2008年10月20日 (月)

「約束」 石田衣良

約束 (角川文庫 い 60-1) 約束 (角川文庫 い 60-1)

著者:石田 衣良
販売元:角川書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する


問題なのは、石田さんを許せるかどうか。許せる、と言うのも変な
話で、どちらかと言えば許容できるか、と言う辺り。要するに好み。
この安易過ぎる何とも言えない薄めの設定の中に、
どのような思いを馳せるかが、最大のポイントである。

「約束」
カンタにとってヨウジはヒーローだった。
何も取り得のないカンタにとって、勉強で、スポーツで、
ヨウジが活躍する姿は一段と輝いて見えて、
自分が幼馴染であることを誇りに思うほどだった。
しかし、事件は突然起きた。下校中の二人の前に、
気の狂った不審者が現れ、襲い掛かってきたのだ。
驚き、立ちすくむ二人だったが、次の瞬間、
ヨウジはカンタを突き飛ばし、自分の身代わりになった。
死んでしまったヨウジ。カンタはショックを受け自分を責め続けるが……。

ここに書かれている話は、とてもいい話である。
私がこのように批判してはならないほどの、とてもいい話である。
最後の話なんかは、とてもぐっと来て泣きそうだった。
だから、何だかとても残念なのである。そういう思いを、
大切に思っているという共感が嬉しいのに、とてももったいなく思う。
私がどうしても好きになれない理由として、話を作るという
スタンスでの意識が微妙に石田さんと違うからではないか、と思った。
それは「ぼくとひかりと園庭で」のときも思ったのだが、
石田さんはその大切な感情を、「簡単に」伝えようとするのである。
簡単な設定で、簡単に伝えることにより、
読者にも簡単に分かってもらおう。そんな風に私は感じる。
けれども、それって何だか違うのではないかと、私は思うのだ。
大切なことは、「簡単に」するのではなく、「分かりやすく」
する必要があると思う。間違っても「簡単=分かりやすい」ではない。
だって「友達が死にました。悲しいです、でも頑張ります」
って言う簡単よりも、「友達とはこんなに仲がよかったんです。
でも死んでしまい、悲しいです。あなたも仲のいい友人を亡くしたら、
こんな気持ちになるかもしれませんよ」という分かりやすさと、
気持ちの浸透が重要なのではないか、と私は思うからだ。
この薄い設定だと、そこのところがあまりに省略されているようで、
「あとは自分で考えてくださいって事かしら」とちょっと残念である。
あんまり突き放しすぎると、折角いいことを書いているのに、
気づいてくれない読者も現れるのではないかと思う。
まぁこの本は逆にストレート過ぎる、という感じも受けなくもない
のだけれど。うーん、石田さん嫌いじゃないんですけど、
最近そんなことを考え始めたら、そればかり気になっちゃってダメです。
それと久しぶりに読んで思ったのですが、石田さんの文章は、
形容詞と比喩が多いですね。今まで気づかなかったのですが。

★★★☆☆*80

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年1月15日 (火)

「ぼくとひかりと園庭で」 石田衣良

ぼくとひかりと園庭で ぼくとひかりと園庭で

著者:石田 衣良
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する


石田さん、子供の時に本を読んでいなかったのだろうか…
と本気で心配してしまう本でした。うん、なんかもう、
ぜんぜん児童向けな文章じゃないし、物語怖いし、で。
きっと石田さんは子供の時の感情を忘れてしまったんだろうなぁと。

幼稚園児のあさひとみずきは、転入生のひかりに一目惚れした。
仲良く三人で遊ぶようになった頃、お泊り保育の日になる。
夜中トイレに目覚めてしまったひかりは、あさひを起こし、
一緒についてきてもらうことにした。その帰り道、
目映く光った園庭に吸い寄せられるように、二人は足を運んでゆく。
そこにいた花の精霊と話しているうち、いつの間にか二人は高校生になり、
そしてみずきが将来凶悪犯になる、という事実を知る。

