2009年1月26日 (月)

「あなたの呼吸が止まるまで」 島本理生

あなたの呼吸が止まるまで あなたの呼吸が止まるまで

著者:島本 理生
販売元:新潮社
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微妙。もう少しよく構想を練ってから書いて下さいと言う感じでした。
島本さん、好きですよ。だから何かだか良く練らずに、
書きたいこと書いたでしょ?と分かってしまい残念。
そもそも、主人公の考え方は12歳には到底考えられない。

私には母がいない。収入の少ない舞踏家として生きる父を見捨て、
この家を出て行ったのだ。だけど最近になって、
母は父との生活ではなく、私という存在が邪魔だったのだろうと、
そう思うようになった。増えた一人の時間は、
私を急速に成長させる。大人になっていく私の孤独と、
だけど伸びきらない子どもの部分が、私の心をぐちゃぐちゃにして、
早く大人になれと攻め立てる。それを一番理解してくれたのは、
きっと佐倉さんだった。だけど、佐倉さんは私に恐ろしいことをした。
その恐怖と憎悪を胸に、大人になった「私」が復讐することを誓う。

結局何が言いたいのだろうか。と読後悩んだ本でした。
全編「ですます調」12歳なのに。過去回想なのかと思えば、
そうではなく、ただ「ですます調」。利点が分からない。
話の中に、さも重要そうに「舞踏家」が出てくるが、
ラストの主人公の決意とは、さっぱり噛み合っていない。
おまけに主人公が12歳と言う設定なのに、全く子どもっぽくなく、
「大人びた子ども」を書きたかったみたいだけど、
「大人びた子ども」は大人びていても所詮子どもなので、
幼い部分が必ずどこかにある。それが書かれていない。
もしや子どもの感情が書けないから、「大人びた子ども」に
したんだろうか、と残念にも思いつつ。
大人が読んで共感する小説の中の「子ども」と、
子どもが読んで共感する小説の中の「子ども」は若干違うんですよね。
ほら、児童書が普通の本と別になってるように。
作者が「子ども」を書いたつもりでも、作者は大人だから、
細心の注意を払わないと必ずどこかで「大人」の割り切った感情が出る。
それを子どもが読むと、「そんな風には考えない」と違和感が出るのだ。
ハイライトになっている性の話も、復讐しようと主人公が決めた所で、
何だか不の連鎖が続くように感じ、いい終わりではない気がする。
終始、微妙。私は好きではありません。

★★☆☆☆*50

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2008年10月29日 (水)

「クローバー」 島本理生

クローバー クローバー

著者:島本 理生
販売元:角川書店
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久しぶりに島本さんを読みました。好きなんですけど、
でもなんだかなぁ、と思うのは何故だろう。
そうそう、それと西さんと被るんですよねイメージが。
西さんは関西弁でもう少し軽快ですが、なぜかしらね。

「クローバー」
僕は双子の姉・華子と一緒に暮らしている。
僕にそっくりな、その平凡で花のない容姿を、
少しでも綺麗に見せようと、華子は恐ろしいほどの力の入れている。
その努力のせいか、華子には常に彼氏がおり、
けれどすぐに別れてしまうことを繰り返していた。
そんな時、華子の様子が可笑しくなった。今までとは明らかに違う。
「一目惚れした」という彼女は、奥村と言う格好のいい男に
惚れ込んでいたのだった。結婚を前提に、という華子だったが、
僕にはどうしても2人が似合っているようには見えなかった。

連続短編集です。長編だと思ってちょっと期待していたのですが、
と横山さんの時も言ってましたが、最近個人的に長編ブームです。
だから森さんばかり読みたくなるのか?わかりませんが。
で、この本は、と言うと、ちょっと島本さんらしからぬ感じが
しました。島本さんの以前読んだ短編集「大きな熊~」など
からも、ダークな部分が見え隠れる物語多いイメージがあったのですが、
今回は、そうでもなく、わざと打ち消すように軽やかに書かれています。
一番最初に、この「クローバー」という話が来ていますが、
出来るなら中盤に入れて欲しかったような気もする。
クローバーって3枚だとどうでもいいのに、4枚になると
何であんなに持て囃されるんでしょうね、とか、普段深く考え
ないけれど、言われてみたら「そうそう」というのが
掛け合いに出されていて、とても上手いと思った。
その後の短編も、熊野さんや、雪村さんなど、一風変わった
登場人物と、僕と華子が馴染んでゆく様子が書かれている。
けれど、これは何だか普通かもしれない。だから、
何でもない話を書いた後に、「クローバー」がきたらよかったのにな、
とちょっと残念に思ったのでした。それと、以前から言っていますが、
島本さんは会話文が苦手なようで、いや絶対それ会話で話さないよね、
と言う文と、いや会話にするんだったら、もっと砕けた言葉でしょう、
と言う文が多々見受けられ、少し読みづらかったりする。
「大きな熊~」の方が好きだったなぁ、と言うことで。

