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2012年11月

2012年11月30日 (金)

「万能鑑定士Qの事件簿 Ⅱ」 松岡圭祐

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ⅠとⅡは続巻になっています。読み始める際は、2冊買ってから読み始め
ることをオススメします。するすると読み進んで、はらりと解決する、
ミステリの醍醐味を体現したような本でした。面白いか?それはさておき。

東京23区を侵食していく不気味な“力士シール”。誰が、何のために
貼ったのか?謎を追う若き週刊誌記者・小笠原は、猫のように鋭く
魅惑的な瞳を持つ美女と出会う。凛田莉子、23歳―一瞬時に万物の
真価・真贋・真相を見破る「万能鑑定士」だ。信じられないほどの
天然キャラで劣等生だった莉子は、いつどこで広範な専門知識と観察眼を
身につけたのか。稀代の頭脳派ヒロインが日本を変える!
書き下ろしシリーズ第1弾。(Amazonより)

Ⅰ巻の方では書評のようなべた褒めをしているので、こちらではいつも
通り毒舌でいきましょう。この本Ⅱで1話が完結。主人公と凛子の出会い
の話しであります。主人公は角川書店の雑誌「月刊角川」の編集者。
わたしも同じく編集者として、遠い目をして読んでしまいました。という
のも、編集者はこのような甘い仕事ではないからです。ミステリにうつつ
を抜かしているようでは、雑誌は出来上がりません。っていうか主人公
いつ記事書いてるんですか?という非現実さを、編集者としては感じたり
しました。ある意味、とても小説っぽい、しかし絵に書いたような編集者
です。でも現実は違うのですけどね……。ミステリの内容としては、
力士シールの犯人探し、と思いきや偽造一万円札製造の犯人探し。おまけに
日本没落の危機。こんなにも色々詰め込んでいるのに、パンクしないのは、
知識量がハンパじゃないからだと思います。どれもうそ臭くなく、真実味を
帯びている。編集者は実際もっと激しい職業であるにも関わらず、皆が
なっとくする「イメージ」を的確に描いているように、そのほかの出来事も
全て、的確に描いているキレの良さを感じました。一万円札が偽造されて
見分けがつかなくなってしまったら、実際のところどうなるんでしょうね?
日本のお札はホログラムとか優れているけど、もっと貧しい国ではただの
紙切れ同然のものが紙幣とされているけど、暴動は起こらない。実際どう
なるのか?意外に大丈夫なのか?そんな事分かりっこないし、本当に起き
たらこんなことにはならないような気がするのだが「なんかそうなりそう」
という真実味のある「イメージ」がさらりと頭に浮かび、納得してしまう
のでした。個人的には、力士シールがもうちょっと面白い展開を見せれば
良かったのに、なんて思ったのですが、(うちの近所にもたくさん貼って
あるので気になっていた)あっけなく終わり、でもまあ現実も「こんなも
んなんじゃないかな」なんて納得してしまい、これまた上手くまるめられた
ものだ、と思いました。ちなみに実際の力士シールの犯人は見つかってい
ないらしいですね。いいとこついてくるね。ミステリでも有意義な時間を。

★★★★★*96

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「万能鑑定士Qの事件簿 Ⅰ」 松岡圭祐

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ミステリの内容はともかく、文章が上手すぎる。文脈が上手すぎる。
わたしがライターとして働いることにより得られた、「文章の新境地」を
いとも簡単に体現する巧の技を感じた本だった。松岡さんは、小説を書く
ために生まれてきたような人ですね。そう羨ましく思いました。

東京23区を侵食していく不気味な“力士シール”。誰が、何のために
貼ったのか?謎を追う若き週刊誌記者・小笠原は、猫のように鋭く
魅惑的な瞳を持つ美女と出会う。凛田莉子、23歳―一瞬時に万物の
真価・真贋・真相を見破る「万能鑑定士」だ。信じられないほどの
天然キャラで劣等生だった莉子は、いつどこで広範な専門知識と観察眼を
身につけたのか。稀代の頭脳派ヒロインが日本を変える!
書き下ろしシリーズ第1弾。(Amazonより)