なんじゃこりゃ、な本でした。
ちなみに、私が幼稚園の時に一番感銘を受けたのは、王道ながら
「人魚姫」でした。確か本によって「人魚姫」には二通りのラストがあり、
一つは人間になり王子様とハッピーエンドに、
もう一つは海に沈んで泡になる、という話でした。
私の持っていた本は後者の、沈んで泡になってしまう方です。
他に読んできた童話の中で、こうして主人公が、はっきり
「死」を迎えるものがなかったので、子供ながらに衝撃を受けました。
「人魚姫はなんと健気なのか!自分を差し引いて王子様を助けるなんて!」
と、当時からクールガール(捻くれたの間違い)だった私は思ったのでした。
さてさて、話は脱線しましたが、人魚姫は子供ではありませんでした。
子供が感銘、感動を受けるにおいて、何も主人公が子供である必要は
まったくないのです。他の「かぐや姫」や「鶴の恩返し」「竹取物語」、
など、どれも大人の女性が主人公ではありませんか。
人間の優しい心や、抗えない運命、などを柔らかく書いてあればいいのです。
もしも子供を主人公にしたら「赤ずきん」や「赤い靴の少女」、
「マッチ売りの少女」など、その少女の年代の子供が理解出来る言葉、
行動、描写、をするという縛りが生まれます。
主人公に感情移入し易くするためです。で、遠巻きになりましたが、
この本はまったくもってそれが考えられていない本でした。
しかも主人公とあかりはいきなり「高校生に成長しました」となっており、
いやいや、幼稚園生で自分が高校生になる姿なんか想像出来ませんよ、
とまずツッコミたくなります。その後「みずきが将来殺人鬼になりますから、
それを頑張って阻止してください」となって、おいおい、って感じです。
うん、言いたいことはわかりますよ、将来三角関係になって、
仲間割れになるかもしれないんでしょう?そうしたら、
幼稚園生にも分かるように、同じ年代で物語を作ったらどうでしょうか、
と提案したいところです。たとえそれが殺人ではなくても、
二人のうちどちらかを選ばなくてはいけない、という大変な気持ちは、
少なくても子供に伝わると思いますしね。
石田さん好きな方は、幻滅すると思うので、読まない方が…
基本的に性質が向いてないんだと思います。石田さん精神的に大人、
な感じがしますからね。児童書は伊藤さんに任せましょう。笑
私は伊藤さんの児童書は大好きなので。

★☆☆☆☆*-

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月13日 (日)

「娼年」 石田衣良

娼年 (集英社文庫) 娼年 (集英社文庫)

著者:石田 衣良
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


実はちょっと馬鹿にした気持ちもあったのですが(すみません)
予想を上回る良さでした。石田さん、見直した。
でも、まぁ七割がたセックス描写なので、苦手な方は
ご注意願いたい感じで。意外や意外、いけるかもしれませんけど。

とりわけ趣味もなく、女も好きではない、退屈な男と評されるぼくは、
ある日、御堂静香にボーイズクラブの店員として雇われる事になった。
御堂に電話で予約を入れた女性と待ち合わせをし、
デートをしたり、セックスをしたりすると、一時間一万円になる。
最初は馬鹿にした気持ちだったが、複数の女性と関係を持つうち、
ぼくは人間の「愛」や「性欲」について目覚めてゆく。

石田さん、凄い!というのも、全体の七割近くをセックスに当てているのに、
物語がまったくいやらしくないからである。むしろ心地いいくらいだ。
これは物語を書く時、主人公の男に石田さんが必要以上に感情移入を
しないよう、細心の注意をはらって書かれているからだろう。
それと、極力「いやらしい」とされる擬音や声、などを排除している。
エロスの要素は捨て、人間がなぜ性欲や欲望を持っているのかというような、
「人間の不思議」といった疑問に正面から向き合っているから、
女性でも楽しめるような本になっているのだ。
ところで、確かにセックスと言うだけで、世間の人間は卑猥だと言ったり、
そんな業界に手を染めるのは、おかしな人間がやるものだ、という
負のレッテルが貼られているため、みなこそこそとしなくてはいけない。
その矛盾に疑問を持ち、足を踏み込んでゆくのが、「ぼく」である。
物語自体は単純である。ただ「ぼくが欲望に目覚める」と言えばいい。
でもその中で起きる複雑な心理変化が、他の男性作家では描けないような、
第三者的な立場で描かれているから、読後に清々しい気分になった。
一つ文句を付けると、主人公は二十歳だけれども、
こんなに人格が整った男はいるのだろうか…というところ。
ちょっとハードボイルドすぎる気もしなくもない。
もう一つは美点を挙げると、私もボーイズクラブに電話をしたくなった。笑
というところでしょうか。なかなか面白かったです。
突き詰めると、恋愛ではないので、私は好きだったのかもしれませんが。

★★★★☆*87

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月 9日 (木)

