2008年3月20日 (木)

「助手席にて、グルグル・ダンスを踊って」 伊藤たかみ

助手席にて、グルグル・ダンスを踊って (河出文庫) 助手席にて、グルグル・ダンスを踊って (河出文庫)

著者:伊藤 たかみ
販売元:河出書房新社
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うーん最近あまりいいものを読んでいない。おっと、失敬。
でもこの本もとてもじゃないが「面白い」とは言えない本だった。
うーん…これで賞が取れてしまうのかぁ。
時の流れなのか、それとも私と感性が違うのか。

僕の住む東区とその隣の西区では、
言っては何だが貧富の差というものがある。
僕が付き合い始めたのはそのみすぼらしい西区の
ミオという女の子だった。ミオは雑誌で表紙を飾ったこともある、
可愛い女の子で、けれど西区と言うだけで、少しの陰を持っている。
しかしそんなものは跳ね除けて、僕たちは赤いコンバーチブルに
乗って、青春を駆け抜ける。最高に熱い夏の話。

伊藤さんのデビュー作である。
何もなさ過ぎるのが、ある意味凄い小説だった。
いや、真面目な話、本当何もないのだ。
主人公はミオという可愛い女の子と付き合っていたり、
それから仲間とわいわいと騒いだり、
父親の愛人との改めて見ると奇妙な生活をしたり、
青春の夏のそんな日常が、何の変哲もなく書かれている。
何の変哲もなさ過ぎるから、面白いのかどうかさえも危ぶまれる。
ただ友達がああ言ってこうなった、
こうなるんじゃないだろうか、でもああなった…
みたいな主人公視点の状況説明が続くばかりで、
驚くべき事件もなく終結する。問題は主人公があまりにも
感傷に浸らないところにあるだろう。
その痛みをわざと隠すことによって、味を…
と考えられているのだろうか?それにしては隠されすぎていて、
むしろ楽観的な主人公に苛立ってくるという悪循環。
あぁ、伊藤さんも好きなんですけど、と言い訳をしておく。
地の文章だと言うのに「と言うんで」という話口調になっているのが
個人的にとても読みづらかった。「ので」は「ので」です。
「んで」ってなんですか、許せません。笑 と、そんなところで。

★★☆☆☆*65

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2007年12月25日 (火)

「指輪をはめたい」 伊藤たかみ

指輪をはめたい (文春文庫) 指輪をはめたい (文春文庫)

著者:伊藤 たかみ
販売元:文藝春秋
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あー読むんじゃなかった、という感じの方が強いのが難点ですが。
伊藤さんはやっぱり児童書が良いですよ、
と毎度の事ながら言っている気がしますが、
大人なのに子供っぽい男、についてはある意味上手いのかも知れませんね。

スケートリンクで転倒し、気が付くと記憶をなくしていた。
過去の事は覚えているのだが、スケートをする前の、
たった数時間の記憶がさっぱりとないのだった。
本来ならたった数時間の事くらい、と言いたいところだが、
ちょうどタイミングの悪い事に、僕はプロポーズしようとしていた。
しかも、申し上げにくいが僕は三人の女性と付き合っている。
果たして数時間前の自分は、一体誰に指輪を渡そうとしていたのだろうか。

「そのまま頭を打って死んでしまえばよかったのに」と、本気で思いました。
主人公がこんなに腹立たしい小説もそうないでしょう。
女性の半数はきっと私と同じ事を思うと思う。
何せ主人公は三股をかけ、その上で平然と女を品定めしている。
これがきっと友だちとか、元彼女とかだったら許せるにしても、
三股ってなんだよ、って感じで最初から頭に来る。
そして、頭に来たストーリーを笑い話にできない理由は、
主人公が俄然本気で女を品定めしているからだ。
例えば、比較対照を出してみたとして、森見さんや万城目さんのような、
破天荒で頓珍漢なキャラクターたちが、面白おかしく話してくれるなら、
この三股話も笑って読めるだろう。
しかし、伊藤さん、あまりに真剣に女の品定めを主人公にさせるので、
男の下心というのが見え見えで読むのが辛いほどである。
まぁ、裏を返せば、男の人は楽しく読めるのかも?
よく分からないけど、何だか色々頭に来る話でした。
それは現実を描いていると言う点では、とてもいいのかもしれませんが、
小説で楽しむという点では、私はマイナスだと思いますね。
と、言うわけで。タイトルはクリスマスにピッタリだったのですが。笑

★★☆☆☆*69

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2007年3月31日 (土)

「八月の路上に捨てる」 伊藤たかみ

八月の路上に捨てる 八月の路上に捨てる

著者:伊藤 たかみ
販売元:文藝春秋
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つまんない。
途中から頭の中でこの言葉が回っていたのですが、
「いやいや、芥川賞取ったんだから、最後くらいはいいのかも」と、
なかばやけになって読みました。が、つまらない。
伊藤さんの良さが全く見受けられなかった作品です。
よっぽど「ミカ!」の方がいいです。児童書書いてください、お願いだから。
と、森さんの時にも言った気がする「風に舞い上がる~」もそう思って。

