2011年11月25日 (金)

「キノの旅 Ⅷ」 時雨沢恵一

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感想書く機会を逸したままさささーっと時間が流れる日々を送っており
ますが、いつの間にか読んだ(と記憶している)本は、600冊を超えました。
早いもので。いや、そうでもないか。もっとたくさん本を読んでいるような
気がするのに、そうでもないのは、仕事で活字だらけの生活をしているからか。

「あー…」運転手が口を開いた。力のない声だった。「何さ?キノ」
モトラドが聞いた。キノと呼ばれた運転手は、ポツリと「お腹すいたな」
「だったら、止まって休む!空腹で倒れられたら―」モトラドの訴えを
「はいはい。何回も聞いたよ、エルメス」キノは流す。エルメスと
呼ばれたモトラドは「分かっててやってるんだから」呆れ声で答えた。
「そもそも、あの国が滅んでいたのがいけない」カーブを抜けながら、
キノが言った。
(Amazonより)

いままでこのブログのアフィリエイトという機能を使って、書籍の画像を
載せていたのですが、なんでもその機能のサービスが終了したそうで、
「ちょっと聞いてないんですけど」っていう気分で感想を書いております。
久しぶりにいっき読みしたキノの旅でした。なんでこうステレオタイプの
話が面白いなーって思うときがあるんでしょうね。連続で読み続けると
あまり面白くないないのはとてもよく知っているのですけれども、今回は、
キノとシズの対戦などがあったこともあり、テンション高々に読み終えま
した。しかしながら、1巻を読んだときと比べると、随分オタク寄りな
小説になってしまったなぁという気もしなくもありませんでした。そもそも
メディアワークスから出しているのですから、オタクではないと言い張る
方が間違っているような気もするのですけれども、だんだんとその領域が
突破されて「オタクですが何か?」みたいな強い口調に変わって来ている
みたいな、変化を感じたりしました。どうでもよい意見ですが、個人的に
シズや師匠だけの話になると、テンションが下がります。なぜだかわから
ないのですけれども、たぶん「キノの旅」というキノとエルメスが好き
すぎるので、それ以外の人物のオフエピソードは別にいらんわ、とそんな
気で読んでしまっている気がするのでした。なので、今回も途中までは
「ああまたシズ様」だわ、なんてテンションが落ち気味だったのですけど、
キノが登場したので「おおおーついに再会!」と意気揚々とページをめくった
のでした。あぁまさかそれをねらって時雨沢さんは書いているのかしら。
なんて思わなくもなく。ぐだぐだな感想。ぐだぐだ、しかしプツリと毎度
3日で終わる旅は清々しい。3日で何かやめ、次へ移行するということ
を一度でいいからやってみたいな、と月刊誌を作りながら考えていたりします。

★★★★★*88

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2010年3月19日 (金)

「キノの旅 Ⅶ」 時雨沢恵一

キノの旅〈7〉the Beautiful World (電撃文庫) キノの旅〈7〉the Beautiful World (電撃文庫)

著者:時雨沢 恵一
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する


この本は一体いつまで続くのか……最近電撃の新刊情報は、さっぱり
追いかけていないのでまったく分からないのだが、確か今12巻とか13巻
だった気がする。そしてこれは7巻。このままの状態で、倍の長さ続く
のか、と考えると正直辛い気がするのだが……巻き返しを期待したい。

「嘘つき達の国」
キノとエルメスが着いたその国には、キノが使える城門は一つしか
なかった。門をくぐり抜けた先には、太い木が雑然と伸びる森が
広がっていた。キノがエルメスのエンジンをかけようとした時だった。
森の中から、男が一人走ってきた。
「やあ旅人さん、どこかで僕の恋人に会わなかったかい?」
男はしきりに恋人のことを尋ねた。キノが恋人を見ていないことを
伝えると、しかし男は諦め切れない様子で、彼女は旅に出たが、
必ず戻ってくる約束をした、と話し始めた。街中に進み、キノが森の中で
あった男の話をすると、恋人を失った憐れな男の話を教えてくれた。
恋人を殺され気が狂ってしまった男は、彼女が帰ってくるのを、
ずっと待ち続けているというのだが……。

