2011年7月24日 (日)

「そして二人だけになった」 森博嗣

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫) そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

著者:森 博嗣
販売元:新潮社
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だいぶ久しぶりの森さんでした。いや、小説をゆっくり読むこと自体が
久しぶりで、とても楽しくいっき読みでした。この本は送別の品で頂いたの
ですが、これをくれたお兄さん的には、「森博嗣の中で一番好き」だ、
そうです。わたしは、なんだろ……やっぱり「フラッタ・リンツ・ライフ」?

全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊。
その内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に科学者、医師、
建築家など6名が集まった。プログラムの異常により、海水に囲まれて
完全な密室と化した「バルブ」内で、次々と起こる殺人。
残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は…。
反転する世界、衝撃の結末。知的企みに満ちた森ワールド、ここに顕現。
(Amazonより)

確かに森ワールドが炸裂していた本だった。森さんは、S&Mシリーズを
始めいろんなシリーズや単発を出しているが、それらの部分部分を、
少しずつ集めたような本だった。はっきりとしたヒーロー・ヒロインの確立、
建築工学を使った物語、トリックの曖昧さ、意味のない(わからない)
完璧な密室殺人、人格の入れ替わり。すべてが揃っている。
わたしは、『スカイ・クロラ』シリーズ以外では、S&Mシリーズの
『封印再度』『数奇にして模型』が好きだが、そうしたこれらは少し偏って
いると思う。『封印再度』は、なんだか伝統呪いの殺人のようだし、
『数奇にして模型』はプラモデルオタクな根性が見え隠れする。
その点この本は、それらの偏りを排除し、より「森博嗣」らしさを感じるな、
と思ったりした。のだが、相変わらずトリックの曖昧さ、意味のない
(わからない)完璧な密室殺人、の部分で、読み終わった後の読後感が
非常によろしくないのが難点。もちろん、トリックに、
「なるほど、そんな仕掛けが!」と伊坂幸太郎ばりの驚きをもったりも
したが、突き詰めてゆくところの「なぜ殺したか」の部分で、
「特に理由はない」といった結末がやってくるので、あぁ森博嗣、と
思うと同時に、もう少し(嘘でもいいから)愛憎劇なんかの殺人理由が
欲しいところだと思った。森さんは人を殺してみる文章を書くのは好きだが
実際のところ人を殺したくないのだろうな、となんだか妙に納得してしまう
ほどの、殺人ながら善良な終わり方をしておりこの本が森博嗣の中で一番好き
と言っていたお兄さんの気持ちが分からないでもないな、と思った。
まぁ、やはりわたしは『フラッタ・リンツ・ライフ』が一番好きですけれども。
つられて、もう一回読みたいなぁ、と思った。

★★★☆☆*85

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2010年12月 3日 (金)

「有限と微小のパン」 森博嗣

有限と微小のパン (講談社ノベルス) 有限と微小のパン (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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a flood of circleのツアーを観にうっかり遠出したのですが、そのホテルで
ずっと読んでいた本でした。S&Mシリーズ最終巻であると同時に、
人を殴りたくなるこの分厚さ(冗談です)。なんだかもったいなくて
ずっと読めずにいましたが、満を持して読みました。もう森味の虜。

日本最大級のソフトメーカー「ナノクラフト」のテーマパークに
やってきた萌絵と友人たち。この旅行はゼミ合宿も兼ねており、
後日犀川のゼミ生たちが合流する予定であった。それと萌絵には、
もう一つの予定があった。実はこの「ナノクラフト」の社長・塙は、
萌絵の昔の婚約者であり、面会を求められていたのだ。現在、婚約は
解消されているとは言え、両親の義理もあり、顔を合わせることにした。
パーク内の協会で塙との面会を果たした萌絵だったが、
その日の夜、殺人事件に巻き込まれる。塙と会ったその協会で
「ナノクラフト」社員の男性が殺されたのだ。一度萌絵が確認した死体が、
何者かに持ち出され消失するなど、男性の死には不可解な点が多い。
さっそく萌絵は推理を始めるが、ふと次に狙われるのは自分だと気づき……。

