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2011年7月 9日 (土)

「苦役列車」 西村賢太

苦役列車 苦役列車

著者:西村 賢太
販売元:新潮社
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だいぶ前に読み終わっていたので、あらすじを忘れてしまい、Amazonより。
なんだか、これで芥川賞かよ……な、作品でした。というのも、西村さんは
以前に野間文芸新人賞なども受賞されていて、読み終わってからその
あらすじを読んだら、絶対そっちの方が面白いに違いないと思ったから、です。

友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの
港湾労働で生計を立てている十九歳の貫太。或る日彼の生活に変化が
訪れたが…。こんな生活とも云えぬような生活は、一体いつまで続く
のであろうか―。昭和の終わりの青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と因業を
渾身の筆で描き尽くす表題作と「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を収録。
第144回芥川賞受賞。(Amazonより)

わたしの中の芥川賞のイメージは、「新人」に与えられる物であって、
なんだかたくさん本を出している人が受賞すると妙な心持がする。
この本の中では貫太という作者自身と思われる主人公が、極貧生活
(脱出できぬ苦役生活)を強いられ続けるという話なのだが、読んでいると
リアルなストーリーが生々しすぎて、日記もしくは過去回想のような趣を感じた。
西村さんの実生活なのか……? よくわからないけれども。
どことなく太宰治のようでもあり、それでいて作中で暗に太宰治を
貶している部分があって、そのような自分があまり好まない作風を
使用してまで描きたかった物語なのか、と考えるとますます「新人」らしく
なく思え、芥川賞? と頭の中で疑問符がつくのだった。そんなところから
個人的にこの本は「二冊は読みたくない本」だった。あの太宰治を連続で
読み続けると感情が疲弊し、この人はとにかくここに辿り着くんだな、
という極地を感じ取ってしまった時のような、何とも言えない不快なもの
を感じたからだ。人の根底を知ってしまった時の、やっぱり知らない方が
よかったかもしれない、というアレである。他の作品がとても良さそう
なのに、なぜこのような人間の根底を曝け出した泥のような(いい意味でも)
作品が芥川賞に選ばれてしまったのか、作者のイメージを守る上でも、
残念に思った。世間一般の読書の念が薄い層の人間は、「~賞」というと
すぐに手を出し、文句を付ける。賞に選ばれた本が、本人にとっての
傑作かどうかは別にして、勝手に他人に選ばれた作品を、だ。わたしも
この本からではなく、違う作品を読んでから、この本を読みたかった。
他の本を読んだから「苦役列車の貫太」のイメージを払拭できるだろうか。
もしも、次に読んだ一作で払拭できたなら、力量を賞賛し、できなかったら、
二度と読まない。そんな気がするほど強烈な「個人」の曝け出された本だった。
よくも、悪くも。

★★★☆☆*84

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