ひとつ前の巻を読んだ時にも思ったのだが、これはゴーストライター
が書いたのではないか、という疑念がある。いや、たぶんご本人なの
だとは思うのだが、そう思ってしまうくらい、最初の方の巻との
筆の運びが違うのだった。1巻では、凝縮された味が詰まっていて、
すぐに2巻目を読みたくなるくらいの中毒性を感じた。パターン化した
物語の進みの中で(森の中に一本の道があった。そこを一台のモトラド
(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が走っていた。という
冒頭がとても好きだった)しかし、ハッとさせられる瞬間がある。
それは短いながらも、各章の中にそれぞれ収められており、他にない
魅力を感じたのだった。でも、この巻にはそれがない。言葉は悪いが、
誰でも書けそうである。そもそも7巻も続いているので、マンネリが
生まれているのもあり、また、ネタ切れのためか、テーマが日本寄り
になっているのも残念に思うことの一つである。そもそも、キノの昔の
名前は「×××」という設定になっていることから、日本、という
枠内で展開されるものとして考えられたのかもしれないけれど。
やはり何度も例えを挙げるが、「コロシアム」なんかを読んだのを
思い出すと、現在とは違う魅力が確かに存在していたように思うのだった。
たぶん読んでいるみんなが期待しているキノと師匠の過去と、
キノの行く末(きっとまだ旅は続く……とか言って終わりそうだが)、
に期待したいところ。結構間隔を空けて読んだつもりだったけれど、
もう少し空けてもいいかもな、と思ってしまった。残念。
しかし、ちょっとした時間、例えば数分電車に揺られる間とか、
を埋めるには最適な本である。

★★★☆☆*85

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2009年11月 9日 (月)

「キノの旅 Ⅵ」 時雨沢恵一

キノの旅〈6〉 (電撃文庫) キノの旅〈6〉 (電撃文庫)

著者:時雨沢 恵一
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する


あれれ?この巻つまらいぞ。明らかに筆の流れが違うのだが、
煮詰まってしまったのか?ゴーストライターでも雇ったか?(笑)
スマートで軽快な文が売りだったのに、だいぶ弛んだ感じが出ている。
何でだろ?エルメスとキノの性格が変わって見えるけど、何でだろ?

「祝福のつもり」
私の名前は陸。犬だ。
白くて長い、ふさふさの毛を持っている。いつも楽しくて笑っている
ような顔をしているが、別にいつも楽しくて笑っている訳ではない。
生まれつきだ。シズ様が、私のご主人様だ。
バギーを修理に預けると、シズ様と一緒に国を見て回ることにした。
中心部の豪華な町並みから外れ、道を進んでいくと、
次第に景色が悪くなり、汚い家々が増え始めた。この国には「身分」
というものがあり、それは絶対なのだそうだ。シズさまがホテルで
佇んでいると、一人の少女がドアを叩いた。「私を買ってください!」
とシズ様に懇願している。貧しい町には仕事がなく、少女は困って
いるようだ。断り続けるシズ様だが、少女は毎日、毎日やって来て――。

