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2012年9月12日 (水)

「岸辺の旅」 湯本香樹実

20110912

まったく更新していないにも関わらず、実は更新していたときよりも
訪問者の方が多く、この感想文のストックは放置していてもまあまあ
役に立っているのかしらんなんて思っていたりします。いやはや、
のろのろ更新されるブログにお付き合いくださりありがとうございます。

なにものも分かつことのできない愛がある。時も、死さえも。
あまりにも美しく、哀しく、つよい至高の傑作長篇小説。
(Amazonより)

最後はどうなるのだろう、とそわそわ読み進め、最後はどうにもなら
なかったのだけれど、これもありかな、と思わなくも、むしろ、
どうにもならなかったからこそ、読後に印象が残っているのかもしれ
ないとも思った。はじめ主人公は死に向かっているように感じる。
「しらたま」という唐突でつるするとつかみどころのない形容は、
最後までどう受け止めたらいいのか分からない。だから、受け止め
たらいいのか分からない、それがしらたまの答えなのだと思う。
主人公とその夫が進んでいくさまざまな過程は、夢のようだ。
とぎれとぎれで、昨日が今日であったり、今日が一昨日であったりする
ような、日にちの感覚を逸脱した雰囲気がある。そのため、物語の中
わずかに夫が消え行く様子がとても静かに進み、けれど抗っている
ように感じるのだった。最初にも書いたけれども、最後はどうにも
ならない。はっきり何かが分かるわけでもなく、だけど、主人公は
2人分の荷物を持ち歩き始める。だから、不安な気持の中進んでいく
その気持は、実はもうすでに諦めに達していたのではないかと思う。
もうダメなのだ、と気づいて、諦めた、しかし、ふと気が向いて作って
みたしらたま。いなくなったとしても、それは分かっていたことで、
怒ることもなく、悲しむこともなく、ただ感謝を述べて立ち上がる。
静かな前進の物語である。はっきりしたものを読みたい人にはお薦めしない。

★★★★☆*86

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