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2011年1月18日 (火)

「さまよう刃」 東野圭吾

さまよう刃 (角川文庫) さまよう刃 (角川文庫)

著者:東野 圭吾
販売元:角川グループパブリッシング
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ん?……うーん?……うーん……。なんとも言いがたい本だった。先日
高野さんの正確な知識ががっちり詰め込まれた「13階段」を読んでしまった
ので、余計に陳腐さを感じてしまったのがこのもやもやの原因かも。
しかしまぁ、人気作家が行うべくは、王道で正しい事を投げかけることかと。

お祭りの夜、長峰の一人娘・絵摩は2人の男に襲われた。2人は一人歩きの
女性を狙ってレイプを繰り返す卑劣な奴らだった。男たちは絵摩を
レイプした後解放するつもりだったが、クスリを投与したときのショックで
彼女が死亡してしまったため、死体を川に流す事にした。死体は見つかると
すぐさま事件はニュースになり、マスコミの注目の的になった。
一人娘を失った長峰は、絶叫した。身を引き裂かれるほどの感情が長峰を
襲い、残ったのは犯人への憎悪だった。しかし、犯人とされる2人の男は、
未成年であるとされていた。未成年はどんなに悪い事をしても罪が軽くなる。
例え大人であれば死刑を求刑される犯罪であっても、未成年と言うだけで、
無期懲役、あるいは軽い執行猶予で済んでしまうのである。そのことは、
長峰をさらに苦しめた。そんな時、長峰の元に謎の人物から密告の電話が
かかってきた。逃走中のレイプ犯の所在を知らせる内容だった。長峰は
訝しがりながらも、自ら犯人を懲らしめようと現場に向かうのだが……。

王道の王道。法学部で「刑事政策」を取った場合、ここを押さえておけば、
まぁ単位は取れるでしょう、な部分である。実際の授業の内容でいくと、
グレイゾーンなるものがあり、19歳~20歳までの少年は20歳1ヶ月の少年と
どう違うのか、などと言う細かい論争に発展してゆくのだが、この本では
一切その部分は語られない。警察がたっぷり出てきているのだから、
もう少し語られてもいいのではないか、と思わなくもないが、そう言った
少年法のおかしさ、よりも、マスコミのおかしさ、の部分を描きたかったようで
途中からマスコミについてに流れてゆく。ちなみにマスコミについては、
「マス・コミュニケーション論」という授業で、プライバシーの権利など
を学ぶことが出来る。これについてもグレイゾーンなるものが存在するが、
この本では一切その部分は語られない。一般の人間が「それっておかしい
でしょう」と思う内容の「上澄み」の部分を上手く利用した物語だった。
というわけで、まったく法律的な深みがなかった。だけど、法学を
学ぶ機会のなかった人たちが読むのだったら、まさに疑問と思っていると
ころを描いてくれている訳で、人気作家・東野圭吾が行うべくはこのような、
「あるある」な「わたしがこんな状況にあったら我慢できない」といった
ような、状況を上手く描き賛同を得ることなのだろうか?と思ったりもした。
でもなぁ、ここでぐぐっと法律的な知識で「なるほど!」ていう部分が
あったら、すごく面白かったと思うのだけど。500Pもあるし、懇親の作で
あるのはよく分かるのだが、惜しいなぁと思う気持ちが先に来てしまった。
そう言えばこの本は7年前の本だが、今の時代、携帯電話の電源を入れる
だけで、GPS機能が作動し、一体どこにいるのか分かってしまうようだ。
この本ではGPSも、着信履歴もまったく捜査されないが、なんとも便利な
世の中になったものだと思う。これで犯罪が減らないってどういうことよ、
とか思いますがね。云々。結論、少年法は難しい。え、そこかよ。みたいな。
少年法の面白さはそこじゃない気がするんだよね。とか。云々。

★★★☆☆*86

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