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2011年8月 1日 (月)

「風にそよぐ墓標」 門田隆将

風にそよぐ墓標−父と息子の日航機墜落事故− 風にそよぐ墓標−父と息子の日航機墜落事故−

著者:門田 隆将
販売元:集英社
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凄まじい本を読んだ、というのが第一の感想だ。先日読んだ『津波と原発』
佐野眞一著の比ではない。読まなければ人生の一部を損している、
と思わせるほどの重みがあった。みなさま必読の本である。戦争と、
いや、それ以上に「死」を考えさせられる本である。

絶望の中、我を失った母親、家族全員を失い、天涯孤独の中で幸せを求めて
もがきつづけた少年、父親の遺言を胸に逆境に耐え続けた日々……
沈黙を破った男たちが語る「25年間」の壮絶なドラマ。これまで、
女性たちによってのみ語られてきた御巣鷹山事故の悲劇をまったく
新しい観点から炙り出したルポルタージュ。
(Amazonより)

この本は昭和60年8月12日に起きた日本航空機墜落事故についての本だ。
ちなみにわたしは事故当時まだ生まれていない。読む前から事故のことは
知っていた(おそらく社会科の授業で習った)し、横山秀夫の
『クライマーズ・ハイ』などの小説を読んでいたので大体の内容は理解して
いるつもりでいた。しかし、読みすすめるうちそれが大きな間違いである
ことに気づいた。わたしはこの本で初めて「判別できない遺体」の現実を
知ることができた。この現実を未経験者が単なる「想像」で語ることが
どれだけ恥ずかしいものか。「あの事故でしょ、知ってる知ってる」
と軽々しく口にすることがどんなに罰当たりなことか、と反省した。
事故からは25年の歳月が流れている。日本航空が悪いのは事実だろう。
そしてその重役たちが公で裁かれなかったことは今もっても疑問が残る。
この事故は様々な意味で「人災」だったのだ。遺族がマスコミ関係者で
あったことも、遺族が検視する側に回らねばならい異常な事態も。
異常な遺体の惨劇も。戦争さながらのその光景は、その場を「狂気」が
支配していたに違いない。また事故当時は世の中は大変な「狂気」と同時に
「混乱」が生じていたと考えられる。けれど25年という時間はそういった
様々な感情を沈静化させ、「現実」のみを残してくれているように感じた。
そのことをこの本は克明に説いてくれていた気がした。そして今、日本は
東日本大震災という「狂気」の最中にいる。「混乱」は冷静な判断力を
欠き、放射線東京電力のバッシング一直線である。今聞こえてくるのは
専門家の憶測と、自らが「狂気」の渦にはまっていることに気づいて
いない人たちの「一般論」である。また、今現在被災者の心のケアが
重視されており、こうしたあからさまなレポートを敢行できない現実が
あるに違いない。ボランティアに行った知人の話では、「非難所による
のかもしれないが、段ボールハウスから手を伸ばし食事を受け取るきりで、
ほとんど段ボールから出ず話もしてくれない人ばかりだった。
生きる気力をなくしている人がたくさんいた」と話していた。
今起きている未曾有の死者を出したこの大震災を、いつしか25年後
門田さんのように丁寧に回り、語ってくれる人物を熱望する。

★★★★★*95

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