長すぎる。第一声がこれかよ、という感じだが、本当に長いのである。
講談社ノベルズの新書版で読んだのだが、それですら上下二段、600P……
ほほほ、やってくれるね、森さんって感じだ。内容はどっぷりとS&Mシリーズ。
いつの間にやら萌絵は、「先生大好き」みたいな空気になっており、
ついに、ようやく、この時が、とにこにこ読了したが、二人の仲は
これといって発展せず(森さんに言わせれば、人間発展しないということは
ありえない、とか冷静に言い返されそうだが)なんでやねーん、な終わりで、
笑うしかなかった。と、犀川と萌絵についてもそうだったが、事件の結末も、
なんでやねーん、な感じで、「あぁ心のそこからこの本を絶賛しているのは
熱狂的な森信者に違いない」と思った。はい、わたし、森信者です。
事件は不可解、を通り越し、ありえない、という領域に突入。死体が
あったのに忽然と消え、片腕だけが現場に残されている。この事件だけでも
興味津々になり、どんなトリックが説明されるんだろう、わくわく、
となったが、さらに事件は立て続けにおき、密室殺人、デジタルトリック、
などなどこれでもか、と様々な殺人技法が目白押しだった。
で、肝心のトリックは……。そうですよね、そうですよね、森さんですもん。
よくわかります、ないんですよね、トリックは……。まぁ、この辺は、
是非読んでからご堪能下さい。このトリックと殺人感情の皆無が、
森信者の、森崇拝要因だと思いますので、えぇ。と冗談はさておき。
最終巻を意識してか、雰囲気は第一巻『すべてがFになる』にとてもよく
似せられていた。天才科学者・真賀田四季の登場。その圧倒的な存在に、
萌絵と犀川が動揺し、しかしまた強くなっていく様子が描かれている。
精神を学びに学んでも、人間の脳内感情をコントロールすることはできず、
だけど、何か衝撃的な物事に直面した際、ショックで感情を歪めながらも、
人間は感情を再生し、生きてゆく。あるいは再生などではなく、もう一人の
自分、といった感情が存在しており、それらが入れ替わる事で、それぞれの
特性を生かし、ショックから回避するのではと。と、思考してみても、
所詮目には見えないもので、科学的な整列を好みながらも、そういった
感情には機械はお手上げなのだ、と締めくくられている。
神様、よくわかりませんでした。わたしも、これ終わっていいのか、
よくわかりませんでした笑。世界はよくわからないこと、だらけです。
終わっていいのかわからないと書きましたが、最終巻に相応しい本だと
思います。とても楽しい時間でした。森さん、ありがとうございます。

★★★★☆*87

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2010年8月27日 (金)

「キラレ×キラレ」 森博嗣

キラレ×キラレ (講談社ノベルス) キラレ×キラレ (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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森博嗣は一体いつから社会派ミステリ担当になったのだろうか……、
と首をかしげた本だった。確かに森さんなんだけど、かつて、
「これぞ森博嗣」と言わしめていたその部分が、とても薄まっていて
どこにでもあるミステリ小説になってしまったなぁ、と思った。

椙田探偵事務所助手である小川は、同じく探偵である鷹知祐一郎と共に、
ある事件について調べることになった。ある日の満員の通勤電車内で、
三十代女性OLが、何者かによって背中を切りつけられたのだ。
体が密着し、身動きが取れなくなること数分。駅に着き、
電車の扉が開くと同時に、彼女たちはカッターのようなもので、
何者かに切りつけられられていた。傷は軽症で一度目は事件として扱われ
なかったが、現時点では三回の切り裂き事件が起きており、
いよいよ事件性を帯びてきた。合わせてその事件と関係性の高いと
されていた精神科病院の調剤師が殺される事件が発生し……。

森さんなんだけど、森さんじゃないような。スイカの赤くて美味しい
部分が、すでに誰かに食べれてしまった後、のようなスイカだった。
……と変な例えをしてみたが、あまり面白さ・面白み、といものを
感じられずに読了した。そもそも、通勤電車内で30代女性を切りつける、
なんていう事件を森博嗣が書くことにまず驚きである。なぜこんな
平凡な……云々、まずそこで文句。森博嗣、と言ったら、おいおい、
そりゃないだろ、的な死体の数々と、おいおい、そりゃないだろ、
的なトリックの数々が売りだったはずで、しかし今回の本ではそのような、
森博嗣味をまったく感じなかったのだ。おまけに、ストーリーが進む
過程において、登場人物が全て怪しい、という状態が、最初から
最後までつきまとう。助手の真鍋ですら、もしや犯人なんじゃ?
と思わせぶりな展開を見せるのに、結論に向けて犯人が、証拠などで
特定されてゆかない。登場人物中、全員誰が犯人でもOKみたいな
状態から、犯人はあの人でした!、と突然結論が出るので、
後からの説明(もはや後述談)がすべて、あとづけがましく、
大変残念な気分になる。例えばこの設定であっても、あいつが犯人かも、
そいつが犯人かも、と読者を左右に引っ張ることが出来たら、
もっと面白みがあった気もするけれども、それがないので、
本当、蜜のないスイカ、みたいな話だった。スイカって言われりゃ、
スイカだけど……みたいな、森さんって言われりゃ、森さんだけど、
な、納得のいかなさである。うーん。いや、森さん大好きですけどね。

