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2011年3月30日 (水)

「名探偵の掟」 東野圭吾

名探偵の掟 (講談社文庫) 名探偵の掟 (講談社文庫)

著者:東野 圭吾
販売元:講談社
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毎年なんだかんだ言って、一番読んでしまう東野圭吾。この人の本は、
「お茶請け」的である。と言うと多方面から反感を買いそうだが、
「とても面白いことは滅多にないがとても詰まらないことも滅多にない作家」
だと思う。やはり反感を買いそうだ。それにしてもやりすぎだよ東野さん。

「第一章 密室宣言――トリックの王様」
「警部、事件であります。奈落村で殺人事件が起きました」
布団の中にいた私の元へ、お決まりの電話がかかってきた。当直刑事の
うろたえる声が耳に飛び込んでくる。ミステリ小説では極めてありがちな
出だしである。私は早速部下を連れてジープに乗り込み、奈落村へ向かった。
村にはよぼよぼの巡査しかいないと言う。これでは無法地帯も同然だ。
私が死亡した作蔵という男の家を調べていると、野次馬の中から、
よれよれのスーツにもじゃもじゃ頭という変な格好の男がステッキを
持ってやってきた。このシリーズの主人公、天下一大吾郎だ。
「また君か。なぜこんなところにいる?」私はお決まりのセリフを述べた。
「それより大河原警部、この事件はどうやら、『あれ』のようですよ」
「『あれ』なのか」……閉ざされた雪深い農村で起きた殺人事件。
雪の上の足跡は、第一発見者の鉄吉のものしかない。これは、もしかして、
禁断の、『あれ』……み、みみっし……いや、読んでからの方がよろしい。

そもそも「ミステリ」という書物は、人間にとっての最大の娯楽ではないか
とわたしは密かに思っている。現実社会で人を殺してしまうと、残念なことに
警察のお世話になってしまうので、その鬱憤を晴らすために、これらを、
読むのではないか、と思うのである。ことに、最近のミステリは、もはや
「ネタ切れ」状態である。とっても面白いミステリは、遠い昔にアガサ・
クリスティやアーサー・コナン・ドイルが書いてくれているので、
もはや、今からそれらを超える名作を作り出すのは不可能ではないか、
と考えられる。その結果、そのミステリ作家の混迷の結果、生まれたのが、
この本と言ってもいいだろう。東野さんは、意欲的にいろいろなパターンを
描く作家である。『十字屋敷のピエロ』や『むかし僕が死んだ家
仮面山荘殺人事件』『私が彼を殺した』などなど、いろいろな「トリック」
を駆使した作品を作り出している。どれも東野圭吾色。まさしくミステリを
作り上げており、感嘆、ではあるが、しかしそれらの「トリック」の、
ネタ元を辿れば、いつかどこかで誰かが書いたようなミステリなのである。
「女が宙に浮く手品を何度も見せられて、「トリック」が違うんです、
などと言われても、誰も喜ばない」と言うようなことがどこかに書かれて
いたが、自分たちを失笑するにもほどがある……痛々しすぎて泣けそうだった。
いや、物語は、実に滑稽極まりなく書かれているのだが、「どんなに
頑張ったってすでにすごい作品がたくさんあるからもう仕方ないのさ!」
といった開き直りを感じるのだった。確かに、そうだと思いますよ、東野さん。
しかし、やっぱりミステリを求めている人間がいるからには、「新しい」
何かを描かなければならないわけで。だから『容疑者Xの献身』のように
人情に迫るか、堤幸彦監督の『TRICK―トリック』のように、テーマは、
もはや「定番」でよろしい、ギャグすら吹き飛ばすありえない「トリック」
でゆくか、という2パターンにわかれるような気がする。この本は、
そのどちらとしても描かれておらず、そのようなミステリ界を俯瞰して
笑うためのものである。エッセイか解説本でもいいんじゃないの? な、
あきれるほどの失笑と、あきれるほどの苦悩を鑑みて、「作家って大変だな、
っていうか「新しい」っていう定義がそもそも……」とか同情する始末だった。
『黒笑小説』とか、そんなんですね、もはや。やりすぎです。
そう言えば、このドラマ見たかも。松田弟の出てるやつ。あれがそうだったのか?

★★★☆☆*83

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