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2011年7月24日 (日)

「そして二人だけになった」 森博嗣

そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫) そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)

著者:森 博嗣
販売元:新潮社
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だいぶ久しぶりの森さんでした。いや、小説をゆっくり読むこと自体が
久しぶりで、とても楽しくいっき読みでした。この本は送別の品で頂いたの
ですが、これをくれたお兄さん的には、「森博嗣の中で一番好き」だ、
そうです。わたしは、なんだろ……やっぱり「フラッタ・リンツ・ライフ」?

全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊。
その内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に科学者、医師、
建築家など6名が集まった。プログラムの異常により、海水に囲まれて
完全な密室と化した「バルブ」内で、次々と起こる殺人。
残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は…。
反転する世界、衝撃の結末。知的企みに満ちた森ワールド、ここに顕現。
(Amazonより)

確かに森ワールドが炸裂していた本だった。森さんは、S&Mシリーズを
始めいろんなシリーズや単発を出しているが、それらの部分部分を、
少しずつ集めたような本だった。はっきりとしたヒーロー・ヒロインの確立、
建築工学を使った物語、トリックの曖昧さ、意味のない(わからない)
完璧な密室殺人、人格の入れ替わり。すべてが揃っている。
わたしは、『スカイ・クロラ』シリーズ以外では、S&Mシリーズの
『封印再度』『数奇にして模型』が好きだが、そうしたこれらは少し偏って
いると思う。『封印再度』は、なんだか伝統呪いの殺人のようだし、
『数奇にして模型』はプラモデルオタクな根性が見え隠れする。
その点この本は、それらの偏りを排除し、より「森博嗣」らしさを感じるな、
と思ったりした。のだが、相変わらずトリックの曖昧さ、意味のない
(わからない)完璧な密室殺人、の部分で、読み終わった後の読後感が
非常によろしくないのが難点。もちろん、トリックに、
「なるほど、そんな仕掛けが!」と伊坂幸太郎ばりの驚きをもったりも
したが、突き詰めてゆくところの「なぜ殺したか」の部分で、
「特に理由はない」といった結末がやってくるので、あぁ森博嗣、と
思うと同時に、もう少し(嘘でもいいから)愛憎劇なんかの殺人理由が
欲しいところだと思った。森さんは人を殺してみる文章を書くのは好きだが
実際のところ人を殺したくないのだろうな、となんだか妙に納得してしまう
ほどの、殺人ながら善良な終わり方をしておりこの本が森博嗣の中で一番好き
と言っていたお兄さんの気持ちが分からないでもないな、と思った。
まぁ、やはりわたしは『フラッタ・リンツ・ライフ』が一番好きですけれども。
つられて、もう一回読みたいなぁ、と思った。

★★★☆☆*85

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