初めに申しておくと、相当昔にわたしは「千里眼シリーズ」の1巻を
途中で挫折しています。そのため読書履歴には残っておらず、松岡さんの
文章を一体いつ初めて読んだのか皆目分かりません。とりあえず「千里眼」
を楽しめなかった人でも面白いと思った本、ということで書いておきます。
文章を生産(むしろ強制的に量産)する仕事に就いて思ったことですが、
今までわたしが書いてきた趣味の文章は、とても幼稚でありました。
そして、趣味で読む文章の読解力や構成力も、とても幼稚でありました。
そのことを最近読む小説の中でひしひしと感じます。いま、ようやく
文章職の片鱗を触れたのかもしれない、と。この「鑑定士Q」シリーズでは
その実感をいっそう得ることができました。なんといってもこの文章の
上手さ。いままでストーリーの面白さうんぬんで「千里眼」シリーズに
挫折していたのだとすれば、申し訳なさでいっぱいになる、この筆力。
これはもう小説家になるべくして生まれた人の文章だなあと、深く思ったの
でした。もちろん、初期作品がこんなに上手いはずがありませんから、
自分の好きな職業を突き詰めた暁の、頂、を見ているように思うのでした。
内容は、シリーズの始まりに相応しいキャッチーな推理劇。2巻構成ながら
飽きさせない知識力と、舌を巻く物語の吸引力、見事です。一番凄いのは、
このシリーズを予め12巻で終わらせる、と(おそらく)決めてから
書き始めていることです。構成力にも脱帽。これぞミステリー作家、なんで
しょうね。わたしもようやくミステリーの醍醐味に触れることが出来た
気がします。毎日の平坦を飽きさせない物語。何より勝る人生の糧です。
絶賛しすぎました。まるで書評みたいになりましたが、面白い事は確かです。

★★★★★*96

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2012年11月 7日 (水)

「人生がときめく片づけの魔法」 近藤麻理恵

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わたしの人生を変えてくれた本でありました。わたしは昔から物を捨て
られない性分……しかも本やCDを買い漁るので、部屋はみるみるうちに
物であふれかえる。仕方がないと諦めてきた人生でしたが、心のどこかで
きれいな部屋に住みたいと思ってました。だって人を呼べないんだもの笑。

この本は、「一度片づけたら、二度と散らからない方法」
について書いた本です。「そんなことはありえない」そう思った方にこそ、
じつは読んでいただきたい本でもあります。 著者の近藤麻理恵さん
(こんまり先生)は、床が見えないゴミ部屋をホテルのスイートルームの
ように劇的に変える 片づけコンサルタント。5歳のときから 「ESSE」や
「オレンジページ」等の主婦雑誌を愛読し、中学3年のときには、
ベストセラー『「捨てる!」技術』を読んで開眼、以来、本格的に片づけ
研究を始めたそうです。 そして、大学2年のとき、コンサルティング
業務を開始、「こんまり流ときめき整理収納法」を編み出しました。
(Amazonより)