短編集が1巻毎に8話前後+巻頭が入っているので、単純に考えても
60話考えたことになる。そりゃネタも尽きるわな……な領域である。
しかし、今までそんなマンネリは感じさせずに続いていたのだが、
今回は普通の文章になってしまったように思った。なんていうか、
今まではぴりりとしまった文で、しかも性格がさっぱりした2人だった
のに、文が緩んで、会話も単調になってしまったように感じた。
しかも会話なんかおかしくないか……?エルメスが妙に妥協しやすい。
特に「花火の国」あたりで。そう言えばこの6巻が出たくらいに
「アリソン」の方の執筆も始まったんじゃなかったか……
関係あるのだろうか、とか考えてしまった。それともう1つ、
ネタ切れという意味もあるいは含むけど、物語の設定が、
とても庶民的な日本よりな感じになってきたからだろう。
最初はとても欧風なイメージで進んでいたように思う(わたしだけか?)
のに、「安全の国」も「花火の国」も思いっきり日本の皮肉である。
うーん「コロシアム」とかの生き生きとした頃を考えてしまうと、
やっぱり物足りなさを感じてしまう。というわけで、あまり
楽しめなかった第6巻だった。当時どうやらここで読み止めたようである。
やっぱり当時のわたしもつまらないと思ったのだろうか?とか思ったり。
散々文句書いたけど、面白いには変わりはない。ただ、ネタ切れ感が
漂っているよなぁ、なそんな感じで。続けて読まないほうがいい、
というのもあるかもしれないな、気をつけよう。

★★★☆☆*78

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2009年11月 6日 (金)

「キノの旅 Ⅴ」 時雨沢恵一

キノの旅〈5〉the Beautiful World (電撃文庫) キノの旅〈5〉the Beautiful World (電撃文庫)

著者:時雨沢 恵一
販売元:メディアワークス
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ようやく気づいたのだが、時雨沢さんの描写には擬音が存在しない。
例えば、「モトラドがブロロロと音を出して過ぎ去った」とか、
文章に甘えがないのである。まぁそれを甘えと言うか否かは別だが、
ありそうでない、その余分こそがその世界を生み出す仕掛けではと。

「病気の国」
城壁の中には、外と同じ景色があった。茶色の岩山が続く、
草の一本もない荒れた大地だった。
「寒々しいね、キノ。空気も、景色も」走りながら、モトラドが言った。
「まあね。何もないね」キノと呼ばれた運転手が答えた。
「ここは、こういう国なのかな?」
「それがね、エルメス。この国はとても発展していて、建造物の中で
ほぼ一生暮らすことができる、きれいで清潔な国だって聞いているんだ」
「それ、絶対にガセ」エルメスと呼ばれたモトラドがすっぱりと返す。
気が遠くなるほど進み続けると、ようやく近代的なドームが現れた。
入国したキノは、ホテルのオーナに、病気の娘に旅の話を
してほしいと頼まれ、承諾した。病気の少女は一人の勇敢な男の子と
文通をしており、手紙を届けてほしいと頼まれるのだが……。

もしもライトノベルだから、という理由で読むのを躊躇っている方が
いたら、ぜひ騙されたと思って読んでみてほしい。買うのが恥ずかし
かったら、図書館で借りてくれば大丈夫。そもそもライトノベル、
というものに恥ずかしさを覚えるかどうかは疑問だが、少なくても
わたしは少しの躊躇いがあるのではないかと思う。そういうオタク系
ではないのかとか、そもそも文学的ではないだろうとか。しかし、
この本は違うと言っていいと思う。読みやすさ、と言う点と、
伝わりやすさ、と言う点から、異次元を作るためファンタジー的な
枠組みにされているが、この本は違った意味で価値がある本だと思う。
わたしはこれほど洗練された文章を他で味わったことがないと思う。
時雨沢さんの文章は、とても整然としている。擬音や形容詞を、
あまり用いず、的確に状況を書いている。「―た」「―だった」と
続く文章が、これほど心地いい本は他にない。それに描かれているのは
とても社会的な内容となっている。誰もが一度は感じた理不尽な思いや
笑顔の裏側に隠された残酷な事実が、とてもライトに書かれている。
一度読んだらその分かりやすさと、低空の感情が病み付きになるだろう。
と、前置きが長いが、今回も最高なのは「あとがき」である。
って言うかもう「あとがき」ですらないのだが……読んでみれば分かる。
もちろん本編も面白い。この本は「病気の国」を覚えていた。
届かない手紙の先には、死んだ事を隠し続ける国家がある。
まさに「病気の国」である。最後の「長い話をしよう」という一文が、
何とも苦く、それでいて「次」を感じさせる終わりである。
さて、次は読んだことあるのだったかな? たぶん6巻くらいまでしか、
読んでなかった気がするんだよね。時雨沢さんもたくさん本出してるな。