★★☆☆☆*75

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2010年4月21日 (水)

「レタス・フライ」 森博嗣

レタス・フライ Lettuce Fry (講談社文庫) レタス・フライ Lettuce Fry (講談社文庫)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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巷でボロクソに言われている森博嗣の短編集。ははぁ、こりゃボロクソ
言いたくなりますわ。萌絵に頼るなよ、と嘆きたくなる短編集。
もっと違ったいい味もっているはずなのに、萌絵が大好きすぎて、
他のキャラクターを創造できていない残念さ。しかも難しいし。笑

「皇帝の夢」
丘に向かって幅の広い真っ直ぐな階段が続いている。権力を集めた
皇帝の墓だ。私はその階段を一段ずつ上っていった。
ガイドを申し出てくれた現地の若い女性も一緒である。
私は数日前に見たある夢の話を女性にした。ふわふわと宙に浮いて
いるようで、音はホワイトノイズに満たされている。今まで体験
したことのない感覚だった。夢の最後には、眩しい光を感じ、
目覚める瞬間に耳元である言葉を囁かれたのだった。中国語であった
その言葉は、昔の皇帝の名前であった。
「それは、神さまが知らせようとしたのですね」女性は言う。
階段はまだ続いている。限界に近い。もう一段くらいなら、と片足を
あげる。そうか、これは夢かもしれない。誰かが見ている夢なのだと思う。

この短編集の中で「皇帝の夢」が一番好きだった。炎天下、歩き続け、
意識が朦朧としながらも階段を昇り続ける。その感覚は、夢でも
同じものを味わったことがあるように思え、階段を上っている自分は、
誰かの夢の中の、人物なのではないか、と考える。この人の神秘に
触れるような、絶妙な物語、最高である。とても短いショートショート
なのに「はっ」とするような輝きがある。すごいな、と絶賛しながらも
なんなんだろう、この煮え切らない感じ。「刀之津診療所の怪」とか、
なんなんだよ……幻滅にもほどがあるよ。と嘆いてしまった。
「刀之津診療所の怪」は、なぜか一遍だけ、S&Mシリーズである。
萌絵が登場し、その場を掻っ攫う。面白いのだが、なんとこの話しの
トリックは説明されない。シリーズ読んでれば分かるでしょ、なオチ
である。わかんねーよ、と9.8割くらいの読者が思うことでしょう。
わたしもだ。不親切極まりない。そうして気づいたことだが、
この「刀之津診療所の怪」がこの本において異質に見える理由の一つが、
主人公の「色」である。「刀之津診療所の怪」はいわずもがな、萌絵色。
森さん本当に萌絵大好きだな……と思えるほど楽しそうに描く。
しかし、それ以外の小説においては、主人公にまったくといっていいほど
「色」がないのである。誰でも入れ替わり可能な無機質な「私」。
それはどこか『スカイ・クロラ』のコンセプトに沿っているような気も
するのだが、どこか個性を描くのを放棄しているようにも思う。
無機質な『スカイ・クロラ』は最高に好きだったが、萌絵以外の、
「キャラクタ」を頑張ってほしいような気分にもなる。
とりあえず、引退しないで下さい、と(笑)でもあと7巻でしたっけ?
最後まで楽しみにしています。この本は、シリーズ制覇後をお勧め。

★★☆☆☆*70

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2009年12月21日 (月)

「今はもうない」 森博嗣

今はもうない (講談社ノベルス) 今はもうない (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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ここにきて森さんである。去年と何ら変わらないのではないか、
という残念な気持ちになりつつ、さっぱり読了。面白かったけど、
シリーズを順に読んでいかないとちっとも面白くないだろう本。
というわけで、是非順番に読んでください。この本は8巻目です。

