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2011年5月 8日 (日)

「羊をめぐる冒険 上」 村上春樹

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫) 羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

著者:村上 春樹
販売元:講談社
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そう言えば「1Q84 BOOK3」予約してまで買ったのに、読んでなかったや。
と思ったら急に村上春樹が読みたくなって、本当は「ダンス・ダンス・ダンス」
を読みたかったんだけど、でもやっぱり「ダンス・ダンス・ダンス」読む
なら、ひつじさんから読まなきゃなぁとかいう流れで、この本でございます。

昔の友人の葬式に出た後家に戻ると、部屋には妻がいた。正確に言えば
一ヶ月ほど前に離婚した妻だ。荷物を取りに来たのである。彼女は
少しの挨拶を残し早々に部屋を出て行ってしまった。彼女の出て行った
部屋には、彼女のものは何もなかった。衣類もレコードも本も。アルバムの
中さえ、僕を残し、すべての「彼女」が切り取られていた。元々そこに
彼女なんていなかったかのように、僕の過去は修正された。僕は数ヶ月後に
仕事の関係で、とある女の子と知り合いになった。彼女は、特別な「耳」を
持っていて、僕はその不思議な魅力に引き寄せられたのだった。彼女と
時間を過ごしていると、彼女は突然言った。「今から少しすると電話があるわ」
僕は困惑した。「ひつじのことよ」数分後、部屋には僕の相棒から電話が
かかってきた。「どうせひつじのことだろう」と言うと、空気が張り詰めた。
「なぜ知っているんだ」僕はひつじをめぐる冒険に出ることになった。

なんだかんだ言って村上春樹の本は、大学生の時に全部制覇した記憶がある。
全部読んだことがある、と言いながら、しかも実はハルキストなんて、言い
ながら、実際のところ村上春樹がなぜそこまで世の中に持て囃されるのか
イマイチよく分かっていなかったりする。わたしの頭には難解すぎるのだ。
これがもし、わたしが男だったら、「ハードボイルド」な感じに共感を得て、
それだけで楽しみが増えるのかもしれないが、考えてみて欲しい、
新刊が出るたびに、その本の「読解本」なる本が様々な出版社から発売され、
「え、あの一行にはあんな意味が?!」「そうかだからあれがそれで……」
と言った、「トリックの種明かし」的な事後談を聞く鈍感者の身を。
それを読むたびにわたしは、なんともげんなりした気分になり、自分の中で
得たはずの感情、および、感想が、ことごとくちっぽけで、方向違いである
ように感じるのだった。ということからして、こういった感想についても、
きっと「読解本」なる本がどこかで出版されていて、わたしはそれと
まったく違ったところを賞賛し、あるいは楽しみを十分出来ないまま、
褒めそやしているのではないか、などと愚な考えが先に浮かび、だから
実際のところ村上春樹がなぜそこまで世の中に持て囃されるのか、イマイチ
よく分からないのだった。内田樹先生の「もういちど 村上春樹にご用心」
がこの間出たので、だからそれも読もうか読むまいか迷うところである。
で、感想が押し押しになったが、村上春樹を読んでいて感じるのは、
なんだか自分の人生どうでもよいという気分になる、というものだ。実に
馬鹿馬鹿しい感想だが、本当にそうなのである。この主人公「僕」に
おいても、その僕の「人生」はうっちゃっている。投げやりである。
もうなんでも自分では「どうしようもない圧力」によって封じられ、
今までの人生はもはやなかったも同然の趣がある。しかも羊のために。
馬鹿馬鹿しく、それでいて「やるしかないしょうがなさ」みたいなものが、
本全体に蔓延していて、だから読んでいるこちらとしても、主人公と
同じく人生をうちゃってしまう時が来るかも知れないし、でもそれは、
なんだか「必然」でやってくるんだから、やるしかないんだよね。という
気持ちになる。それってもしかして、「ハードボイルド」ってヤツなんで
しょうか? こんなに本を読んでいるけど、よく「ハードボイルド」の
定義がわからんし。だからそう、とてもいい意味で、村上春樹の本は、
なんだか今の自分の人生がどうでもよいという気分になる、のであった。
だって、次、何起きるかわからんじゃんか。である。やれやれ。だ。

★★★★☆*87

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コメント

こんにちは。
久しぶりにお邪魔しておりました。
私も村上春樹の読者として、とても近い感じがあります。こっちが感じている心地よさに番地や名前など勝手につけないでくれ!みたいな(笑)。
それに、今回これを読んでいて、内田樹のよく使う「召命」というものと村上春樹的世界観がビビビっとつながりました。「まきこまれ型」だけど「必然的」というかたちのぞくぞくするリアリティ。昔から気になっているところでしたもの。
「下=続編」を楽しみにしてます。

投稿: 時折 | 2011年5月15日 (日) 16:54

>時折さん

いやはや、最近わたしも私情で「召命」に遭いました。
いや現在遭ってますと言うべきか……。

一番面白いのは村上春樹自身がその本を読んで
「僕はそんなことこれっぽっちも思っていやしない」
と思うことでしょうねぇ(笑)
内田先生の『もういちど〜』借りてきました。
そちらも楽しみです。

なんだかもういろんなことに、やれやれ、ですよ。
本読みたい欲はそのうち猛烈にやってくるでしょうから大丈夫ですよ。

いつもありがとうございます。

投稿: るい | 2011年5月19日 (木) 23:21

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