★★★★☆*86

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2009年10月19日 (月)

「キノの旅 Ⅳ」 時雨沢恵一

キノの旅―The beautiful world (4) (電撃文庫 (0440)) キノの旅―The beautiful world (4) (電撃文庫 (0440))

著者:時雨沢 恵一
販売元:メディアワークス
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早くも四巻目。すぐ読み終わっちゃうからな、さすがライトノベル。
この巻の内容は、割かし良く覚えていました。特に殴り合いの夫婦喧嘩。
何が記憶に残るかなんて分からないものですね、まったくまったく。
で、何度も言うようですが、この本で一番楽しいのはあとがきです。

「認めている国」
潅木がまばらに伸びるその草原を、一台のモトラド(注・二輪車。
空を飛ばないものだけを指す)が走っていた。後輪脇とその上に、
旅荷物を満載したモトラドだった。遠慮のない爆音を響かせながら、
真っ直ぐ延びた一本の道を行く。運転手は茶色のコートを着て、
余った長い裾を両腿に巻きつけてとめていた。頭には、耳を覆う
たれのついた帽子をのせている。運転手は太陽の光を確認して、
コートの襟元を開けた。「この気候なら、もうコートや手袋は
いらないな。売るか、何かと交換するか、捨てるしかない。
結構気に入ってたんだけど」キノは残念そうな声で言った。
「まあしょうがないね。いらないものをすっぱり捨てられるのも、
人間の才能だよ」エルメスが慰めた。国に入ると、丁度投票が
あるという。誰にも必要とされない「いらない人」を決める投票である。

この四巻のあとがきは、ぜひ最後に読んで欲しい。いやもう、
時雨沢さんの完璧なまでのあとがきに拍手喝さいで、何も言えない。笑
内容は、というと、今までの3巻までの話とはちょっと角度が違い、
より読者にとって親密な内容の「国」になっている。むしろ、
「国」ではなく「地域」と言えそうな、ある意味にかよった、
ものなのだがまったく出涸らしなんかではない、きちんとした
パターンと、組み込まれた要素がある。親近感を覚える原因は、
その「国」がとても自分の「国の人」に似ているからだ。
まったく違う国に住んでいたとしても、人びとが自分とまったく
同じ思考回路をしていたとしたら(実際あり得ないのだが)、
やはりそれは親近感を覚えるんだろう、というそういう理屈。
そのパロディ要素が上手いこと組み合わさっていて、
より身近で起こっているような、より自分に関係しているような、
そんな気持ちで読むことが出来る。「認めている国」なんかも、
明日からでも、日本で行えそうである。(実際あり得ないのだが)
その「出来そうだ」と思わせることが出来る、というのが、
時雨沢さんの凄いところだろう。あと、あのあとがきね。
あれを読んだら、あぁ、この人まだまだ大丈夫、って思えるのだ。
だって、尽きなそうだもの才能が、なんて。
これはどうでもいい話だが、必要とされない人が消されてゆくなら、
人は皆必要とされるように頑張るのだろうか? いや、
頑張らないだろうな。以上、今回もためになりました、ありがとう。
13巻が出たらしいね。いつ追いつくだろう。

★★★★☆*86

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2009年10月 1日 (木)

「キノの旅 Ⅲ」 時雨沢恵一

キノの旅〈3〉the Beautiful World (電撃文庫) キノの旅〈3〉the Beautiful World (電撃文庫)

著者:時雨沢 恵一
販売元:メディアワークス
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再読。果たしてキノは何巻まで読んだ事があるんだろうか……。
読んでいると、覚えている物語も、初めて読むように思う物語もあって、
あぁ記憶力ってこんなもんよねぇーとかしみじみ思ったりした。
たぶん7巻まで位だと思うんだけど……だって表紙の絵を見たことないから。