私はふと湖の方に、一人の女の影がある事に気づいた。
彼女は自分の名を西之園と名乗った。次第に天候が悪化し、
私は彼女をつれ先ほどまでいた滝本家の別荘へと戻ることにした。
それにしてもなんと美しい女性だろう。私は、西之園嬢にすっかり
夢中になってしまった。別荘にいた、滝本父子、それからモデルを
している神田嬢、役者をしている朝海美人姉妹、私の婚約者に
彼女を紹介し、その晩は西之園嬢もこの家に泊まることになった。
客間をあてがわれ、眠りに着いた西之園嬢だったが、
深夜すぎ、悲鳴を聞いたと私の元へやってきた。一つ上の階、3階に
ある娯楽室と映写室は鍵がかかったままであった。この二部屋は
内側からしか鍵がかけられないと言う。ドアを破壊し、
中に入ってみると、そこには変わり果てた朝海嬢たちの姿があった。

S&Mシリーズファンとしては、とても満足して読み終わった本だった。
語り手が、笹木という40代男性視点で動く、というちょっと工夫された
ものになっていたので、今までのマンネリを考えずに読めた。
なかなか一人称で書かない森さんだが、なるほどこの線でも
いけるのでは、と思ったりもした。けれどもこれに反比例して、
この笹木という視点が終始西之園嬢万歳!な視点で動くので、
マニア受け、というか森さんが自身が書きたかったのか?と、
疑念を持ってしまったりもして、純なミステリ好きにはお薦めできない
ものになっていた。そもそもこれまでの巻で、萌絵の性格や気性を
知っており、犀川以外の視点から見た萌絵の愛らしさ?を楽しみたい、
みたいな感情がないと、あまりぐっとこないのかもしれない。
なにせ、どんくさい男の視点があまりよろしくないからなんだけど。
今回のミステリもちょっとイマイチである。お決まりの密室殺人宣言で
ものがたりは進んでいくが、結局自殺でしたでまとまる。
どうしても解けなかったなぜ服装が入れ替わっているのか、という
トリックについても納得できるものではなく、自殺だと思わせたく
なかったから、と言いだすのである。ちょっと待ってくれ本末転倒……。
と、少し残念でもあった。もう少し灰汁なく書いたら楽しかったろうに、
森さんも萌絵で楽しみたかったんだな、と納得しまとめておく。
先に読んでしまった「数奇にして模型」の方が面白かったな。
心理的な、解説もあったし。さて、次は最終巻「有限と微小のパン」。
あの上下2段にして1000P覚悟の分厚さに頭が上がりません。
シリーズの全ては「有限と微小のパン」にある、と言わしめたこの本、
本当に楽しみ。年明けにさっそく読もうと思う。

★★★☆☆*87

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2009年11月 8日 (日)

「数奇にして模型」 森博嗣

数奇にして模型 (講談社ノベルス) 数奇にして模型 (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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約500ページ、しかも上下段の本を、うきうきしながら図書館で借り、
にやにやしながら読み進め、むふむふしながら読み終わる。
わたしはいつからそんな人間になったのだろう。いや、なれたのだろう。
その原因は間違いなく森博嗣その人である。感謝したい。

N大学に程近い、M大学工学部の一室で殺人事件が起きた。
その大学の生徒である女性が扼殺され、机に寝かされていたのである。
二箇所ある教室の扉は鍵が掛かっており、いわゆる密室であった。
翌朝、とある事情からプラモデルの同好会に参加することになった
萌絵は、M大学近くの公会堂を訪れていた。そこのフロア内で、
コスプレの衣装を着る約束になっている。嫌々着替えをし終えた頃、
館内が騒がしくなった。どうやらスタッフが準備を始めたのだが、
1つ鍵の開かない部屋があるらしい。管理室から鍵を借り開けてみると、
そこには二人の人間が倒れていた。一人はメンバーの男性・寺林、
もう一人は首から上のない女性死体だった。騒然となる室内。
気を失っていた寺林は病院に運び出されたが、大きな謎が残った。
この部屋もまた密室であった。おまけに鍵は寺林が持っていた。
そして寺林はM大学工学部の学生でもある――絡み合う二つの事件。
奇妙な密室の間に、果たして何があったのか……。

