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2011年5月23日 (月)

【映画】八日目の蝉

201012030_2 
久しぶりの映画だった。わたし映画好きなんだなぁ、と思った。
映画館で観る映画が。再生できるものがないので、DVDはほとんど
持っていないが、例えばDVDが出ているものでも、リバイバル映画館で
それがやっていたら、迷わずリバイバルを観に行く。それくらい好き。

赤ちゃんを抱え、私は走り出していた。
鍵の掛かっていない家から盗み出した、あの人の子ども。
本当は私が生むはずだった、赤ちゃん。胸に抱いたその顔を見ると、
私は幸福と言う波に襲われた。この子は私が育てる、
絶対に手放したりはしない。そう心に誓った。
本当は連れ出すつもりなどなかった。けれど泣き出した赤ん坊の
声を聞くうち、体は勝手に動いて、どうすることも出来なかった。
もう後戻りは出来ない。私は混乱する頭を抑え、
必死に逃げ、そして生き抜くことを考える。

3年前に単行本で原作を読んだわたしはこう書いている
「子どもを泥棒した女、そして四年後に無事家に帰された子ども。
この話を端的にまとめてしまうとこんな陳腐な言葉になる。
それはあまりに大事件過ぎて、真実味がないし、そもそも、
他人が理解できるような事件ではないからだ。けれども、
この本を読むと、読者は恐ろしい感覚を味わうことになる。
自分も赤ちゃんを盗むかもしれない、と思い始めるのだ。」
しかし、映画では、その部分がとても薄くなっていた。
話の重点は「恵理菜」視点で進められ、小説の第一部であった
希和子は回想形式で登場する。内容は誘拐事件によって
バラバラになってしまった家族と、そんなバラバラの家族に
育てられた誘拐された子どもの成長についてだ。恵理菜は千草
という元・宗教団体の女性と共に、過去誘拐され過ごしていた
場所を巡ってゆく。記憶を取り戻すと同時に、恵理菜自信も
不倫関係の男性との子供を妊娠していることについて考えてゆく。
自分を誘拐した犯人のように、子どもを下ろすのか、それとも
シングルマザーとして育てるのか……。そして、憎んでいたはずの
誘拐犯の愛情を思い出し、涙する。子どもを生むことにする。
と、いうストーリーになっていた。ある意味原作とまったく別物であった。
わたしは第一部の子どもを「誘拐してしまう心境」を実体験する
ような描写に脱帽したのだが、脚本家の奥寺さんが推したのは、
第二部の女同士の共感にポイントを置いたようだった。
不倫して人の夫を取ろうとした女は、堕胎して子どもの出来ない体に
なるのは当然の天罰で、その女は「がらんどう」なのだ、と恵津子は
言いつのる。しかし実際にその立場になった娘・恵理菜は、
それに歯向かうのだ。うーん。なんだかあからさまに「がらんどう」
「がらんどう」言いすぎじゃないのか。あと「八日目の蝉」についても。
何度も話され、なんとなくわざとらしい気がする。とても真摯に
作られた映画であることは分かるのだが。この作品のどこに重点を
置くかでこんなにも変わるんだな、と思う一方で、わたしの脱帽した
部分は薄くなっていたので、どうも残念だった。しかし、本当の親
よりも、子どもが欲しくて欲しくてでも出来なかった他人の方が
子どもを愛してくれる、というのはとても心に響いた。
願わくばずっと、誘拐されていればよかったのに、と。
それにしても永作さんと小池さんの演技は完璧だった。なにも
言うことがない。小池栄子に回ってくるあの奇妙な役たちは、
きっとすべての人間の期待に違いない。今回もとても奇抜な役だった。
そうそう、エンドロールの「角田光代」見逃しませんでしたよ。
書いた側の角田さんからしてみれば、「そうか、わたしの物語の
よさはこちらの面からもあったのか」と思っているのかしらん、
などと僭越ながら考えてみたりした。

★★★☆☆*85

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「八日目の蝉」★★★★☆ 井上真央、永作博美、小池栄子、森口瑤子出演 成島出 監督、 147分、2011年4月29公開 日本,松竹 (原作:原題:八日目の/ 角田光代)                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 「原作の評判が高かったので先に読もうと思っていたが 他に読む本がたまってきたので 映画を先に見ることにして劇場へ、 昨年の「告白」程の衝撃は無いにしても ホ... [続きを読む]

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