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2014年1月13日 (月)

「なぎさ」 山本文緒

なぎさ (単行本)

        山本 文緒 角川書店 2013-10-19
        売り上げランキング : 9827
                                                    by ヨメレバ
 
山本さんの待望の新刊とのことで、期待していました。
が、いつもの癖で文庫になるのを待っていようか迷って
いたところ、「王様のブランチ」で特集をやっており、
思い切って購入。久しぶりの山本さんは、一皮剥けていました。
 
故郷を飛び出し、静かに暮らす同窓生夫婦。夫は毎日妻の弁当を食べ、
出社せず釣り三昧。行動を共にする後輩は、勤め先がブラック企業だと
気づいていた。家事だけが取り柄の妻は、妹に誘われカフェを始めるが。
(amazonより)
 
王様のブランチで紹介されると売れる、というのは有名な話で、
ただ話題性で売れているのか、面白くて売れているのか分からないので
いつも購入を躊躇してしまうのですが、今回は思い切って購入して
よかったと思いました。山本さんの書籍は十四、五冊目ですが、
この本は過去の作品を振り返っても、どの作品にも
当てはまらず似てもいないものだと感じます。それもそのはず、
この本はなんと十五年ぶりの長編小説。書けないスランプの時期を
乗り越え生み出された作品なのです。内容は、「妻」「夫の部下」
「妹の恋人」という奇妙な三つの視点から描かれています。
読みやすさを追求するのなら、「妻」の他に、夫自身や妹の視線で
描かれればよさそうなのに、なぜこの三視点なのか。
初めを読んでいるうちは違和感がありました。しかし、読み進めるうち、
このいびつな三つの視線が交差し、より人間の感情の生々しさを
生み出していると感じました。物語は、波がゆっくり水面を描くように
静かに進んでいく。この本全体から漂う形の悪さは、まるで誰をも
傷つけないように気遣う主人公の心を描いているようでもある。
専業主婦になり手持ち無沙汰で何も持ち得ないような不安感から、
カフェの経営を手がけられるようになるまでの、慌しく自分が変わる様。
周りが動き出し、淀んでいた日常から、陽の当たる場所に上る途中の
様子がとても巧妙に描かれている。ぱっと明るい場所に出られたわけでは
まだない。小さな光はさしているが、いつ陰ってもおかしくないし、
ラストははっきりいって清々しくない。これがまた続くのだ、と
強く示される。しかし、始めの薄暗い視界はもうない。自分でも
薄く光の差す場所を探すことが出来るだろうと強く思う本でした。
主人公の両親について、一番もやもやしたまま終わったような。
もう少し描かれていてもいいかなと思いました。続いての新作に期待。
 
★★★★☆*86

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