近藤さんの存在は、中居君の金スマで知っていました。洋服の畳み方の
紹介をしていて当時わたしもテレビを見ながら実践した記憶がありました。
近藤さんの畳み方は、確かに洋服がかさばらず衣装ケースは一時的に
きれいなりました。しかし、少し経つとやはりキレイな畳み方は続かず、
取り込んだ洗濯物がベッドにまであふれ部屋は一向に汚いままでした。
さて、わたしの汚い部屋の話はとりあえずさて置き、この本の特徴として、
片付けの本なのに「一切図説がない」という所です。そのため手っ取り
早く部屋を片付けたいと思っている人にとっては、相当不満だと思います。
だって普通、カタログのようなキレイになった部屋の写真や物の収納の仕方
便利グッズの紹介が載っているものだとみんな思うでしょう。図や写真が
ない、ということは、裏を返せば「それ以外のことを伝えたい本」という
ことになります。ここに書かれているのは、近藤さんの「片づけマインド」
という名の、物に対する気持ちの持ち方です。物を取っておくか捨てるか。
そして取って置く物をどうしまったらよいか。それが片づけの軸であり、
「掃除をする」ことや「整理」は「片づけではない」ということを
教えてくれます。片づけの心得を学べる本、と考えるのがいいでしょう。
片づけの仕方を教えてくれる本、ではありません。読んでいるうちに、
うずうず片づけをしたくなってきて、読み終える前には、物とのお別れ会
を始めていました。文章中に片づけは「人生に片をつけること」と出て
きますが、まったくその通りだと思いました。部屋を片づけているうちに、
「あ、こんなのも持ってたな」「懐かしい」という物たちがたくさん出て
きました。でも、いくら懐かしくても「今は絶対に使わない物」もたくさん
ありました。それらは、この本に書かれているこのから学んだ「片づけ
マインド」に従って、捨てたり、取っておくことにしたりしました。
すごく買った高いけど、使わない物も処分。買ったときに「ときめかせて
くれたことに感謝」することで、あっけないほど簡単に、部屋はキレイに
なりました。あっけないとは言っても、ゴミ袋20袋以上、本200冊、CD30枚
は確実に処分しました。自分の人生に、この「物」が「いる」「いらない」
「必要」「必要ない」ということが分かるようになる本でした。これからも
いらない物をたくさん買ってしまうでしょう。少なくてもわたしは本を、
今後の人生においても大量に買い続ける自信があります。でももう大丈夫
です。心に響いた本だけ残しておく。そうした心積もりができたのでした。
「読み物」として一読の価値があります。皆さまぜひお読み下さい。
この本は、何かを(近藤さんの場合は片づけを)極めた人にしか分から
ない極みが惜しげもなく書かれています。

★★★★★*96

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2012年11月 3日 (土)

「探し物は恋なんです」 白石まみ


実家の近くの本屋に特設平積みされていたので、買ってみました。最近
漫画「はぴまり」にはまるなど、少女漫画的な要素が足りていない様子。
この本はとても合コンに行ってみようかな、という気分になる本でした。
思っていたよりもハッピーな内容ではないですが、前向きになれます。

彼氏いない暦=年齢のOL、直美29歳。仕事も家庭も手に入れたいと願う、
陽子30歳。お嫁さんになりたい歴女、麻衣子27歳。自分とお金しか
信じない女、聡子33歳。女子会好きの現代っ子、愛22歳。仕事に
疲れてしまった、千草37歳。超恋愛氷河期を生きる女性たちの声が
連作短編に!恋や人生を探しているあなたへ、元気がでる6つのストーリー。
(Amazonより)

内容がとてもよかった、というよりも、内容のバラエティの豊かさに脱帽
した本でした。読み終わって作者の経歴を見てみると(わたしは大抵
読み終わってからしか作者の経歴を読まない)編集者の経験を持っている
とのこと。何を隠そうわたしも編集者です。きっとこの方もライター業を
行っていたのでしょう。取材に取材を重ね、取材に明け暮れる日々に疲労
した努力が、その文章の中に滲み出ていました。この本に対しての苦労
ではなく、これまでの経験の厚みというのでしょうか。そんなところです。
なので、この本はとても真実味と納得を持って読める本でした。未婚女性
が増えている世の中。もちろん、未婚男性も増えている。でも、問題なの
は本当はそこではなくて、結婚したいけどしていない人、が多い事。
「結婚したいけど、相手がいない」「いい出会いがない」「自分から
積極的に男性にアプローチできない」など、消極的な人が大多数になり、
恋愛が枯渇状態にあることだと思います。少女漫画を読んでいいなあ、
こんな恋愛!と思っている人ばかり。この本は、そんな問題提起を的確に
ついて、その微妙な女性心理を描いていました。だから突然ハッピーエンド
にはならない。けれど「合コン行ってみてもいいかも」「生活を改めよう」
とか地味ながらも、何もしない消極的な世界から抜け出そうと思わせて
くれるのだった。世の中のせいにするにはまだ早い。未婚女子に
オススメしたい本。きっと何かが変わるはず。ところでこの本聞いたこと
ない出版社ですね。どこだろう?新しいところなのかしら。

★★★★☆*85

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