とても楽しかった。この本を読んで何だか犀川のイメージが変わった
気がする。何と言うか見た目的なイメージなんだけども。最初の頃は
堅苦しい白衣のイメージがあったけど、今はそうだな、その白衣の
下に着ている、シャツにジーパンをイメージできるようになった。
とてもいい傾向だと思う。これと言って何もないが、萌絵との関係も
かなり深まっている模様である。で、内容は、というと、今回も
例のあれは存在しているように思う。そう「誰でも殺せそう」である。
動機がないというのが森さんの欠点だとわたしは思っている。
しかし今回はとても動機について視点を置かれた内容だった。
とは言っても、なぜ殺したか、ではなく、なぜ首を切断したか、
の部分であるけどね。犀川がとても長い理屈を喋っている。重要である。
今回の巻は森さんが好きなプラモデル同好会が舞台となっているため、
フィギュアと模型の魅力について、熱く語られている。本当、熱い。
モデラーは、完成した品には興味がないというのが1点。
プラモデルはそれを作る過程が最大の魅力なのであって、
作品となったその品は、品物の残りかすのようなものなのだと。
極論である。しかし、マニアとしてそれを楽しむ人間の半数は、
きっとそんなことを考えているんじゃないかと納得できた。
そう言えば、うちの父もそうである……とか、ふと思い出したりして。
だから壊れたものを元に戻すとか、そう言った行動の、
あるいは殺すと言う行為よりも魅力的な、死体の模型の制作、
という理屈が、今回はふむふむなるほど、と読むことが出来た。
しかし、誰でも殺せそうなことには変わりはないのだけどね。だって、
殺すことは重要じゃない(!)発言が出てくるので、まぁ諦めましょう。
その上疑問を持ちながらも、納得したり、こじつけたりすることは
理解していない証拠であり、また複雑な意図や思考を通り一遍の
考え方(一人の人間が、とか)で処理しようとするのは間違ってる、
とか書かれていた。ははは、そこまで言われたら、何も言えない。
さすが森博嗣である。と、言うわけで、複雑なものを理解できない
わたしは、笑って次の巻を読もうと思う。いよいよ最終巻!
あの分厚さ、わくわくする!笑 そんなこと言えるような人間にして
くれた森さんに感謝。他のシリーズは挫折しそうだけど、気長にいこう。

★★★★☆*87

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2009年9月29日 (火)

「夏のレプリカ」 森博嗣

夏のレプリカ (講談社ノベルス) 夏のレプリカ (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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すごい……!けどれども、これを同時に読むことはたぶん至難の業。
主人公の萌絵でさえ、サジを投げているじゃないか。笑
もう少し謎の絡まり具合があると、よかったのかもしれないけど、
まぁそもそも別の事件だからね、仕方がないのだ、と割り切るべきか。

杜萌は久しぶりの帰省に疲れていた。何せ海外からの帰国である。
それに帰ってくるのも二年ぶりとあって、様々な事考えすぎていた。
街の外れの、外れ、この先には簑沢家しかない森の中、杜萌はひたすら
過ぎ去ってゆくタクシーからの景色を追っている。ようやく着いた
実家には明かりが灯っていなかった。こんな時間に外出でもしたのだろうか?
不安になりながらインターフォンを押すと、家政婦の佐伯が出て、
中に入れてくれた。佐伯は帰り、二階にいるはずの兄に声をかけようかと
思ったが、夜遅いので止めた。そして次の日、目が覚めてみると、
家の中には誘拐犯がいた。杜萌は人質となり、また他の家族も、
別の別荘で人質になっていることを知る。身代金は払われるというのだが……。

