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2011年6月17日 (金)

「こころ」 夏目漱石

こころ (新潮文庫) こころ (新潮文庫)

著者:夏目 漱石
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


ようやく、あぁ、ようやく本を読む時間が。幸せこの上ないです、はい。
なんだかもうダメなんですよ文字がないと、文字がないと気が狂いそうで。
いや、文字のない時間に気が狂いそうで。とりあえず映画で埋めていた
のですが、やっぱり文字じゃないとダメなんですよ。と夏目漱石。

親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、
自らも死を選ぶ孤独な明治の知識人の内面を描いた作品。
鎌倉の海岸で出会った“先生”という主人公の不思議な魅力にとりつかれた
学生の眼から間接的に主人公が描かれる前半と、
後半の主人公の告白体との対照が効果的で、“我執”の主題を
抑制された透明な文体で展開した後期三部作の終局をなす秀作である。
(Amazonより)

夏目漱石の中でわたしが一番好きな本。まぁ、一般でも、一番知られて
いる作品とも言えるからそういう人が多いかもしれない。『こころ』は
高校の教科書に載っていた。Kが死ぬ場面だったか。読んだときとても
衝撃を受けた思い出があるけど、教科書の一部分としてではなく、
一冊として読んだ時の構成の圧巻ぶりに、平伏した印象の方が強い。
この本は書生主人公の若い青臭い苦悩と「先生」と呼ばれる男の成熟した
どす黒い過去の独白から成り立っている。教科書にはその独白部分のみが
記載されているが、これを習う生徒が書生と同じような年齢と言うことから、
この抜粋はよくマッチしたものだったんだな、と今更ながら思った。
いつ読んでも明確かつ単純、しかし、年長者が若年者に教授する、という
場合において、これ以上素晴らしい構成を未だかつて読んだことがない。
何がよくて惹かれるのか分からない魅力を持つ「先生」を、主人公は慕う。
「先生」は「先生」と呼ばれながらも、何を教えるでもなく、
何も施してはくれない。けれど後に語られる先生の手紙の独白を読むと、
なぜ何もしない人間にあんなにも惹かれたのか、という理由を垣間見る
ことができる。それは人間の「死」である。そしてその「死」を乗り越える、
という人間の根本概念の極地である。人間の命の重さは等しいはずで、
しかしその死に方によって残された人間のこころには、命の重さの差異が
生まれる。生前に欺いた、あるいは陥れた、もしくは裏切った、という
懺悔は、死人に伝える事ができず、怨念以上の深さを持って人間を襲うのだ。
死んだ他人が祟る、のではなく、自らの後悔と懺悔と戒めの念が、
自らを縛り付けるという。それは最大の過ちであって、修正することが
できない。自分の欲望からその怖ろしい選択をしてしまった悔いと懺悔を、
自らの死の覚悟をもって伝えるという凄まじさに、若い書生、
あるいはそのような経験のない人間のこころを揺さぶるのだった。
人間を殺したという自らへの自責の戒めとして死ななくては気がすまない、
他人に裁かれなかった人間の末路はやはり「死」なのだ、と。
「そんなことはない」と反論したいが、けれど「先生」は死に絶え、
存在しないのである。論議の余地は皆無である。だから、他人に裁かれ
なかった人間の末路は「死」だ、という「先生」の論理を覆す事は不可能だ。
その絶望的な衝撃は、いつ読んでもこころを掴み揺さぶる傑作である。

★★★★★*95

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*過去の感想文(2006/7/16)

こころ こころ

著者:夏目 漱石
販売元:新潮社
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夏目さんの最高傑作といっても過言ではないかと。
言わずと知れたこの話、高校の教科書に載っていましたね。
凄く好きなんです、ブログのためにまた読んでしまったくらいです。

人間の心が揺れ動く様を、ここまで美しく描かれた作品はそう無いと思います。
Kを自分の元に呼び寄せ金の工面してやろうと言う親切心と、
呼び寄せてしまった事により、お嬢さんを取られてしまう事を心配する、
「私」の心情が主人公へ宛てた手紙として書かれています。
良心の為、今更Kを追い出すわけにもいかず、
しかしお嬢さんを取られしまうのも耐え難い・・・そう思い、
Kを囃し立てた「私」は、その前にKには内緒にお嬢さんと婚約してしまう。
そしてその後の後悔の念は、Kが生きていれば挽回できたでしょうが、
死んでしまった今はどうする事も出来ない。
Kがそう考えていたかわかりませんが、私はKは死ぬ事によって
「私」に一種の呪いとも言える復讐を掛けたのではと思いました。
勿論、ただKは自分に耐え切れなくなっただけかも知れませんが、
結果的に「私」も導かれる様に自ら命を絶ってしまうからです。
「覚悟? 覚悟ならないこともない」
このKの言葉はドラマや映画で音声を聞いているわけじゃないのに、
なぜかこの言葉は、頭に響いて残っているような感じがしました。
この後、Kは自殺をするわけで、
その覚悟とは、お嬢さんに告白をする覚悟なのか、
お嬢さんの事を好きになるのを止める覚悟なのか、
告白をせずに自殺をする覚悟なのか、このあたりから悩むところです。
まだ「私」は婚約を持ちかける前なので2つ目が有力だと思いますが・・・。
「おれは策略で勝っても人間としては負けたのだ」
「精神的に向上心のない者は馬鹿だ」
この言葉はまさしく人生の教訓みたいですね。
もうお札ではなくなってしまいましたが、
威厳ある日本の文学者の作品としても、
1度は読んで夏目さんの世界に浸ってみるのはいかがでしょう。

