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2011年4月15日 (金)

「下流志向」 内田樹

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫) 下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

著者:内田 樹
販売元:講談社
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「論破」という言葉は、この人のために存在するのではないか、と思う。
あまりこういった思想学書を読んで「面白かった」「ためになった」
と思うことはないのだが、内田さんは別格だ。現在、日本はいい国ではない。
誰が見ても明確である。「警笛」を鳴らす誰か、もっと他にいないのか。

なぜ日本の子どもたちは勉強を、若者は仕事をしなくなったのか。
だれもが目を背けたいこの事実を、真っ向から受け止めて、
鮮やかに解き明かす怪書。「自己決定論」はどこが間違いなのか?
「格差」の正体とは何か? 目からウロコの教育論。
「勉強って何に役立つの?」とはもう言わせない。
(Amazonより)

最初に注意しておくと、この本に結論はない。「下流志向」に陥った人びと
について、「~したらいい」「~すべき」ということは一切語られていない。
ただ、今の日本は危ないのです。どう危ないか教えてあげましょう、という
本である。しかし、今の世の中でその危なさを、熱意持って語っている人を
他に見ない気がする。本の中にも出てくるが、「見ないふり」を決め込む、
もしくはスルーしてなかったことにする、という世の中が定着しているからだ。
中身は、これでもか、という内田論。痛快である。内田さんの論理は、
まるで「おせち料理」と「ビーフシチュー」を足して2で割ると、
「とんこつラーメン」が出来るんです。と言われたような衝撃がある。
この本は特にそれを感じた気がした。最近ニートが増えているのは、
「学びを放棄」した子どもたちが増えているからだ。なぜ学びを放棄して
しまうのかは、実は学校がどうこう、とか、就職支援がどうこう、とか、
そういった上辺のことではない。簡単に言ってしまえば、
「子どもの時に家のお手伝いをしなかった」ことが原因であるというのだ。
まさしくここで「とんこつラーメン」である。現代の子どもの時にお手伝いを
しなかった。掃除は掃除機があるし、料理だってレトルトなどもある。
家事というものが格段に軽減されたため、何もせず育った子どもは、
何もせずいきなり小遣いを貰い、欲しい物を買うようになる。子どもは、
「労働者」として入学する前に、「消費者」として入学してしまったが
ために、学業すらも、「消費者」として進む道を歩んでしまった、という
のであった。ははぁなるほど。である。(詳しい論破は本書を読むのがいい)
そうか、だからわたしは学びを放棄する団体に組み込まれていたのか、と
思わず膝を打った、というのが第一だった。わたしの中学校はそれはそれは
酷い中学校だったので(以下省略)。でも、それがなぜそうなってしまったか
などという根本的なことを考えなかった。この本を読むまでも考えて
いなかった。お得意の「見ないふり」である。ニートが増え続けるのは、
非常に悪いことだ、と言いながら、なぜみんな研究しないのだろう。悪い
悪い、と言いながら、頓珍漢な策を述べるばかりで、世の中の状態を
一度冷静に把握するということをしない。これからどうするか、も大切だが、
なぜそうなってしまったのか、を振り返り現在を見渡すのも重要な課題
だと思うのだった。それが例えびっくりな「とんこつラーメン」論破で
あったとしても、「なるほど!そういう考え方もあるね」という一理に
なり得るのである。今はその一理が限りなく少ないのだ。これではまともな
論争すらできないだろうに。この本はだから、「今の世の中はこうだと思う」
という内田流の一理である。絶賛、大賛成な訳ではないが、とても楽しい。
なにせ、「おせち料理」と「ビーフシチュー」を足して2で割ると、
「とんこつラーメン」が出来るのだから。一読の価値大いにあり。
内田さんは現代の夏目漱石になって欲しい(いやもうなっている?)。
まぁそれこそが「永遠の師」なのかもしれないが。それにしても、ニートって
何をしているのだろうと思う。わたしは何かをしていないと気がすまない
人間なので、例えば本を読むにしてもお金と行動力が必要である。
と考えると、引きこもり、という人種は未だに未知な生物だと思う。
ある種の新種の人間である気もする。彼らと共に日本は死ぬだろうか。

★★★★★*91

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コメント

こんばんは。
内田センセイの本を読んでいるほどに痛快な感想でした。そうそう!と昂ぶってくるものすらありました。

>内田さんの論理は、まるで「おせち料理」と「ビーフシチュー」を足して2で割ると、「とんこつラーメン」が出来るんです。と言われたような衝撃がある。

私こそばちんとひざを打ちました。
個人的には「等価交換」というキーワードで現代の病巣を見事に摘出してくれたあたりが特に印象的です。そのとき、私は「等価交換」が嫌いだったんだ!と思わせられましたもの。
また、読書の感動を伺いに参ります。

投稿: 時折 | 2011年4月18日 (月) 17:45

>時折さん

こんにちわ~
あんまり面白かったもので、つい昂ぶって書いてしまいました。
ありがとうございます。
本当、生きている人の中で一番好きな論破かもしれない、
と思います。是非とも大学で講義を受けてみたいものです。

「とんこつラーメン」は読んでる前半で思いつきました。
それくらいショッキングだったのだと思います。
自分のカテゴリじゃない人が見たこちら側のカテゴリ、
「自分」と「他人」の「他人」から、「そこが悪いんだよ」
と指摘された気がしました。その通りだと思いました(笑)

確かに「等価交換」も重要ですよね、即時交換、無時間交換、
なるほど、取引が遅くなればなるほどイライラするし、
これも指摘通り。また「とんこつラーメン」だ、と思いました。

高橋源一郎さんとの対談本が気になっているので、
近々読めたら……と思います。しかし図書館の予約がいっぱいすぎて
困ります。内田さんの文庫は、比較的買う方ですけれども。

投稿: るい | 2011年4月19日 (火) 10:41

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下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち著者:内田 樹販売元:講談社発売日:2007-01-31おすすめ度:クチコミを見る 「時間的」というターム。 内容(「BOOK」データベース ... [続きを読む]

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