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2011年5月11日 (水)

「実験4号」 伊坂幸太郎、山下敦弘

実験4号 実験4号

著者:伊坂 幸太郎,山下 敦弘
販売元:講談社
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だいぶ前に入手していたのに、見ないまま今になっていた。
この本(?)は「小説→映像」と見るか、「映像→小説」と見るかで
大きな違いを生む作品だろう。そう言う意味でのタイトル『実験4号』
と取ってもいいのかもしれない。ちなみにわたしは「小説→映像」

「実験4号 It's a small world」※映像の方
舞台は今から100年後、温暖化のため火星移住計画の進んだ地球――。
地球温暖化を恐れた人間たちは、火星にへのロケットが開発されると、
次々にロケットに乗り込み、移住していった。地球に残された人間は、
ほんの一握りとなり、校長兼教諭のシマ子先生のこの小学校は
全校生徒3名であった。生徒はアビちゃん、ハル、しんちゃん、の
3人の男の子だ。けれども、火星に住んでいる父を持つアビちゃんは、
次のロケットで火星に行くことが決まっていた。明日はアビちゃんの
卒業式、兼、送別会だった。過疎化の進む地球上での別れは、
「寂しさ」はないのか? 普段どおりに進むやんちゃな3人の生活は
だんだん終わりに近づいてゆく。「みんな、ありがとう」

読書本の方に感想を書いてしまうけど、わたしは山下さんの映像の
方が心に響いた。この映像、気づいた方がいるかわからないが、
音楽が一切なかった。聴こえるのは、下手くそな中年バンドの
練習音だけだ。(その下手くそな中年バンドについての内容は、
伊坂幸太郎の小説の中に書かれているのだが)わたしはまず伊坂さんの
『後藤を待ちながら』を読んでから山下さんの『It's a small world』
を観た。設定は共に「舞台は今から100年後、温暖化のため火星移住
計画の進んだ地球」となっているので、伊坂さんの小説を読んだこと
により、その背景設定がより飲み込めた。火星へのロケットは半年に
1回飛ぶこと。移住計画が進み、「東京」に人がまったくといって
いいほどいないこと。ロックが廃れつつあること。小学校には
先生が1人と用務員が1人と生徒が3人しかいないこと。その後観た
『It's a small world』はだからその土台があってなりたった、
『It's a small world』であったと言ってもいい。だから、もしも
小説よりも先に『It's a small world』を観ていたとしたら、
火星へのロケットは半年に1回飛ぶこと。移住計画が進み、
「東京」に人がまったくといっていいほどいないこと。ロックが
廃れつつあること。小学校には先生が1人と用務員が1人と生徒が3人
しかいないこと。などがわからず映像を突きつけられたわけで、
だからもっと違った感想を得ただろうと思った。伊坂さんの小説は
単独で読むと何だかとても虚しい気分になる。重要と推される会話が
どれも誰かの言葉のであるからだ。(THEピースの)引用だらけの
文字群に、小説を目的として読んだ人間にとっては、伊坂味が伺えず
なんだか空振りを食らった感じだった。けれども、山下さんの
『It's a small world』を観てからは、文字の、文章の、意味・重要性
というものを突きつけられた気がした。読んでいて知っていたから、
得られた感情の多さに驚いたのである。まぁそれを差し引いても、
『It's a small world』はとてもいい映画だった。別れ際、淡々と
こなす別れの作業。そこには寂しさを失った子どもであるようで、
しかし、残っている僅かな感情がそわそわと動き出しどうしても、
「みんな、ありがとう」しか言えなくなる胸の詰まる思いを、
最大限に表現していた。映像は凄いなぁ、と思った。それは、
「小説→映像」にしたからかもしれない。「映像→小説」をやったら
小説は凄いと思い、終わったかもしれない。どちらを先にみるか。
最大の選択である。それこそ『実験4号』と呼ぶんだろう。

★★★★☆*89

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