« 「月と雷」 角田光代 | トップページ | 「9S ナインエス <1>」 葉山透 »

2012年10月19日 (金)

「天切り松闇がたり 闇の花道」 浅田次郎

20121026


時間がないので、面白い小説だけ教えてください、と最近心から
思います。しかしながら、面白い本ばかりを読んでいると、
詰まらない本をひいひい言いながら読んでいたころがとても懐かし
く思えてきて、それこそが小説の面白さを生み出している気がする。

夜更けの留置場に現れた、その不思議な老人は六尺四方にしか
聞こえないという夜盗の声音「闇がたり」で、遙かな昔を物語り
始めた―。時は大正ロマン華やかなりし頃、帝都に名を馳せた義賊
「目細の安吉」一家。盗られて困らぬ天下のお宝だけを狙い、
貧しい人々には救いの手をさしのべる。義理と人情に命を賭けた、
粋でいなせな怪盗たちの胸のすく大活躍を描く傑作悪漢小説
シリーズ第一弾。 (Amazonより)

時間がないので面白い小説が読みたい、と友人にリクエストした
ところ、この本を紹介された。今更浅田次郎かい、と思いつつ読了。
なるほど浅田次郎である。物語は明治から大正にかけて、
文明開化の広がる日本が舞台だ。登場人物は、すべて悪人。
金持ちから金をまきあげ、貧乏人に金をめぐらせる。世の必要悪と
呼ばれる人たちの物語だ。この本から感じるのは、ありそうで、
なかった人情。……いや、あるんだけど、とてもよい部分だけを
選りすぐった人情、ともいえるか。そもそも時代物の小説など
ごまんとあり、似たような話をどこかで読んだような気もするのだが、
その粋な感じがとても光る物語だった。かといって記憶に鮮烈に
残るほど斬新か、と聞かれれば、そうでもないのだが。いつしか、
独房で松蔵の声に耳を傾ける囚人達のわくわくした気持ちが分かる
のは、話に見せられている証拠だろう。ところで、一巻の解説でも
書いてあるのだが、昔話を始める松蔵は、その物語の主人公でもある。
俺の昔話を聞かせてやるぜ、とばかりに話し始める松蔵の態度が、
最初とても気に食わない。笑 なんだってそんなに偉そうに話され
なくてはならないんだ、と思うのだけれど、こちらもいつしか
で、先はどうなったんだい?とわくわくした気持ちになっているのは、
松蔵の思う壺である。自分をひけらかすのではなく、自分という
定点カメラから伝える兄兄妹の様子は、話の中でも映える偉人達
なのである。定番物としては外れないが、これぞ、とならないのは
なぜだろう……と思うシリーズ第一弾。タイトルのせいかしら。

★★★★★*90

|

« 「月と雷」 角田光代 | トップページ | 「9S ナインエス <1>」 葉山透 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/47599117

この記事へのトラックバック一覧です: 「天切り松闇がたり 闇の花道」 浅田次郎:

« 「月と雷」 角田光代 | トップページ | 「9S ナインエス <1>」 葉山透 »