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2011年3月 4日 (金)

「DZ」 小笠原慧

DZ(ディーズィー) (角川文庫) DZ(ディーズィー) (角川文庫)

著者:小笠原 慧
販売元:角川書店
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DZってそういう意味だったのかふむふむ。mihoさんにご紹介いただいたので
読みました。どうもありがとうございます。初めに書いておきますが、
わたしは高校の、生物の授業がことのほか嫌いでした。先生が、大嫌いで。笑
それと生生しくて。知れば知るほど、自分が何なのかわからなくなる気がして。

アメリカ・ペンシルベニア州で、夫婦の冷凍死体が発見された。頭部を
撲殺されたのち、冷蔵庫に押し込められていたのである。殺害された
2人の他に、彼らの子どもがいるはずであったが、行方不明だった。
夫婦は人里はなれた場所で暮らしており、交友関係もまったくの疎遠で
あったため、事件は迷宮入りしていた。定年を迎え、この事件を最後に
担当したスネルは、諦めきれず、ひとり捜査を再開した。一方日本では、
重篤障害児施設で、目覚ましい発見があった。自閉症の原因とも言われる、
遺伝子レベルの型で、今までにないものを見つけたのだ。「人間」として
生きることを許されず、監獄のような場所で暮らす重篤患者たち。凄惨な
現実の隙間に見える人間的な希望は果たして遺伝子を超えるのか。
殺人をも厭わない遺伝子の進化とは……。

第二十回横溝正史賞正賞受賞作だった。読み終わって、ページを繰ったら、
綾辻さんに内田さんに北村さんに宮部さん……、横溝正史賞ってこんな
方々で選ばれていたんだ、とどうでもいいところで衝撃を受けた。まぁ、
生きている人が誰かを賞すわけだから、いろいろな意味で何を言っても、
しかたがないことである。中身は、少々詰め込みすぎ感が漂う感じ。
まるで桐野夏生の『顔に降りかかる雨』のようなごちゃごちゃぶりが、
なんとなくデビュー作だろうな、という雰囲気を醸し出していて、案の定
そうだった。タイトルを改名してまで強調した、『DZ』二卵性双生児
にまつわる、遺伝子学的な内容は圧巻で、読み手をぐいぐいとひっぱって
くれた。しかし、裏を返せば専門学的過ぎて、圧巻過ぎたとも言える。
上にも述べたように、わたしは「生物」という学問と「遺伝子」について
あまり興味のない人間だったので、内容が濃すぎてついていけず、
新しい遺伝子の発見の凄さについて語られている部分や、その凄さに
驚嘆し歓喜ている登場人物の心境を上手く理解できなかったように思う。
「新しい生物の誕生の神秘」についてとても興味をそそられる一方で、
難解な説明を楽しげに語る登場人物になぜか興ざめしてしまうのだった。
もう少し、読者に親切に……いや、無知な自分が悪いのか。一方、難解な
生物学が繰り広げられる中、物語をぐるぐる引っ掻き回すように、
サスペンスが組み込まれている。生物学であっぷあっぷしているところに、
スネルさんは親身になってやってきて、頭の中をさらに謎に包んでくれた。
ある意味では最良であり、ある意味では最悪だった。結論から言うと、
「生物学」や「遺伝子」や「人類進化学」にとても興味のある人間が
読む場合、このスネルさんは「最良」の効果を齎す。反対に、それらに
あまり興味がない、もしくは少しだけ知りたい、といった消極的な読者には、
スネルさんの存在は「最悪」だった。どこかをもう少しいじったら、
均等のとれたスネルさんになっただろうに、と残念である。たぶんそれは、
「生物学」的な部分で読者に親身でないからだろう。例えば、人間
(主人公や登場人物)の遺伝子は「こんな」だ、とか、具体的な興味の
取っ掛かりが必要だったのでは、とか。あと、国を跨がないとか初歩的な。
あとなぜグエンだけか超人的だったのか、などの面白い話とか。
それにしてもダウン症や自閉症の患者が、人類の進化の犠牲者なのか?
という京子の問いには、とても考えさせられるものがあった。説明にも、
不合理で不慈悲にも確かに頷いてしまいそうな部分があり、もっと、
この部分を押して書けばよかったのになぁ、などと僭越にももったいなく思った。
自分からは絶対に読まない本でしたので、ご紹介頂き感謝いたします。

★★★☆☆*85

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