「同じ顔の国」
キノが審査官に、観光と休養で三日間入国させて欲しいと告げる。
すると審査官は条件を一つ出した。「入国前に、キノのさんの
血液を検査させていただきます。これは、今までない病気を国内に
入れないようにするためです」しぶしぶ承諾したキノは、
検査の結果を待って入国した。歓迎し、待ち構えていた人々に
案内され、キノはホテルに向かった。ボーイがエルメスの荷物を
わざわざ持って運んでくれた。大きな部屋に入り、キノは考え事をした。
「今日今まで会った人達は、審査官も、フロント係も、ボーイさんも、
みんな、オーナーの家族……、かな? あまりにそっくりだ」
そう、先ほど顔を見た全ての人が、同じ顔をしていたのである。

時雨沢さんの欠点は、あとがきが一番面白い事だと思う。
いや、本編も文句なしに面白いんだけど、あとがきを読むと、
時雨沢さんがどのような人なのか、説明書付、みたいな感じなのだ。
なので、あとがきから読んだらいいと思う。
大丈夫、ネタバレなど、いっさい書かれていないので。
本編の感想は、と言うとコンスタントに思いつく、この皮肉、
がとても凄いと、毎度思う。それにこの丁度いい長さの短編が、
ちょっとこのへんで止めておこうかな、と思える素晴らしい区切りでも
あって、ちょこちょこ確実に読んでしまう仕組みである。
「同じ顔の国」を書いたけど、一番良かった、というか好きで、
前読んだ時の事を覚えていたのは、「機械人形の話」だった。
キノとエルメスが滑稽に繰り広げてゆく旅だけれど、ふとした瞬間に、
耐え難い寂しさが詰め込まれている時がある。本来旅なんてそんなもの、
なんだろう。入国し3日間いて、楽しかった。そしてまた違う国へ行く。
手を振ってくれる国の人に送られて、出てゆき、あの人はまだ元気
だろうか、なんて考えたりするんだろう。しかし、世界は脆い。
はやり病や天災によって、人はあっけなく死ぬ。
目の前で見る人の死と、その国を離れている間いつの間にか
いなくなっている死とでは、重さが違うのだ。同じ、死なのに。
それを痛感できる物語である。だからじゃあねと言って分かれるとき、
これまでになく感謝をこめて、しかし感傷などもたず、
分かれたらいいんだと思う。それは、本の中でも、この世の中でも。

★★★☆☆*86

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2009年9月22日 (火)

「キノの旅 Ⅱ」 時雨沢恵一

キノの旅〈2〉the Beautiful World (電撃文庫) キノの旅〈2〉the Beautiful World (電撃文庫)

著者:時雨沢 恵一
販売元:メディアワークス
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再読の再読の再読くらい。旅に出ると、つい読みたくなるのは私だけか。
初めて読んだのは確か中学生の時だったけど、今読んでもやはり面白い。
しかし読んでいると、あぁそうかキノは「×××」と言う名前だったのか、
とか、当時悶々としていたことが簡単に分かった。成長したのかな。笑

「優しい国」
森の中に、一本の道があった。
そこを一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)
が走っていた。運転手はシャツの上に黒いベストを着て、
襟を大きく開けている。黒髪の上に鍔つきの帽子をかぶり、
ゴーグルをはめていた。その下の表情は若い。右腿の位置で、
ハンド・パースエイダー(注・パースエイダーが銃器。
この場合は拳銃)がホルスターに収まっている。
「実を言うとね、エルメス」運転手はモトラドに話しかけた。
「今から行く国は、あまり……、いや、かなり旅人の評価がよくない」
不安を抱きながら入国した1人と1台だったが、予想外に、
国の人々は親切丁寧だった。むしろ今まで受けたことのないほどの待遇だ。
キノは自分の約束をやぶり3日以上滞在しようとまで考えたが、
決まりは守るように警告され、国を追い出されてしまい……。

