2009年8月12日 (水)

「蛇行する川のほとり 3」 恩田陸

蛇行する川のほとり (中公文庫) 蛇行する川のほとり (中公文庫)

著者:恩田 陸
販売元:中央公論新社
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やっぱり1冊で文庫本で読んでも良かったな。むしろそっちの方が
よかったかな……。なんだかいいのか悪いのか、感想が抱きづらい
本だった。まぁ恩田さんの本はそういう本がむしろ多いよな、
とか思いつつ。そう言えば「かしらん」ないな、この本。

香澄の家は蛇行する川のほとりにある。洋風で古風な趣は、
香澄の雰囲気ととても似合っている。その家は以前、
違う家族が住んでいたのだが、ある事件がきっかけで
空き家になっていたところに、彼女と義母が越してきたのだった。
ある事件――それはそこに住んでいた母親が死んだことと、
その近くにある野外音楽堂で、一人の少女が死んだことである。
自分がその犯人ではないかと、考えているだろう鞠子は、
可愛そうに酷い表情をしている。わたしたちは、過去を忘れようと、
いや、忘れることができずに、今その事件を語り始める。

澄み切った川の水が、良く見たら濁っていたように、いや、
濁ってしまったように、純粋だった少女たちは濁ってゆく。
キラキラと笑っていた少女たちは、その闇を忘れようと、
しかし忘れることが出来ず、事件の真相を語り始める。
真っ直ぐだったものが、ぐにゃりと歪んでアンニュイな空気が流れ込む。
香澄はあの日死のうと思っていたのだろうか。文面からはよく分からない。
すべてが語られずにいたら、何も起きなかったであろう水面は、
投げ入れられた石によって、波紋を作りまた新たな犠牲者を
出したんだろう。そう思う。だから、香澄は死ぬつもりだったのだ。
きっとそれはいつでも良かったんだろう。死ぬと言う覚悟を、
もうしてしまったのだから。この本は何が伝えたかったのか。
私にはよく分からない。筆を洗ったコップに沈殿していた
不穏な色の絵の具を、混ぜてはいけないと思いながら、
混ぜてしまう期待と後悔。また時間が経てば、色は沈み、
平穏が訪れるんだろう。きっとこの話はそのための儀式。
それを逃げては、本当の平穏は訪れないと、みんな知っているのだ。
怖い、だけど、それを乗り越えなければ。
そう彼女たちは小さな決心を心に抱くんだろう。

★★★☆☆*86

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2009年8月11日 (火)

「蛇行する川のほとり 2」 恩田陸

蛇行する川のほとり (中公文庫) 蛇行する川のほとり (中公文庫)

著者:恩田 陸
販売元:中央公論新社
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2巻目。予想に反して少し中だるみ。期待しすぎたかしら。
まぁ大抵評判いい本って私の趣味と合わなかったりするからなぁ。
恩田さんのね。難しい。恩田さんの文章は、嫌いではないけれど、
読みにくい文章だと思う。つっかえが、少しあるんだよね。

香澄の家は蛇行する川のほとりにある。洋風で古風な趣は、
香澄の雰囲気ととても似合っている。その家は以前、
違う家族が住んでいたのだが、ある事件がきっかけで
空き家になっていたところに、彼女と義母が越してきたのだった。
ある事件――それはそこに住んでいた母親が死んだことと、
その近くにある野外音楽堂で、一人の少女が死んだことである。
自分がその犯人ではないかと、考えているだろう鞠子は、
可愛そうに酷い表情をしている。わたしたちは、過去を忘れようと、
いや、忘れることができずに、今その事件を語り始める。

