« 「彼岸過迄」 夏目漱石 | トップページ | ■雑談:死と向き合うことについて »

2011年3月23日 (水)

「私の個人主義」 夏目漱石

私の個人主義 (講談社学術文庫 271) 私の個人主義 (講談社学術文庫 271)

著者:夏目 漱石
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


夏目漱石を連続で読みまくる。わたしにとって非常に危険な状態で
あると同時に、手に取るのが太宰治じゃなくてよかったなぁという
後の祭り、且つ終り良ければすべてよし的な気分を伴った妙な安心感を
得ながら高揚で満たされている。あぁ夏目さんありがとう。

漱石の根本思想たる近代個人主義の考え方を論じた「私の個人主義」、
先見に富む優れた文明批評の「現代日本の開化」、他に「道楽と職業」
「中味と形式」「文芸と道徳」など魅力あふれる5つの講演を収録。
(Amazonより)

手に取ったのが太宰治だったらどうなっていたのか、ということについては、
ここではあまり考えないことにする。久しぶりに読んだ「私の個人主義」は、
こんな気分だからかとても体の内内に響いた。つくづく思うが、
この本は戦前に書かれた本である。あたり前である、夏目漱石は
戦前の人なのだから。もしも、(もしも、なんてことはないに
決まっているのだが、)夏目漱石が戦争を生きた人だったら、
今はどう変わっていただろうと、思って止まない。まだ海外に行くにも
困難な時代にイギリスという先進国を目の当たりにし、素晴らしいと
褒め称えながらも、影響されることはないと首を振る。これは私の
個人主義、と称しながらも、挑戦しないことには、一生を不愉快に
生きるのはお前だ、と脅しいる。その卑下ているようで、誇っている
ようで、あるいはこう脅しているその巧みな言葉たちは、現代の
わたしたちをも奮い立たせる力を持っている。自己本位に生きるべきだ。
やりたいことを無我夢中で探し当て、こだわりを踏み潰すまで
歩きつくせ。とつとつと、語られる冷静な語りのうしろには、
轟々としたそれこそ、夏目漱石の夏目漱石たる自己本位を感じるの
だった。だから君たちも、自己本位に生きろと。人は考えすぎると、
神経衰弱になる。夏目漱石もまた神経衰弱になり、この神経衰弱
という言葉は、彼の小説にまるで慣用句のように出てくる。でも、
それを突き抜けろ、と彼は言う。この本を読んでいると、
「はい、突き抜けてみせます」と何の衒いもなく答えたくなる。
何の躊躇もなく、そう思うのである。そのあとのごちゃごちゃとした、
いろいろな面倒なことを考えるのは、それからでいいのだ。
突き抜けることこそが自分のための自己本位であり、そして、
それを他人に認めることが、国を立たせるためのすべてであると。
突き抜けて見せます、と赤シャツ先生に生きているうちに言いたかった。
生まれる時代を間違えたと思いつつ、女である以上それ以下である気もする。

★★★★★*95

|

« 「彼岸過迄」 夏目漱石 | トップページ | ■雑談:死と向き合うことについて »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/39352871

この記事へのトラックバック一覧です: 「私の個人主義」 夏目漱石:

« 「彼岸過迄」 夏目漱石 | トップページ | ■雑談:死と向き合うことについて »