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2011年1月19日 (水)

「ぼくとネモ号と彼女たち」 角田光代

ぼくとネモ号と彼女たち (河出文庫) ぼくとネモ号と彼女たち (河出文庫)

著者:角田 光代
販売元:河出書房新社
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ところで、昔よく見に行っていたブログ(ほとんど読書ブログ)をぶらぶら
数年ぶりに見て回ってみたら、ほぼ全滅していて切なくなった。うーん。
リアル友人のブログも全滅。みんなmixiとかはやってるのかな?うーん。
かくゆうわたしがmixiとか放置なんでなんも言えないが。世の中いろいろ。

免許を取って中古のシビックを買ったぼくは、車を友人に見せて回ることに
した。なんと言っても「自分の車」。それだけでわくわくして、とにかく
みんなに自慢したかったのである。しかし、みんなの反応はいまいちだった。
ぼくにとっては念願の車であっても、みんなにとってはただの中古の
シビックでしかない。誰も彼も「へぇ、車で来たんだ。で?」って感じで、
ちっとも驚いてはくれなかった。だんだん腹が立ったぼくは、だから春香の
元へ車を見せに行くなんていう間違いを犯してしまった。春香は中古の
シビックを見てぼくを褒め称えた。その上車に乗せて欲しいといい、
着替えを持って乗り込んできたのである。そもそも車を自慢したいだけ
だったぼくにはどこにも行くあてなどなかった。今更ひっこみのつかなくなった
ぼくは、春香とあてのないドライブに出かけることになるのだが……。

なんとも珍しいタイプの本だった。なんと角田さんがヒッピーではない
のである。いつもだったら物語の中で密かに、いや堂々とヒッピーな
素晴らしさを熱く語ってくれる角田さんだが、この本ではなんと、
まだヒッピーに成り切れていないようなのだった。ヒッピーになったら
楽しいだろう、という羨望を描きならも、自分ではまだ踏ん切りが
つかず、ヒッピーの世界には足を踏み入れられていない。そのもどかしく
初々しい様子が、「ぼく」を通して描かれていた。たぶんこの本は
とても初出が早いのではないだろうか。文庫になるのが遅かったようである。
いろいろ充足し、『東京ゲストハウス』とか、ヒッピーまみれの角田さんの
濃い世界を知っている身としては、新鮮で、「こういうのもいいじゃん!」
と言う感じだった。でも、もう書けないだろうとも思う。知る前の、
「無知な好奇心」みたいなものがとても自然で、やはりその部分が、
この本の一番の魅力であるように思った。本の中で凝り固まった思考を
もっていた主人公は、最後に乗せた女の開放的な思考に衝撃を受ける。
沖縄までヒッチハイクで行くという、それだけでも無謀な行動の上に、
自由な喜びを垣間見て、羨ましいと思う。しかし、ヒッチハイクをし、
ゲームをしているのを羨ましいと思うのではないのだ。それらの行動をして、
楽しんでいる満ち足りる、という精神の充足が、なんとも魅力的に映るのである。
だけど、万人が同じ行動をして楽しいわけではない。自分の中の、「それ」
を見つけたいという欲求が、とてもストレートに、角田さんにしては
そこらへんも珍しく、書かれていた。住めば都とはよく言ったもので。
どんな環境であっても、それが、そこが、楽しくて仕方のない場所なら、
自分にとっては十分であると。気づいていれば後悔はしないのかもしれない。

★★★★☆*89

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コメント

こんにちは。
実はるいさんのとこでこれを拝見して、
「えええっ、未読の角田さん作品があった!」と
喜んで読んだのでした。
(いい復習となりました)
でも、「ヒッピー以前」の段階だというのは本当にそのとおりですね(どうしてそういうふうに読めなかったのか?)。
そう考えると、角田さんの世界において、
この作品は、その後の世界に欠かせない乗り物としての「ネモ号」を手に入れたという意味では、記念碑的な作品だといえるのかも。だからこその改題なのかも、後で振り返ってみてどうしても改題したくなったのかもと、想像は膨らんでいきました。

投稿: 時折 | 2011年2月 1日 (火) 12:20

>時折さん

こんばんわ~。
ごめんなさい(笑)書いておけばよかったですね。
解説に書かれてましたよね。
そうそう、改題は嫌ですよねぇ……間違えるから。
でも変えたかったんだろうな、と思うと、
しかたがないですね。その方がいいと思ったわけですから。

>この作品は、その後の世界に欠かせない乗り物としての「ネモ号」を手に入れたという意味では、記念碑的な作品だといえるのかも。

この表現いいですね。
ネモ号わたしも欲しいですわ。

それにしても時折さんは角田さんを全制覇したんですね!
すごいや~。わたしも頑張ろう(笑)

またお邪魔しますね。

投稿: るい | 2011年2月 8日 (火) 21:44

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