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2011年3月16日 (水)

「ルパンの消息」 横山秀夫

ルパンの消息 (光文社文庫) ルパンの消息 (光文社文庫)

著者:横山 秀夫
販売元:光文社
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久しぶりに横山さん。1年ぶり。この本読んだと思っていたのに、読んでいな
かった。わーお、デビュー作にして、これ、この筆力!さすがと言わざるを
得ない。新聞記者ってすごい職業なんだなぁ、って思う。そもそも、物語とか
そういう云々を抜きにして文章が既に読みやすく、物凄く人を引きつける。

十五年前、自殺とされた女性教師の墜落死は、実は殺人事件だった。
警視庁に入った謎のタレコミによって、署内には緊張が走った。
なぜならその事件の時効が明日の0時までであったからだ。当時の
事件の容疑者だと思われる人物を、片っ端から集めた。初めに呼ばれた
喜多が告白し始めたのは、同級生の悪ガキ三人で仕組んだ『ルパン作戦』
という、試験問題を盗みだす作戦についてだった。テストの前日の深夜
校舎に潜り込み、校長室の金庫から、翌日のテスト用紙を盗み出す。
成績を上げようという邪な考えではなく、ただ単に、試験問題を盗む、
という怪盗のような行動を行ってみたかったからだった。試験期間は
順調にすぎ、いよいよ最終日になった日、三人が金庫を開けると、
金庫の中には女性教師の死体があった――。慌てて逃げる三人だが、
逃げる途中、他にも逃げてゆく人影を見ていた。そいつが犯人なのか?
そもそも女性教師は墜落死ではなかったのか?謎は謎を呼び「ルパン」
の名をより怪しく導き出す。

面白かったー!と久々に両手ばなしして読み終わった本だった。
ぐちゃぐちゃした謎がほぐれ、なるほど!という結末。これを
時効まで1日の中にぎゅっと凝縮したことによって、とてもタイトながら、
ハラハラ、ドキドキ、最後まで読み手を放さない力があった。
そして何より、文章の読みやすさ。脱帽である。中学生の時の現代文
なんかで、「文節」とか「修飾語の正しい位置」とか、習った気がしたが、
わたしたちはそんなことはすっかり忘れてしまっている。横山さんの
文章は、とても正しくて、まるで教科書のような読みやすさだった。
この読みやすい文章で、まさか小説が読めてしまうなんて、とある意味、
画期的な感じだった。教科書でありながら、キャラクターも生きている。
デビュー作ということもあり(とはいっても結構改稿されてはいるようだが)、
飾らない文章が、余計に新鮮で、浮かび上がった生き生きとした人物たちが、
十五年という歳月を教えてくれた気がした。ただ、物語の中に、
三億円事件の犯人について、ひつように書かれているのが、少しミスマッチ
な気がした。わたしは生まれていないが、(調べたら1968年の事件だった)
そのあらすじくらいは知っている。警察や新聞記者は、そうとう悔しい思い
をしたのだろうな、とも、うかがい知る事が出来る。それを「立て看板的」
に引用する事で、未解決事件の解決達成を描きたかったのだろうが、
三億円事件はまったくの謎が多すぎて……というのが有名である。
別にここで三億円事件を推さなくても十分面白い物語だったろうなぁ、
とも思ったりした。するすると導き出される結末、そして幸子の正体。
不覚にもうるうるしてしまう後半、してやられたラスト。デビュー作、
にこれですか。な一品。一読の価値あり。横山さんはやっぱり長編が
いいと思うのだけどなぁ。あ、ぜんぜん関係ないけどなんだか突然乙一の
『夏と花火とわたしの死体』を再読したくなった。これもデビュー作。

★★★★★*89

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