順に読んでいくと、自然と時系列に並んでいるように錯覚してしまう
もので、しかし、このシリーズは初めに忠告されているが、時系列順には
並んでいない。その証拠に、この「優しい国」では、1巻からの
キノの常備銃である、「森の人」を入手する物語となっている。
おまけに、ここで出会う女の子は、キノの昔の名前(と思われる)
女の子で、特別な親しみを感じている様子が描かれており、
極道……もとい師匠(この巻ではまだ登場はしない)を知る人物
が登場するなど、意味深な物語になっている。
しかし、ここは時雨沢さんらしく、情に落ち着いたりせず、
きっぱりと、なくなる。そう「なくなる」淡く感じたはずの懐かしさと、
人間同士生まれる親しみが、呆気なく消えうせる様子は、
読んだ瞬間に身震いをする。最後に見せた優しさを、突きつけられる
悲しさを、どう処理していいのか、迷ってしまうほどである。
だって、もう、いないのだから。そうした胸の空く思いを、
とても上手く描いている。物語は1巻の方が教訓めいていてよい。
こちらはどちらかと言えば「情」的なものが多くて、
このシリーズのよさが分かりにくいかもしれない。
時間の隙間に、流し込みたい小説ですね、まったく。昔も今も。

★★★★☆*86

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2009年8月19日 (水)

「キノの旅 Ⅰ」 時雨沢恵一

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461)) キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

著者:時雨沢 恵一,黒星 紅白
販売元:メディアワークス
Amazon.co.jpで詳細を確認する


キノの旅、封印してあったけど、封印を解いてみた。笑
昔よく読んだんですよ。楽しくてねぇ中毒性が高いもんだから。
あと黒星さんの絵も大好きで。昔よくサモンナイトで遊びましたよ。
中学生だったな、恐ろしいほどゲームはまってました。オタクだな。

「多数決の国」
森の中に、一本の道があった。
そこを一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)
が走っていた。運転手はシャツの上に黒いベストを着て、
襟を大きく開けている。黒髪の上に鍔つきの帽子をかぶり、
ゴーグルをはめていた。その下の表情は若い。右腿の位置で、
ハンド・パースエイダー(注・パースエイダーが銃器。
この場合は拳銃)がホルスターに収まっている。
キノ、と呼ばれたその運転手は、城壁で囲まれた国に到着すると、
入国手続きをしようと人影を探した。しかし見つからず、
仕方なく無断で入国することにした。3日間と決めている
滞在期限が迫り、国を出ようと言うとき、一人の男を見つけた。
この国のたった一人の住人だった。彼はこの国の経緯を語り始め……。

サモンナイトの話をしたら、ゲームをしたくなってしまった。笑
しかし、今はゲームをやる時間などない。と理由をつけ、
やらないことにする。この本の面白さは、やはりキャラクター。
旅人・キノと、モトラド・エルメスのやり取りが面白い。
何せモトラドが当然のごとくしゃべるのだが、みんな黙認。
そんなパラレル性がありながらも、語られている物語は、
最高にグロテスクで、尚且つ現実的である。とりわけ、
この「多数決の国」なんかは、まさに今の世界を語っているようで、
その皮肉さと滑稽さに、エルメスと一緒に笑うのが心地いい。
王様の絶対王政から逃れ、これからは市民平等、多数決で決めよう
と決めた国民だったが、何かの政策につけ、必ず生まれる
反対意見を消滅させるため、少数派はどんどん殺されてゆく。
国民が半分になり、さらに半分になり、最後の3人になり、
最後は男一人になった。男はこの国の多数決が、人間が
生きてゆく上で最大の要素だと信じて疑わない。けれど、
よそから来たキノに、「それは間違っている」と一言
言われるだけで、一瞬にしてその世界が絶望に変わることを
知るのだ。滑稽、そして、それが現在の世である。
人が残酷にどんどん死に、けれど、それが現実である。
残酷だから、美しく、その殺ぎ落とされた文章は、
やっぱりいいなと思う。そして中毒性があるのだ。
気づけば結構な巻数出てるみたい。時代は流れるね。

★★★★★*95

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