り出した頃、健ちゃんは・・・。

「わかっててもな、ありえなくても、もっと早く走りてえよ」
そう言った根岸の言葉が妙に頭に残っていた。
勿論連に劣等感を覚え、躍起になる新二の気持ちも判るけれど、
そんな2人のエースと共に走る根岸の感じるプレッシャーを考え頷いた。
皆そう思うのだ。
個人競技であれば、自分が遅ければそれまでで、自分の結果になる。
しかし4人の力でしか成し得ないリレーは、その中でも1人1人の力が重要で、
遅い者は引け目を感じずにはいられない「自分がもっと早ければ」と。
普段の練習では個人の事しか考えていない競技である代わりに、
不意にこうして4人合わせられた時の力と気持ちの配当が難しく、
また人間のドラマ?が生まれる場であるように思った。
もっと速く。もっと・・・。
単純に何の変哲も無いスピードと言う魔物に魅了され、
またそれすらも超えようとする。高校生ならではの秘めたパワーと、
希望を失った時の脆さが絶妙にブレンドされ、爽やかに心を駆け抜ける。

いい、1巻よりずっと。勿論、続けて読んでくださいね。

★★★★☆*90

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2006年11月13日 (月)

「一瞬の風になれ 第一部:イチニツイテ」 佐藤多佳子

一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ-- 一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--

著者:佐藤 多佳子
販売元:講談社
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高校時代に気持ちをぐぐっと引き戻させてくれて、
尚且つ、親しい友人と対話しているような気持ちになる、温かい本。
あぁすごく良かった、私的に?
私が陸上やっていたのは中学生でしたが、
すっごい懐かしくて思い出すだけで泣けそうでした。
だって、100Mリレー、私もスターターだったのです。
新二の気持ち、よく判る。思わず頷きながら読んでしまいそうでした。

俺・新二は、サッカーの天才的な才能を持ち合わせた兄貴がいる。
小さい頃から兄に憧れ、そして自分もそうなりたいとサッカーをしていた。
しかしその思いとは裏腹に、自分にはサッカーのセンスがあるようには思えない。
悩んだ新二は、天才的なスプリンター能力を持つ幼馴染・連につられ、
中学校まで続けていたサッカーを辞めて陸上を始める決意をした。
集団競技にはなかった個人へのプレッシャー・
自分がやらなければ始まらないと言う競技への激しい意気込み。
次第に陸上と言う競技に気持ちの高ぶりを覚えた新二は、
いつしか天才スプリンター・連を超える選手になろうと心に決める。

「イチニツイテ」
そう掛け声がし、腰を上げた時の緊張感が蘇るような気がした。
バトンを右手に持ち、グラウンドの第一コーナーを飛び出した時のあの快感。
二走者の背中が見え、バトンを押し付けた時の感触が目に浮かぶ。
新二が言うように、それは一瞬である。
100Mもの距離を走っていると言うのに、目の前にはいつの間にか連の姿があるのだ。
ジョグをしゆっくり立ち止まり、初めて順位を知る。
二走者は4人の中で1番早い人がやる事になっているけれど(実は距離が一番長い)
その時一走者は、そのたくましい走りの後姿を祈るように見つめる事しか出来ない。
あの時の私のように新二もまた連の姿を追いかけた事と思う。
リレーのいいところ、それは4人いるところ。
新二も感じていた、個人の100M競技では味わえないスタート前の微妙な余裕。
それは自分も気づかないうちにメンバーを信用し、また期待しているからである。
連とは喧嘩中で10日近く口をきかなかったけれど、
やっぱり新二は連を信用し「こいつなら後は任せられる」と思っていたのだと思う。
その信頼関係が微笑ましくて、やっぱり陸上はいいよね、といつも思う。

佐藤さん、実は初めて読みました。
イメージ的にもっと堅めの文章なのかなぁ・・・?
と思っていたのですが、ところがどっこい、砕けすぎ。笑(いい意味で
語り手(俺)の話し言葉で進められていくため、文体も柔らかくざっくばらん。
それでいてわざとっぽくなくて、どちらかと言うと話しかけられている雰囲気がいい。
私は石田さん・森さん系だなぁ、と思ったのですが、どうでしょう。
作者が女性だと忘れてしまうくらい少年らしさが表現されています。
願わくば、試合・・・と言うか走っている間の情景の移り変わりとか、
(いくら一瞬と言っても色々有るわけで・・・)があるといいなぁーとか思います。
それ以外は私の心をがっちり掴みました。2巻も買ってしまった・・・!

お薦め下さった、ふぇるまーたさんありがとうございました!

★★★☆☆*88

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