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2011年1月12日 (水)

「ほどけるとける」 大島真寿美

02690683
大島さん初めてかも? アンソロジーでは読んだことがあたような気が
するのだけど、大島さんと思って読むのは初めてだった。なんとも
言えない、この絶妙な惰性。なんなんでしょうねぇ、こう気だるくて
何とかしろよって言いたくて、でも自分でもやりそうなそんな感じ。

高校を辞めたので、おじいちゃんの経営する銭湯でアルバイトをして
いる。銭湯にはいろんなお客さんが来て、気の使いあいや噂話が耐えない。
そんな場所から逃れるために高校を辞めたはずなのに、あたしはまた
同じような場所に居座っているような気がするのだった。そんなある日
あたしは一人のお客さんに恋に落ちた。何だか見ていると、その人の
姿だけが、3Dとなって立体に見える。だんだん気になってくるものの、
声をかけるタイミングもないまま、時間は過ぎてゆくのだが……。

気だるさ全開。もう少し「気だるい」パーセンテージが大きかったら、
とんでもない駄作になっているところを、絶妙な気だるさ加減で
物語がすすんで行くので、「あぁ、あるある」というような、自分の
なかの惰性との合致を感じることが出来て、とても親近感のわく本だった。
何かやりたいのに、何がやりたいのかも分からず、かといって、
何がしたくないわけでもなく。どっちつかずの優柔不断な今の若者の
姿がとても分かりやすく描かれている。果たして自分はそこまで
落ちぶれるか、と言われれば、せめて高校は卒業したと思うし、
もう少し銭湯ではないどこかでアルバイトをしたような気もするのだが、
主人公の思うところの、何かしたいのに、何も出来ず、流れに逆らう
ようにただそこに佇んでいる、という様子がとてもよかった。
対比となっている夢の話も、実はこの話さえも夢でした、と言わんばかり
の儚さで、温かさとは裏腹に、そうか現実なんてそんなものか、と
妙に感慨深く思ったりして、逆にいい効果を持ちえたような気がした。
しかし、なんなのでしょう、この魅力は、気だるくやる気のないその
雰囲気の中にあふれる、親しみを思える温かい感じ。でも何もしたく
ないわけではなくて、今は準備段階のような気がする。そう、気がする。
そのだらだらした「けしからん」を表現されそうな人間を、ある意味
愛しく、和やかに見つめることができるとてもいい作風だと思った。
終始まったり読める。時間があるときのほうがいいかも、と思いつつ。
他にも読んでみようと思った。

★★★★☆*86

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コメント

TBさせていただきました。
>そのだらだらした「けしからん」を表現されそうな人間を、ある意味愛しく、和やかに見つめることができるとてもいい作風
こんなフィーリング、私にもとっても合います。
私にとっては、大島真寿美さんに引き込まれていった感じは、うまく言葉で説明できないような魅力だったのですが、うまい言葉ですくい取ってもらえた感じです、ありがとうございます。
この作品の登場人物がちらほらする傑作(私からみて)『戦友の恋』を、早いうちに、どうぞ。

投稿: 時折 | 2011年1月18日 (火) 08:20

>時折さん

こんにちわ~。
そうそう、大島さんが気になっていたのも
実は時折さんのところでお見かけしたからでした。
お世話になりまくりです、ありがとうございます。
それにしてもなんなんでしょうねぇ、この魅力。
なんとも表現しがたい柔らかさがありますよね。
「雪見だいふく」みたいな弾力だと思います(妙な例え、笑)
中身はアイスではなく、あったかい何かだと思いますが。

井上さんといい、大島さんといい、
ちかごろ形容しがたい魅力にひきつけられますね。笑
それだけ自分も優柔不断な心がどこかにあるんでしょうかね。とか。

『戦友の恋』了解しました!
さきほど予約したので、明日借りてきます~。
後日お伺いします。

投稿: るい | 2011年1月19日 (水) 00:43

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