毎度ながらネタバレ、注意。森さん、何度も言うけれど、最大の欠点は
「どうして殺すのか分からない」だ。そう動機、皆無。この本もまた、
その点でちょっと残念な感じだった。この本の犯人はなぜ人を殺したのか、
という部分にあたって、「昔の女」なのよ、みたいなことを言っているが、
それ以前に、お兄様だの、犬、だの、いろいろ「死」についての話が
出てきているのに、「え、突然どうしたんですか?!」って感じである。
動機が推測できない上に、いやいや、別にそこで殺さなくても、って感じなのだ。
うーん…動機に頷けないってちょっと寂しいんだよな、ミステリーって。
例えばありきたりであっても筋が通ってると安心するものでね、
というのは私だけだろうか。唯一つ、この本が人気な理由は、
萌絵の心理描写であろう。推理とはまったく関係のない部分で、
友人の、歪んでしまった心を見つけてしまう、萌絵の鋭さと後悔。
それがとても上手く描かれている。今までにない「推理」と言っても
過言ではないだろう。でもね、まぁ、事件が微妙なので、そこがよくても、
私はあまりぐっとこなかったんだけどもね。それとそう、この本の
ビックリは、前巻「幻惑の死と使途」と繋がってることで。
しかも繋がりようは尋常ではなく、本当は交互に読むべきなのだと。
かなり疲れると思うけど、読んでみたら何かまた違うのかもしれんな、とか。
でも今のとこまだ読む気はありません。そのうち、読みます。

★★★★☆*86

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2009年9月 5日 (土)

「幻惑の死と使途」 森博嗣

幻惑の死と使途 (講談社ノベルス) 幻惑の死と使途 (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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森さん、どんどん面白い。この本もなかなか面白かった。
そう言えば、この本は密室じゃなかったね、とか思ったりして。
こういう不思議系のほうがいけるんじゃないかと思うんだけど。
あぁ次の巻も気になる。最終巻の分厚さも。笑

「諸君が、1度でも私の名を叫べば、どんな密室からも抜け出してみせよう」
天才奇術師・有里匠幻は言う。野外ステージで行われた、
大掛かりな脱出イベントには、たくさんの観客が詰め掛けていた。
萌絵と犀川は、他の院生と共にそのイベントを観にやってきていた。
有里匠幻は、ぐるぐるに縛られた挙句、頑丈に鍵のついた箱に入り、
箱ごと池に沈められてしまう。その中から奇跡の脱出を行う、
という寸法だった。みな固唾を呑んで見守っている。
箱が池から引き揚げられ、白い煙幕が会場に満ちた。
そこには有里匠幻の姿があった。歓声を上げる観客だったが、
その声はすぐに悲鳴に変わった。箱から脱出した有里匠幻は、
何者かにナイフを刺され、殺されていたのである。

今回は動機が素晴らしい。今まで読んできた森さんの中では、
一番動機が素晴らしいだろう。何たって、いつも「誰も殺さなそう」
な人物関係が多いが、この話は、誰がどう読んでも納得の動機だ。
そして意外性もある。願わくば、最初の方に、
「有里匠幻と背格好が似ている」と表記があると大変いい感じだけど。
それに、メイクは霊柩車で落としたのだろうか?とか、
様々な細かい疑問があるが、解決策は色々あるんだろう。
それにしてもよかったと思う。本物の有里匠幻の苦悩は
あまり描かれていないが、犀川が「有里匠幻!」と叫んだシーンに、
この物語の全てが詰まっているだろう。
話の中では、ついに萌絵のファンクラブまで出来ており、
警察の情報が筒抜け状態になった。いちいち了承を得るシーンを
書くのが面倒くさくなったんだろうか?とも思いつつ。
犀川と萌絵の仲についても、進展していないようで、進展しているようだ。
この本の章は、奇数の章しかないんだけど、偶数の章は、
次の巻、「夏のレプリカ」にあるらしい。楽しみだな、
どんな繋がり方をするもんかと。きっとあの友だちが出てくるんだろう。

★★★★☆*87

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2009年8月10日 (月)

「封印再度」 森博嗣

封印再度 (講談社ノベルス) 封印再度 (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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うわーこれ一番良かった。SMシリーズで。世間ではどうやら
『笑わない数学者』が一番ミステリィ最高峰とされているようですが、
私はこの本が一番好きだな。面白かったし。トリックも、
微妙に非現実的でありながら、もしかしたらありえそうっていうのがさ。

岐阜県恵那市の旧家、香山家には代々伝わる家宝があった。
鍵の掛かった箱「無我の厘」と、その鍵の入った「天地の瓢」である。
「天地の瓢」は口のすぼんだ壷のような形をしているため、
その半径よりも大きい鍵は取り出すことが出来ない。何十年も
昔から伝わるそれらの家宝には、さらに家主が奇妙な死を遂げる、
という言い伝えがあった。何せ密室なのである。
そこに目を輝かせた萌絵は、自らその謎を解明すべく資料を集め始めた。
いくら調べても分からない難解な謎……。
そんなとき、香山家では事件が起こった。
何と現在の家主が蔵の中で殺されていたのである。