僕は30歳の誕生日に離婚をする。
しかし、その離婚の原因が、自分でも良く判っていなかった。
多分僕は智恵子を愛せていたはずだ。
でも、もう一度振り返ってみると、どうも違う気もする。
不愉快に思いながら出した婚姻届がいけなかったのか、
それとも、お互いに理解しようとしなくなったのがいけなかったのか。
熱い夏、蒸されたトラックに揺られながら、ふと過去を思い出してみる。

よく判らない。いや、「そう言う気持ちになるよ」
って言う主人公の気持ちはとてもよく分かるのですが、
伊藤さんが何故こんなに突飛な比喩を持ってくるのか、とか、
この気持ちを伝えるのに、このくだりは必要ですか、
とかそう考えてしまう自分がいました。なので、終始楽しくない。
勿論、不倫し離婚すると言う話なので、そもそも明るい話ではありません。
でもなんて言うか、別れたいのに別れを切り出せず、
切り出せない理由が僕には分からなくて・・・、
でも僕にはもう智恵子を愛せないように感じる。
そんなグダグダな感じが、とても好きではありませんでした。
だって、皆そうですよ。と言いたくなる。
いつから嫌いになったなんて分からない恋だって沢山あるはずです。
それをただ書いている、と言う印象しかなく。
で、ひねりは無いんですか?とちょっと喧嘩腰になりそうになりました。
そう言うグダグダの中にも「あ、僕は智恵子のこう言う所が好きだったのか」
とか「きっとこういう所が不快感を持つ原因だったのだろう」とか。
そう言う自己解決らしき部分がいまひとつ欠けている気がします。
最後も何だよ、結局離婚したくないのかよ、どっちなんだよ、
って感じで、迷っているなら迷っているらしい事を書いてほしかったかな。
うーん、お薦めはしない。

★★☆☆☆*69

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2007年1月30日 (火)

「ぎぶそん」 伊藤たかみ

ぎぶそん ぎぶそん

著者:伊藤 たかみ
販売元:ポプラ社
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「ぎぶそん」って「ギブ、ソング」の略かと思っていたのですよ。
しかしな~んだ、という感じ。そこまで深い意味はありませんで。
でも良かったですよ~、青春な感じがとても。
個人的には伊藤さんの文章は小学生を描く時が一番好きなのですが、
今回は高校生でも良かったんじゃないか、と言う感じもしました。

音楽が好き、ロックか好き、そういいながら集まった僕たちはバンドを結成した。
しかし、僕の大好きなバンド「ガンズ・アンド・ローゼス」
のコピーを弾く為のには、とびきりのギタリスト・かけるが必要なのだ。
でも、バンドのメンバーはそれに乗り気じゃない。
かけるは昼間から酔っ払いが蔓延る地区に住んでいて、すぐキレる。
だから町での評判は悪いし、僕も初めはビックリしてしまった。
でもそれが何だって言うんだ、生まれた場所で人生が決まるわけじゃない。
道はこれから自分で切り開いてゆくのだから。

酷く近代的に感じてしまったのは私だけでしょうか?
「天皇が倒れた~」のあたりで、「え?」と衝撃を受けました。
すっかり気分は平成っ子のイメージだったため、ギャップが凄くて。
でもここを通り越してから、かけるの家の状況がとてもリアルになったかな。
約20年前の世の中にはこんな時代もあったことでしょう、とか。
でもそう考えると、ギターなんて手に入ったのか?とか、
そんなことをうっすら考えてしまったりもしました。
途中でウォークマンが出てきた時も、「これもあったのか?」と。
まぁそんな事を差し引いたとして、それでも楽しかったのです。
一番の見所はやはり主人公・ガクの恋模様。
幼馴染がどうやって恋愛に発展してゆくか、
と言う何とも言えない甘酸っぱさが良いですね。
音の合間で交わされる、アイコンタクト。
目が彼女へ向き、視線が合い、会話する、その空間がとても温かく感じました。
最後がワーワー騒いで終り~みたいだったので、
個人的にはお祭りが最後だとツボだったのですが・・・。
まぁ個人的にですので。
ギターが弾けたわけでもないのに、何だか懐かしいような感じがする。
それは多分音楽の中で自分がその一つを担って作り上げ、
何も言わなくても心が通じている、そんな体験を思い出すからかもしれません。

★★★☆☆*84

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2007年1月10日 (水)

「ミカ×ミカ!」 伊藤たかみ

ミカ×ミカ! ミカ×ミカ!