★★★☆☆*84

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2008年3月 7日 (金)

「ナラタージュ」 島本理生

ナラタージュ ナラタージュ

著者:島本 理生
販売元:角川書店
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読み終わって、読んでよかったと思った本でした。
もう少しコンパクトに出来たんじゃなかろうか…と思わなくもないですが。
ところで、とってもメガヒットした割には、
そこまで心が揺さぶられなかったのは何故だろう。会話のせいかな。

卒業式の日、去り際に先生は私にキスをした。
二人は決して恋人ではなかったのに、
キスをしてしまった事によって、私たちはこの思いに気づいてしまった。
だれど私は卒業し、その感触を残したまま一年が経った。
忘れてゆくだろうと思っていた思いは、日に日に大きくなり、
私を苦しめる。そんな時、先生は私に電話をかけてきた。
恋人でもなく、友だちでもない、また生徒と先生として、
振り出しに戻った二人は、一年前の自分たちを思い出しながら、
そして、一年大人になった本当の恋に落ちる。

さっきも書いたけど、読んでよかった本だった。
それはとても個人的な理由だと思うけど、「先生」が、
私が以前好きだった人にとても雰囲気が似ていたからだ。
おまけに既婚者…完璧なヒットに、私は食い入るように読むことができた。
恋愛小説で、こんなに正面から読めたのは久しぶりである。
で、まぁ、それはそれで、これはこれ、という感じだったのだが、
気になる点がいくつかあって、素直にお薦めはしがたい感じがした。
一つ目は、会話が棒読みである。棒読みは言い過ぎかもしれないが、
いや、これ絶対実際の会話で話す言い回しではない、とはっきり言える。
それとこれ絶対話題にならないと思う、というようなクサイ会話が、
平気でペラペラと話されるところが、ちょっともったいない気がした。
もう一つは、一人称が「私」でありながら、心理描写が少ないので、
読者置いてきぼり感が漂っている。
私と先生と、小野君の恋模様を、ただ傍観している、という雰囲気だ。
少なくても感情移入し、泣く、ということはない。
最後の柚子が死んでしまうシーンも、手紙が出てきているのに、
ちっとも悲しくならないのは、主人公の心理に同調できないからだろう。
ラストについて、結構残酷な終わり方をしますが、
これについては、私はなかなか好きでした。壊滅的な終わり方、
といえば綿矢りさの「夢を与える」(そう言えば最近新刊出ませんね)
なんかがありますが、それよりは、より含みがあるというか、
納得のゆくラストだったように思える。もしも、数年たった今、
島本さんがこの小説を改稿し、一から書き直してくれるなら、
きっと私にとってとても好きな仕上がりになると思う。
けれど、この文は、初々しかったあの頃でしかかけないわけで、
その発展途上具合をまた評価すべきなんだろうか、と思えてくる。

★★★☆☆*85

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2008年2月22日 (金)

「シルエット」 島本理生

シルエット シルエット

著者:島本 理生
販売元:講談社
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デビュー作読んでみました。十七歳?のとき書かれたのでしょうか。
まぁ何歳であっても、十代でこれだけの物語が書けた、
というのはやはり才能のような気がします。乙一さんのときにも、
それをビンビン感じましたけど、今回もまたそう思いました。