「うつくしい子ども」 石田衣良

うつくしい子ども うつくしい子ども

著者:石田 衣良
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する


これってSFって言うのか?
近未来的都市開発の成れの果てを訴えよう!な石田さん。
いじめがホットな現在、真剣に読んだら読後の気分が物凄く悪かった。
うーん、日本の行く末を予感させる?
私的には雰囲気は好きな感じでしたけど、後味は決して良くはない方だと思う。

ニキビが酷くじゃがいものような顔をした僕、通称ジャガ。
そんな僕の兄弟は母親に似てモデルをするくらい美人・美形だった。
都市開発が進み機械的なうつくしい街の中に住むうつくしい子供たち、
ある日小学生の女の子が絞殺され遺棄される陰湿な事件が発生した。
事件を起こした犯人は僕の弟、その後に僕に待っていたのは過酷な嫌がらせだった。
ガチガチに固められた教育制度に縛られた子供たちは、
勉強や受験のストレスをも僕に向け発散する。あまりに残酷で悲惨だった。
それでも世の中はうつくしい子供を求め続けるのだろうか、と言う話。

SFって感じはあまりしないけど、実際にはまだ存在しない近未来。
全て均一に区画された土地に住み、子供には必要以上な強固な教育。
もしかしてこのまま30年くらい経ったらこんな街できるかも、
とリアルに考えられてしまうのが少し怖かった。
統一され機械じみた環境から生まれるのは、うつくしく、狂った子供たち。
人に洗脳された人間が人を洗脳し、人を殺す。
狂った精神は奇天烈な思想を呼び、人々を蝕んでいるが人はそれに気づかず、
また自らが知らずのうちに発している危険信号さえも気づけない。
何て恐ろしい光景だろうと思うと同時に、来るべき未来のようでもあると感じた。
今回は石田さんには珍しく2面書き。
当事者である子供たちと、それを報道する新聞記者との境界線、
それを埋める少年の心を捨て切れていない記者・山崎の関係が面白い。
日々報道される出来事に疑問を抱き、曖昧な理由で自分を納得させる。
しかし澄んだ子供の心に触れ、強い意志を感じた時、
機械的に決められた見識で行う報道よりも、やはり温かみのある人間を選んでしまう。
そんな所が良心的で、ある意味この話の中で一番人間味のある態度かな、と思う。
ラスト・・・狂った街の狂った犯人の狂った最後。
ここまで話が無機質で冷たく進むと、異様な展開も驚かない、それもまた怖い。
普通なら「おいおい、そんな最後ってあり?」な感じだけど、今回は納得。
ちょっと考えさせられる話、直木賞「4TEEN」より私は好きです。

★★★☆☆*88

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月 2日 (月)

「4TEEN」 石田衣良

4TEEN 4TEEN

著者:石田 衣良
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


随分前だけど、もしかしたら初石田さんの本だったような気がする。
読み返しましたが、やっぱり昔から石田さんは長編のような短編だったのか・・・
と納得した。文章の構成とかは「池袋~」より好きかも。
取りあえず直木賞受賞作。

早老症の病気と戦うナオトを含む、まぶ達4人組の話。
中身が短編集のように細切れになっているので、
説明しようにもしにくいのですが・・・・。
中学生4人の青春と言うか日常から繰り出すちょっとした冒険が。
一番いいのはやはり「びっくりプレゼント」かな。
早老症の悪化で倒れたナオトに3人がびっくりなプレゼントをする話。
悪知恵の働くジュンを初め、ノリの良いダイとテツローが
ナオトを思いやっている気持ちがとても素直に表れています。
ナオトの病気について調べた3人が驚愕した事実、寿命が30代である事。
そんな病にかかりながらも明るく過ごすナオトに心を動かされる。
友達だから気を使いすぎるとギクシャクしてしまうから、
口にはせずに皆心の中で思い合っている、その姿がとても素敵でした。
中学生の設定ながら、なかなか楽しませてくれますが・・・
まぁ小説だからと言ってしまえば、それもそうなのですが、
結構非現実的、な感じがします。
ルミナの太り方とか、ユズルのイカレ具合も。
あと、病気のおじいさんのところも、4人で騒ぐあまり、
おじいさんについての話にならず、4人が主体になってしまったのが残念です。
4人で騒ぐ姿は青春って感じでいいんですけどね、
その説明をするあまり、他の事が希薄だった気がしました。

分類で言うなら、宮部さんの「夢にも思わない」「今夜は眠れない」系です。
事件物ではありませんが、雰囲気がとても。
ということは、これが好きな方は上記2冊もお薦めです。

*80

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2006年8月25日 (金)

