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2011年1月17日 (月)

「Rのつく月には気をつけよう」 石持浅海

Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫) Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)

著者:石持 浅海
販売元:祥伝社
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やーらーれーたー……!な、一冊でした。ネタバレしますので、
読みたくない方は読まないようにお願いします。石持さん久しぶり。
「顔のない敵」の後になんか読んだ気がするけど、感想書かずにいたら、
すっかり忘れました。なんだっけなぁ、何読んだんだったかなぁ……。

「夢のかけら 麺のかけら」
わたし、湯浅夏美と熊井渚、それから長江高明の3人は、大学卒業後の今も
時折飲み会を開く。場所はいつも長江の綺麗なワンルームマンションで、
熊井とわたしは酒やゲストを用意する。そう、この飲み会のポイントは、
3人の他に、誰か1人ゲストを呼ぶことである。いつもの3人では何か
物足りないし、ゲストを加えることで話の幅が広がる、一石二鳥である。
今回のゲストは熊井の知人である塚本。塚本は酒のつまみにチキンラーメンを
砕き食べるという。斬新な食べ方に興味をそそられた3人は、彼を呼ぶ
ことにしたのだった。もちろん、酒のつまみはチキンラーメンだ。
チキンラーメンにちなんだ塚本の話は、昔、彼女と喧嘩した思い出話へと
転じた。チキンラーメンを散らかした塚本が彼女に怒られた、というのだ。
話を聞くうち、頭脳明晰な長江が口を挟んだ。塚本の彼女が怒ったのには、
理由があると言い出すのだが……。

連続短編集。1人の登場人物が毎度入れ替わる飽きないシステムで
どれも楽しく読み終えた。石持さんは、みんなでわいわいやる話がとても
上手い。で、会話が滑らかで上質だ。今回はその石持さんの得意とする、
空論推理が生かされて、なるほどよく考えられた設定だと思った。
また終始「宅飲み」というなんともアットホームな状況の中行われるので、
日常のちょっとした謎解きにはもってこい。面白さを存分に味わうことが
出来た。些細な気持ちの行き違いや、思い込み、誤解などを、長江が
するする解いてゆくさまはとても気持ちよく、解けたときの「なるほどね~」
という和みがよい。もちろん宅飲みで語られる軽い話だからこその、
「なるほどね~」で、事件ものに発展しない穏やかさがなんとも珍しく
こんなのもいいね、と思った。むしろこっちの方がいいじゃん、みたいな。笑
本の中には、酒と一緒に美味そうな料理が出てくるが、料理の表現方法が
なんとも石持さんらしくて笑った。いや、いい意味も含めて。なんとなし
ミステリな人間の表現方法、絶対料理のコメンテーターにはなれないだろう、
とか失礼なことを考えたりした。これからもミステリを書いていただければ
と思います。で、何より、騙された、だった。最後の章を読み終えたとき、
「あーあ、やられた」の一言しか出なかった。こんなに綺麗にひっかかった
のも久しぶりだった。どれもこれも、このアットホームで和やかな雰囲気に
流されてしまったからだろう。今はもう一度読み直すつもりはないけど、
たぶん「わたし」「俺」という言葉は最初から使っていないんだろうな、
とか思うと、こっそり仕掛けられた、しかし芯の通った罠に、悔しい気持ち
でいっぱいである。最後の最後にぴりりと〆ていただき、この上なし。
まったり読みたいときに是非とも。人の死なないまろやかなミステリです。

★★★★☆*87

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