著者:伊藤 たかみ
販売元:理論社
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読み終わった後「面白かった」と一言でくくれないくらい、
沢山の温かい気持ちが溢れ出す本。
雰囲気的に言えば、あさのさんの「ガールズブルー」?
でも私はこっちの方が好きかなぁ。
難点は児童書だと言う事だけです(笑)

小学校時代、「オトコオンナ」と言うあだ名が付いていた僕の妹・ミカ。
がさつで男っぽい。だけど中学生になった僕たちの体は、
少しずつ大人に近づいて、そして気持ちもちょっぴり大人になる。
中学校生活も残り僅かになってきて、迎え来るのは修学旅行。
自由時間を楽しむために、恋人を見つけようと皆がそわそわし始めた。
今まで恋愛に無関心だった僕も例外ではなくて、それにミカだって・・・。
元気でわんぱく、それでいてほんのり甘酸っぱい初恋ストーリー。

何でだか、伊藤さんの文章で読むと、
過去の気持ちが自然に蘇えるように、話の情景が浮かんでくる。
子どもの気持ちをピンポイントで押さえた表現力と、
動物や自然と言った共感しやすい物からテーマを得られるのがいいのかも。
今回出てきたのは「幸せの青い鳥」になりたかった鳥・シアワセ。
鳥が話し掛けてきたり、その上恋のキューピット役をしたり、
と結構現実離れしているのだが、語り手ユウスケの反応がとても自然で、
あまぁあえて言うなら中学生なら喋る鳥なんて信じないかも知れないが(苦笑)
半信半疑のところが、「もし鳥が喋ったら私もそうするかも」と思える。
そんな鳥から得られるのは、ネーミングの通り「シアワセ」だ。
自分を女の子だと思いたくなくて・・・そんな思いを抱きながら迎えた、
ミカの思春期における自分と恋との葛藤が、シアワセを通して伝わってくる。
「シアワセを逃がしたくない」今までの自分と向き合い、
ミカが出した結論は、少しずつミカを変え始め、
兄であるユウスケには、ちょっとした嫉妬と穏やかな嬉しさ生まれる。
ずっと一緒で何でも知り尽くしていると思っていた兄弟に、
少しずつわからない部分が出来てきて、切なくなる。
だけど、それは大人になる第一歩だから、僕は温かく見守っていたいんだ。
と言うユウスケの思いが心地よく、そして爽快だった。
いいなぁ、中学生の時に読みたかった・・・、そんな本。
是非「ミカ!」の後に。

★★★★☆*88

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2006年12月19日 (火)

「ミカ!」 伊藤たかみ

ミカ! ミカ!

著者:伊藤 たかみ
販売元:理論社
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何だかふと読みたくなって借りてきました。
懐かしい、昔読みました。森さんの「カラフル」の頃だから中学生かな?
そうそう、結構最近知ったのですが伊藤さんの奥さんって角田光代さんらしい。
夫婦で作家ってすごいなぁ。しかし生活はどうなんだろう。
毎日〆切りに追われているのだろうか・・・とか考えながら読んでしまった(笑)

僕にはお父さんとお姉ちゃんと双子の兄弟・ミカがいる。
お母さんは離れて暮らしているけど、まだ離婚はしていないみたい。
ミカはやんちゃですぐに男の子と喧嘩するし、
自分の事を女の子扱いするヤツんを片っ端からやっつけてしまうオトコオンナだ。
ある日僕がミカに連れられてゆくと、そこには奇妙な生物・通称オトトイがいた。
オトトイは硬い体をしてあまり動かない、キュウイしか食べないへんなヤツ。
僕たちがこっそりオトトイを飼い始めてから、
お父さんと喧嘩したお姉ちゃんは家を出て行ってしまった。
ミカはオトコオンナだから、悲しくないし泣いたりしないと言っていたけど、
その頃からオトトイの体はだんだん、だんだん大きくなっていく―。

懐かしい、の一言です。
児童書だって忘れて没頭して読んじゃいました(笑)
昔読んだ時は、語り口の僕の口調が軽快で(大阪弁だし)読みやすく、
乱暴な女の子・ミカとの調和が面白いな、と思っただけだった気がする。
今回は恥をしのんで読んだかいあり、ミカの成長ぶりを味わえてよかった。
この本にはオトトイと言う悲しみを取ってくれる、未知の動物が出現するが、
この存在が可愛いちょっとしたペットの領域を飛び越え、
成長過程の子供の心を支える重要な役目を担っている事に気づかされる。
男の子になりたかったミカ。
でも女の子の意識がないわけではなく、幼い頃からの成長で、
自分が女である事がとても似合っていなくて惨めだと思っている。
おっぱいが大きくなる事も、生理になる事も許せない。
しかし、コウジの告白によって、自分は女なのだと改めて認識したように、
ちょっとした具合で見えてくる女の子の部分のミカが隠れているのだ。
でも頑なに育った心を開放するのは難しく、一筋縄ではいけない。
そんな時あらわれるオトトイはその矛盾を解くための重要な存在である。
オトトイがどんどん大きくなっていったように、
そこには隠していた女の子のミカの涙がたっぷり詰まっている。
こっそりとベランダで泣いているミカの姿を思い浮かべると、
いつもやんちゃで賑やかな分、すごく切ない気がした。
児童書でありながら、しっかり押さえるべきポイント、
例えば親の離婚であるとか、兄弟と離れる悲しさだとか、
子供同士での気持ちの使いあいなど、しっかり盛りこま出ている。
最後に少し突き放したようにいなくなるオトトイだけれど、
「でももう大丈夫でしょう、いっぱい泣いたんだから」
と言う明るい励ましが込められているようで気持ちが良かった。
おとといに涙を残して、さあ明日は笑顔で頑張って。と背中を押される明るい本。

★★★☆☆*87

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