「池袋ウエストゲートパーク」 石田衣良

池袋ウエストゲートパーク 池袋ウエストゲートパーク

著者:石田 衣良
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する


石田さんだ~と気軽に読み始めた本。
なかなか好きだけど、石田さんの本自体が実は若干苦手。
うーん理由は・・・途中で飽きる。(はっきり言い過ぎ
でもこの年齢でよくこんなに若い文章書けるわぁ、と関心はするけどね。
この本は短編だから好き、って言うのも結構あるのかも知れない。

そして実は・・・ドラマを見たことがない。苦笑

言わずと知れているかもしれないけど・・・ストーリーから。
池袋の果物屋の実家で働く誠が、池袋西口公園付近
(ウエストゲートパーク)で起きる事件に首を突っ込み解決する話。
結構短編系・主人公の軽快な話口調で進んで読みやすい。
1巻のこの本は誠がどうやって池袋の不良達と付き合っているかの話題。
ドラマでも登場するキャラクターが多数出てくるが、
ドラマはもっと後の話なので、結構裏付け的ストーリー要素。
そうそう、そして石田さんは人物の外装説明がとっても上手い人なので、
最初のほうに出てきた人でも、ちゃんと思い出せる解説つき。
今回の一番の目玉はやっぱり最後の内戦の話。
「Gボーイズ VS Rエンジェルス」の緊迫感がとっても見もの。
もちろん組織的にストーリーが組み立ってるから、前から読むべきですが。
誠の池袋を守る真の目的が正しい方向に定まる?って言うか、
仲良くやっていた池袋を取り戻して平和にしたい・・・
と言う気持ちが全面に出てきていて言い感じ。
一番よかったのは、お兄ちゃんが暴行された薫のところかなぁ。
特徴的な言葉ではないけど、「手術が終わるまでいてくれるならいい」
と取材を受ける彼女になんだか関心した。
どちらかと言えば、石田さんに感心したって言うのかな。
フェアじゃない感じで普通の環境ではこんな事は起きないだろうけど、
ウエストゲートパークではこれが普通(?)なんだ、
みないなものをちょっと暗に感じた気がしました。
いや、それ以前に不良の環境設定はばっちりなんですけど。笑
そんな感じです。軽い感じで楽しめる。
一気に読もうかな~と思ってたんだけど、無理だった。
もう7巻(?)も出てるのかぁと思うと伸びかけた手が引っ込みそうです。
ドラマをDVDででも見たら変わるかなぁ。考えておきます。

*88

| | コメント (4) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

***このブログのあれこれ | *ライブ(セットリスト一覧) | *映画・DVD (85) | *漫画 (18) | *読了本(678) | *雑談 | *雑談(エッセイ的なもの) | ■作家別一覧('12.12.01) | ■個人的お薦め本 | □掲示板 | あ あさのあつこ (15) | い 伊坂幸太郎 (20) | い 伊藤たかみ(6) | い 石持浅海 (6) | い 石田衣良 (6) | う 歌野晶午 (5) | お 乙一 (15) | お 大崎善生 (3) | お 奥田英朗 (7) | お 恩田陸 (6) | お 荻原浩 (10) | か 上遠野浩平 (7) | か 川上弘美 (8) | か 桂望実 (4) | か 海堂尊 (6) | か 角田光代 (38) | か 金城一紀 (5) | き 北村薫 (5) | き 桐野夏生 (8) | さ 佐藤多佳子 (7) | さ 桜庭一樹 (6) | し 島本理生 (5) | し 時雨沢恵一 (8) | し 重松清 (8) | せ 瀬尾まいこ (8) | た 太宰治 (5) | た 谷川俊太郎 (7) | つ 津村記久子 (4) | と 豊島ミホ (10) | な 夏目漱石 (11) | に 西澤保彦 (6) | ひ 姫野カオルコ (4) | ひ 東野圭吾 (22) | ほ 本多孝好 (8) | み 三崎亜記 (3) | み 三浦しをん (5) | み 宮部みゆき (17) | む 村上春樹 (17) | む 村上龍 (4) | も 本谷有希子 (4) | も 森博嗣 (24) | も 森絵都 (7) | や 山本幸久 (2) | や 山本文緒 (13) | よ 吉田修一 (23) | よ 横山秀夫 (10) | 他 その他:ノンフィクション・ビジネス書等 (15) | 他 その他:女性作家 (64) | 他 その他:男性作家 (96) | 他 アンソロジー (7) | 海外 その他 (5) | 海外 ミステリー (5) | 記事収納庫