「シルエット」
わたしは雨が降り続く中にいた事があった。
それは勿論、実際の雨ではなく、雨が降るような感情の中から、
ちっとも抜け出せぬような、どんよりとした様子だ。
原因はきっと冠くんのことにあった。
付き合って半年以上も経つというのに、冠くんは、
わたしに触れようとしなかった。キスはもちろん、手を繋ぐ事さえも。
そんな彼の行動は、わたしの心を傷つけ、そして別れの日を生む事になった。
そして、その後の私には、雨のような毎日がやってきたのである。

この本は、群像新人賞だが、まさに群像らしいなという話だった。
人々のありふれた事柄を、いかに素敵に描くか。
そう言うと語弊がありそうな気もするが、
ぐるぐる、しとしと、と悩む少女の姿が上手く描けていたように思う。
特に驚愕だったのは、これを書いた時まだ十代だったと思われるのに、
どうにも艶のある文があることだった。
果たして島本さんは高校生の時から、そんな体験をしていたのだろうか?
とお節介ながら、そんな心配をしてみたりした。
今の子たちなら、そんなに珍しい事ではないのだろうか?
私は女子高だったので、よく分からないんですが。笑
一つ残念だったのは、ラストが煮え切らない部分でしょうか。
まぁ確かに、主人公は冠くんに惹かれてるところがあるから、
例えせっちゃんと別れるという話とは別に、
心のどこかで、足を引き止められているような気分になるに違いない。
それは雨の期間が長ければ長いだけ強く思うだろうし、
けれどそれと同時に雨を思い出すのではないかと思う。
そんな描写が後半にかけて欠けていたから、
せっかく前半で作り出した「雨」の雰囲気を無駄にしているようで、
もったいない気がしたのだった。
次は「ナラタージュ」あたりでも、読んでみようかと。

★★★☆☆*83

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2008年2月19日 (火)

「大きな熊が来る前に、おやすみ。」 島本理生

大きな熊が来る前に、おやすみ。 大きな熊が来る前に、おやすみ。

著者:島本 理生
販売元:新潮社
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久しぶりにハッピーエンドの恋愛小説で心が和んだ気がした。
ちなみに私は、実は昔ハッピーエンドの恋愛小説が好きだった。
まだ漫画をたくさん読んでいた頃、「ふしぎ遊戯」や「悪魔で候」
など、茨を駆け抜けた恋が、好きだった。だけど、今はね。笑

「猫と君のとなり」
「僕、ずっと志麻先輩のことが好きだったんです」
そう荻原君が言ったのは、飲み会が終わり家に帰ってきた時だった。
中学生の時の部活の顧問が亡くなったので、
参加した葬儀に荻原君はいて、酔いつぶれた彼を、
一番家の近い私のうちで介抱してあげていたのだ。
別にやましいことは何もない。……はずだったのに、
彼の一言で私は酷く悩むことになった。獣医を目指している
と言う彼を見ながら、彼ならば大丈夫だろうか、と思った。
猫をなでる彼を見るたびに、ふと暴力を振るわれた記憶が蘇る。

私がこの話を好きになれる理由として、
物語の根底に、とてもどす黒いものが沈んでいるからだ。
そして同じ過ちをもう一度繰り返し「今度こそ大丈夫かもしれない」
という淡い希望を持つところが、好きだ。
人間、ポジティブじゃないといけない。
と私が言うと嫌味にしか聞こえないかもしれないが、
とにかく気持ちを切り替えることが大切で、
けれどそれはそんなに簡単なことじゃない。
だから、妊娠してしまった子供だったり、猫だったり、
を媒介にして、「~だから」と条件をつけるひ弱さが、
とても上手に描かれていると思う。
それと、主人公の女性が、とてもモテないところがいい。
だたそれだけではなくて、キラキラと輝いているものや、
キラキラと輝いている男の子が、眩しすぎて、
自分にはちょっと……と逃げ腰なところが。
でも、その「面食い」的な感情は捨てられずにいるところも。
物語は「作り物」だから、最後はハッピーエンドに限る、
と思っていた頃の感情が、とても自然に思い出せた気がした。
しかし、けれど「作り物」と分かるリアリティの薄さ、
がちょっと残念ですけど。最近の若い人の本はみんなそうだと思う。
感情だけ描いても、もしもその本が百年後の読まれたとしたら、
きっと読者はついていけないと思うから。
さて、私も若者の本でも読みますかね。
意図的に避けてるふしがあるんで。笑

★★★★☆*86

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