ちなみにNHKで10年位前に単発ドラマをやったそうです。
高校の授業で見せてもらいましたが、短い割りになかなか。
残念ながら再放送もDVDも出ていないそうで、かなり貴重な映像のようです。
それを家で録画して10年間も取って置いてくれた先生に感謝です。笑
主人公は確か「ハムの人」でした・・・(名前忘れた・・・役所さん?

*90

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コメント

こころーーーー!

いいよねぇ、キュンとくるよねぇ。
文章ひとつひとつが光ってるよね。
かたくなな明治の男が生きてるよ。

あぁ、あのドラマそんなに貴重映像だったんだ…。
T先生は偉大だったね。彼女は授業中に
「このふたり、後ろから背中けっとばしてやりたい…!」
と明瞭かつ的確な感想を語っていたのが印象的でした。

千円札…漱石も英世もどっちも捨てがたいわ。
いっそ両面(大変だよ)。

投稿: koba | 2006年8月27日 (日) 16:46

こちらもどうも!

いいよ~本当、夏目さんすげぇーや、と感心する本ナンバー1。
いや、勿論「坊っちゃん」だって「我輩は猫である」だっていいんだけど、
やっぱり奥深さの度合いで言ったら、「こころ」だよね。

そうそう、文章が光ってるさ。
最後の章で、先生の手紙の語りだけになる所からが、
素敵な感じでうっとりです。
話し口調で、少し問いかけると言うか、相手に語りかける口調が、
新鮮さと物語の厚みを出してる気がしますな。

貴重だったんですよ、T先生、
「私うっかり取って置いちゃって、ん十年前のお宝映像だけど」
とか何とか言って、受験に暇してた生徒を癒してくれたよ。
T先生はいつも明瞭かつ的確です。
え?この二人の「二人」って誰ですか?
Kと先生?

この間ブックoffで夏目さんのピン札もらったんだ。
なんか今頃夏目さん見て懐かしんだのと同時に、
あまりに皺一つなく綺麗だから、偽札かと心配した次第です。
どうなんだろう、ちょっと心配になってコンビニでさっさと使っちゃったけど。
取っておいたら高値になったろうか・・・。苦笑
両面、捨てがたい。
5千円札を芥川龍之介にするとT先生が非常に喜ぶと思う。

ではでは、またカエルの国にも。

投稿: るい | 2006年8月30日 (水) 03:55

 こんばんは♪
 私も、読み返してみました。

 激しくて、深くて、せつない。
 読み終わって、まだどこか心がざわざわしています。

 TBさせていただきました。
 よろしくお願いします◎

投稿: miyukichi | 2006年9月13日 (水) 23:15

こんばんわTB&コメントありがとうございます。
いいですよねぇ「こころ」!
miyukichiさんも高校生の時に出会ったそうで、私もです。
確かに10P位だったのですが、衝撃できでしたね。
部分的に言うと「先生と遺書」の最後の部分ではありませんでしたか?
私の教科書ではKが「覚悟?覚悟ならない事も無い」
ってセリフあたりからラストまでだったような気がします。
譲れぬ愛と、自尊心と、友情との鬩ぎ合い。
本当、読み終わったあとにも心にじーんとくる良い本です。

こちらからもTBさせて頂きます。よろしくお願いします。

投稿: るい | 2006年9月14日 (木) 17:29

コメント、TB、ありがとうございます。
推理小説みたいな面白さもあって、中学時代、一気に読みました。
「それから」以降を読んだのは、大学に入ってからです。
代助の“食うためには、働かない”という高等遊民に、同調していました。
父親は、「そんな事は、絶対、できない。」と、どこか馬鹿にしていたようですが。

投稿: アッシュ | 2006年9月18日 (月) 09:48

>アッシュさん
ご訪問ありがとうございます。
気づくのが遅くなってすみません;

>名無しさん
コメントありがとうございました。
お名前がなかったため内部でエラーが起きてしまったので、
申し訳ないですがコメントを削除いたしました。
もし今度お書きいただけるときは、
文字を入れていただけると嬉しいです。

ちなみに、漱石は1916没なので、
まだ100年は経っておりません。
「こころ」も死ぬ二年前に書いたものなので、
100年はまだ経っていないと思います。

名作ですね、読書感想文の時期になると、
私もとても読みたくなります。

投稿: るい | 2008年1月 9日 (水) 16:45

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