なんだかひっそりと流れる蛇行する川が、そこにあるようで、
でもそこにないようで。なんだか物足りない原因は、
背景描写が少ないからだろう。恩田さんはとても人物描写が上手い。
特に強い人間に対し、弱い人間が怯えていたり、
憧れていたりする描写がとても上手い。そして、少女から、
大人になりかけている女の子の描き方がぴか一だ。
突いたら壊れてしまいそうな少女たち。けれども、その周りにある
風景についてはあまり描いてくれない。例えば鬱蒼と茂った雑草を見て、
ハルジオンを見て、彼女たちは何を思うのか、感じるのか。
葉脈が骨のようだ、とか核になる言葉は出てくるのだけれど、
そうではなくて、感じ取る雰囲気が描かれない。怖いとか、寂しいとか、
嬉しいとか、そういうちょっとした感情が、書かれていない。
「わたし」と語られながらも、文章が非常に硬い。
だから、蛇行する川がすぐ傍で流れているようで、いや、
もしやもっと遠いんじゃないかと思えたり、何だか不安定な舞台に
思えてくるのだ。それが狙いなんだろうか?そうだったら仕方がない。
あの事件の犯人は誰なのか。容疑者は香澄の両親と、
今ここに集まっているメンバーだけである。子どもが殺したのか?
秋臣が忠告したのにもかかわらず、進んでいく不穏な空気。
もっと香澄が猟奇的だったら良かったのか?
よく分からないけど、いや、分からないから、不完全燃焼。

★★★☆☆*86

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2009年8月 9日 (日)

「蛇行する川のほとり 1」 恩田陸

蛇行する川のほとり (中公文庫) 蛇行する川のほとり (中公文庫)

著者:恩田 陸
販売元:中央公論新社
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恩田さん、お久しぶり。いつもいつもお久しぶりとか言って
読んでいる気がして毎度申し訳ない。読むたびに、あぁいい、
って思うんだけどね何となく次に手が伸びなかったりして。
嫌いじゃないんだけどなぁ、嫌いじゃ。

野外音楽堂で行われる演劇の舞台背景を描くため、鞠子は
夏合宿に参加することになった。それも憧れである美術部の
先輩の家にお呼ばれされるのである。鞠子は何度とないその機会に
はしゃいでいた。素敵な先輩を独り占めできるチャンスである。
しかし、合宿を前にし、鞠子の周りでは不可解なことが起こった。
先輩である香澄に近づくな、と見ず知らずの少年・暁臣に脅されたり、
自宅の庭で仮面を被った不審な人物を見かけた。
結局合宿は香澄、芳野に暁臣、月彦という男子生徒も加わり、始まった。
絵を描き始め、清々しい気分の鞠子だったが、またも暁臣は今すぐにでも
家に帰るべきだ、と言い始める。彼が警告する理由とは……。

これ確か3巻が1冊になって文庫になっているはずなんだけど、
図書館になかったので仕方なく1冊ずつ読んでいる。けれども、
1冊目を読み終わった今、1冊ずつで良かったと思っている。
何と言ってもこの1巻目のラストのぞくぞくする感じを、
きっと文庫だと感じることが出来なかったろうから。
キャラクターは恩田さんお決まりの、長髪で美人な透明感ある少女と、
ふわふわしてちょっと抜け気味の少女がとてもいい空気を作っている。
読んでいるとまるで少女漫画のようで、ほんわかした気分になれる。
だけど、その下に隠れているミステリーは、相変わらず、
これでもかと不穏な空気を含んでいた。何だろうね、うーん、そうだな、
グリム童話みたいな、そんな底の方に真っ黒なものがゆらゆらしている
んだよね。表面では可愛い女の子たちがきゃはきゃは言って、
笑っているのに。その描き方が凄く恩田さんは上手いのだ。
この本も最初は「なんだ、いつもの通りの学園ものか」と、
落胆していたんだけど、最後の数ページで鳥肌が立った。
さすが、恩田さん。このラストを読んで次を読まない人いないと思う。
それくらいぞわぞわと、蠢いて、引き寄せる何かを感じた。
そう、これを「怖いもの見たさ」という。だからやめられないのよね、
と思い、今日2巻目を借りた。たまに読みたくなるだよな、
このほの暗い底から、足を引っ張られるようなこのおぞましい感覚をさ。

★★★★☆*86

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2007年7月29日 (日)