この本はとても面白い。ある一つを除いては。
そう、いつものあれです。「誰でも殺せそう」です。
動機がね、イマイチ決定打にならないという、森さんの欠点。
そのため、この本の犯人については特に興味が湧かない。
そして、凶器隠匿ってどうなのよ、って感じだけど。
と、文句はこれまでにし、良い点を。この本は今までの本の中で、
一番犀川と萌絵が人間らしいのである。もちろん死体を見て
嬉々としてしゃべる登場人物は変わらないけれども、
犀川と萌絵の仲が発展する重要な巻である。
今まで教授と生徒?いや…、博士とお嬢様? 何だかよくわらない
関係で、お互いに身の置き場に困っていた2人が、
なんと婚姻届を書いてしまうのだから。一人でむふむふしてしまった。
何となく諏訪野の電話で嘘っぽいって思ったのだけど、
へぇ、犀川も人間なんだーと確認できるとてもいい話だ。
あと、トリックもね、とても好きな感じだった。
「ない」けど、実は「ある」って、そういうとこがね。
願わくば、もう少し金属のこととか詳しく書いてほしかったんだけどな、
融解度数が何度で、とかさ。あの空気圧を細かく計算するみたいに。
それに蔵とか古い建物とか、とても雰囲気が出ていていい。
まぁ森さんは洋館とかのが好きなんだろうな、と思いつつ。
次も読みたくなっちゃった、と借りようとしたら、
図書館に次の巻がない……ないってどうゆうこと……寄贈でもするか。

★★★★☆*90

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2009年8月 1日 (土)

「Φは壊れたね」 森博嗣

Φは壊れたね (講談社ノベルス) Φは壊れたね (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
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密室トリックももはや底を尽きたか? な空気が漂う森さんでした。
あんなに読んでいた森さんも、気がつけば久しぶり、の領域。
楽しかった。会話は昔の作品より格段に面白いんですけどね。
あと、シリーズ的にも、保呂草シリーズより面白いです。

山吹はマンションの管理錠を使い、一つ上の階・601の部屋を開けた。
本当はそうしてよかったのかは分からなかったが、
601の住人に会いに来た2人の女子学生が困っていたので、
開けてやったのだった。しかしそれは悲劇を呼ぶことになった。
中では美術科専攻の町田という男子学生が、宙吊り状態で死亡していた。
両手はYの字状に挙げられ、胸にはナイフが刺さっていたため、
他殺であることは明らかであった。その上、部屋の中は、
美術的な装飾が施されており、とても異様な光景である。
そして何より、その部屋は密室なのだ。果たして犯人は誰なのか……。

そう言えばビール券をくれた探偵の意味がよく分からなかったけど。笑
全体的に、登場人物の会話が面白い。むしろそのために読んでいる、
といっても過言ではないくらいだ。キャラクターも立って来ていて、
ちょい役で出てくる人物も、なかなか存在感があっていい。(萌絵とか)
しかし、ミステリィは、というと、ネタ切れですか?と。
ですよねーそうですよねぇ、もう密室は辛いですよ、って感じである。
森さん=密室ということで、色々読んできたけど、この結末は、
かなり許せない内容だ。実は全員グルでしたラスト。
ちょっと待ってくれ、それじゃ密室も何もないじゃないか、である。
それに、山吹がたまたま501にいたからいいが、
外出していて管理錠で開けられなかったらどうするつもりだったのか?
合鍵を持っているからって、それで開けてしまったら元も子もない。
その上、死んでいない宙吊りの町田はどうなるのか?
この話は、全ての成り行きが、全て上手くいった場合に出来上がる、
大変危険なものになっており、そんなもので密室なんてあまりに
無謀すぎるだろう、というのが感想だった。それと、『Φは壊れたね』
の意味するところも、とてももったいない。なんかありそうなのに、
具体的に意味するものは何もなかった、と言う感じだ。
まぁ、芸術は、爆発だ、ってとこなんでしょうか。
そこんとこ押し出したら、もっと面白かったかも、とか思ったり。
しかし、森さん読みやすいんで、すらすら読んでしまった。
読んでいない本が減っていくのが寂しいとすら思うね。

★★★☆☆*83

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