「木洩れ日に泳ぐ魚」 恩田陸

木洩れ日に泳ぐ魚 木洩れ日に泳ぐ魚

著者:恩田 陸
販売元:中央公論新社
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ものすごーく久しぶりに恩田さんの本を読みました。
なんと一年ぶり!「夜のピクニック」以来でした(申し訳ない;
本当は図書館の本を先に読もうと思っていたのに、
読み始めたら止まらなくなってしまったのです。
恩田さんの吸引力は凄いなぁ、と今回も思いました。実はサイン本です。

千尋と千秋は、住んでいたアパートを明日引き上げる。
明日になりこの玄関を出たら、二人は別々の方向に歩いてゆくのだ。
いや、今夜の話し合いによっては、もしかしたら二人のうちどちらかは、
この家に死体となって残るのかも知れないのだが……。
良くある愛情のもつれであったら、どんなによかったろうか、
二人は最後に話さなければならない事が一つだけある。
そう、一年前、ある男が死んだ事件の犯人が誰であるかを。

260Pもあるのに、結局語られているのは、
破局の原因と、冒頭に述べられた一年前の話のことだけである。
おまけに主人公の二人はそのアパートから終始出ない。
こんな事を聞くと、さぞかし詰まらない話がたらたら書かれているのか?
と思われるかもしれないが、誤解しないで欲しい。
一つの出来事を読み手を飽きさせる事無く最後まで楽しませるのが、
恩田さんの得意とするところである。これは前回読んだ「夜のピクニック」
にも言える事で、こちらでは主人公たちはただ黙々と歩いている。
ただそれだけなのに、その中には様々なドラマが展開され、
そこに驚きや疑い、喜びや恐怖を味わわせてくれるのだ。
今回の話の根幹を述べてしまうと、主人公の二人はお互いの事を、
一年前の事件の犯人だと思っていると言うところ。
最後まで真実は分からないのだが、男と女、しかも双子(だと思っている)
である彼らは、最後に真実を突き止めるべきだという結論に達する。
決して実らない恋。許される事ない恋。二人は苦しみを必死に絶えるのだ。
そして二人で捜し求めた、生き別れた父親が目の前で死ぬ。
二人の仲が崩壊した理由は全てがそこに何らかの形で繋がっていた。
父親の死、それに双子の兄弟が殺したかも知れないという疑惑、
思い出したくない一年前を少しずつ思い出すにつれ、
忘却・抹消していた過去がつらつらと回り始める。
回想シーンは局部的にリアルに、もしくは夢の中で抽象的に語られるのだが、
そのどれもが、ゆっくりと近づいてくる過去のように生々しく、
読み進める内に鳥肌が立った。二人がそれぞれ持っていた真実が合わさる時、
事件の真相が、ようやく明らかになる。
展開は、過去を探るように、記憶の近辺からじわじわと攻めてゆき、
そして確信を見つけた時の二人の様子に緊張感がありとても良かった。
知りたかった、でも知りたくなかった真実。
ラストは事実は語られないので、本当の事は闇の中だ。
しかし、この一夜で繋ぎ合わされた二人の記憶は、変わらないという、
何とも不明瞭な感じで終わるのだが、最後千秋がナイフをしまうのは、
いつしか「千秋」を忘れ去ったあの日のように、この夜の事を忘れ、
未来に掛かる暗い影を拭い去りたかったのだと分かり、
焦りや焦燥が窺え、安心の中に見え隠れする緊張が良かったと思う。
まぁ残念なのは煮詰まる割りに然程最後に救いがない話であるという点で。
「こころ」のように自殺しなかっただけマシなのか?
久々の恩田ワールド楽しめました。結構買い込んでるのでこれを機に読もう。

★★★★☆*86

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2006年7月20日 (木)

「夜のピクニック」 恩田陸

夜のピクニック 夜のピクニック

著者:恩田 陸
販売元:新潮社
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そうそう、コレが読みたかったの!!
と意気込んで読んだ割りに、あれ?恩田さんの雰囲気がいつもと違う。
恩田さんにしては凄く大人しい、しっとりしたお話でした。
映画化するらしいですね!それなのになんで文庫本出てないんだろう・・・?
って疑問視する。心に残るいい話、早く文庫本出るといいな。

異母兄弟が同じクラスにいる・・・!!
そんな設定だったら、めくるめく学園物かしら?
なんて変な期待をしていたせいか、少々暖簾に腕押し気味で。
内容は・・・そうですね、はっきり言うとただ歩く。ひたすら歩く話。
歩行祭、こんなのあるって判ってたら、
私は絶対この学校に入らないな、と冷静に考えながら読みました。笑
ちなみにうちの母校は、15K耐久山越えロードレースだったのですが、
それでさえもヒーヒー言ってましたからね。
山越え・・・半端ないですから、本当。だからこの歩行祭かなりの物。
って・・・山越えの話になってしまいましたが、まぁとっても辛いんですよって事で。
でもその辛さを一緒に体験する中で、友情って不思議と深まったりするんです、
って言うのがこの本のコンセプトである。
喜びを共有する・・・ちょっと意味は違うかも知れないけど、雰囲気はそんな感じ。
「こうして、夜中に、昼間ならば絶対に語れないような事を語っている今こそが
全身の痛みでボロボロなんだけど、顔も見えない真っ暗なところで話をしながら
頷いているのが、あたしの歩行祭なのだと」
と貴子の心のセリフがあるのですが、そこが好き。
父親の事を考えながら、貴子も融もお互いにいつもどこかで自分の事を蔑んでいる。
融の絶えず引け目を感じている惨めな自分に対する、理由も判らないイライラと
貴子のどうにかしてこの最後の歩行祭で融に話しかけようとする決意。
そして親友たちが貴子と融を温かく見守っている。
これらが徐々に解れ合って、ついに2人が会話をする時、
文字通り、鳥肌が立つほど感動しました。
そこに実はそれは親友・杏奈によって予言されていた、と言う、
感動的なシーンにおまじないのキラキラした要素が加わって、
とても爽やかな学園物(?)に仕上がっています。
でもね・・・私的に杏奈の弟の登場ってイマイチ重要性を感じない気がしてしまった。
一応彼が引き付け役なのですが、結局美和子も知っていたわけで、
美和子がちょっかいを出してもよかったのでは・・・と少し。
まぁおまじない・・・だから仕方ないと言えば仕方ないような・・・(煮え切らない
後は、最初から最後まで歩きっぱなしだから、少し話が平坦かな。
勿論友情で言ったら一級品間違いないですけど。
とても個人的に忍が好きです。笑
皆様もこの美しい友情を垣間見れる歩行祭、覗いてみてはいかかでしょう。

*80

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2006年7月 6日 (木)

「六番目の小夜子」 恩田陸

六番目の小夜子 六番目の小夜子

著者:恩田 陸
販売元:新潮社
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恩田さんいいよ~とお薦めいただいたので、初めて手に取った本。
たまたま読んでみたら、なんとデビュー作だった!
しかもこれを1週間で書き上げたなんて、ビックリですよ。

読み始め、「うわぁ・・・オカルトっぽいなぁ」と思いました。笑
単なる学園物をイメージして読み始めたので、
実はその衝撃は結構大きかった気もしますが・・・。
しかしながら、恩田さんのキャラクターの描き方に惚れました。
恩田さんの書く作品には美人さんが1人大抵出てくるのですが、
その子の表現の仕方がとても好きです。
この「六番目の小夜子」では小世子がその美人さんなわけですが、
「こんなに完璧な美人なのに、とてもしなやかっていうか、
人なつっこい感じがする」の文字通りで、おまけに謎多き人物って設定がいい。
それと、この「小夜子」のストーリー、
特に六番目の小夜子劇は真剣に読んでしまい鳥肌物でした。
あそこまで物語に読者を飲み込んでくれる文章もそうないでしょう!
と私は豪語します。笑
ただし・・・?
私の理解力不足かもしれませんが、会話で無い部分の主体と客体の
区別が微妙に付け難く、気を抜くと「あれ?これって誰の気持ち?」と、まぁ。
きっとそれは私だけです。苦笑
あと最後の文章も、あとがきか何かで説明してほしかったなぁと。
そうそう、これNHK?でドラマやってたんですってね!
見たかったなぁ、と今でも後悔。
そんなこんなで、皆様も是非恩田ワールドへ☆

*80

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