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2010年9月21日 (火)

「あしたはアルプスを歩こう」 角田光代

あしたはアルプスを歩こう (講談社文庫) あしたはアルプスを歩こう (講談社文庫)

著者:角田 光代
販売元:講談社
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角田さんのエッセイはあまり好きではない。というか、小説家の
エッセイは、あまり好きではない、と言った方がいいかもしれない。
冷静に考えて、一般的に小説家は家に篭って行う職業なので、個人的
なことの範囲が狭い(偏見?)今回は旅エッセイ、とてもよかったなぁ。

ある日見知らぬ人からファックスがきた。「イタリアにいきませんか?」
と、ある。「イタリアの山で、トレッキングしませんか?」と。
イタリアに山ってあるのか、というのが最初の感想である。
はて、トレッキングってなんぞや、というのが次に思ったこと。
イタリアにも山ぐらいあるんだろう、山歩きしようってことなんだろう、
と勝手に解釈し、しばらくファックスを眺めていた。
イタリアに行くことに決めた私は、山に着いた瞬間から、
なんかおかしいぞ、と思い始める。山は一面雪景色。おまけに
建物は一切見当たらず、山の急斜面が続くばかりである。
トレッキングとは、山を歩きピクニックすることではなかったのか?
私の不安はどんどん膨れ上がってゆくのだが……。

とても広大で美しい自然を目の前にした時、人は上手く言葉を操ること
ができない。キレイ、美しい、壮大、立派、素晴らしい、など、
それらを表現しようと文字を並べれば並べるほど、空虚で
ちっぽけなものに見えてしまうからだ。自然の素晴らしさは、
人為的なもので表現することは、きっと無理なのではないか。
この本の角田さんはそう解釈し、難しい表現を一切使っていない。
むしろ「言葉に出来ない」と言った、言葉の表現者としての
悔しさが書かれており、小説家である角田さんですら言葉にできないのか
と読者は受け取り、ますますその自然の景色が魅力的に思える
のだった。それと、一緒に山登りをするメンバーとの連帯感、
異国にいるという高揚、壮大な自然に佇むときの感情のすべらかさ
などが文章に表れていて、わくわくし浮ついている気分を、
文字を追うごとに感じることが出来た。海外旅行に未だ踏み切れない
わたしだが、この本を読んでとてもこころ惹かれた。
音楽を文章現すように、景色を文章で現すのは、至難の業である。
ましてや、読んでいるこちらにぜひ聴いてみたい、ぜひ行ってみたい、
と思わせるのは尚更である。その点、さすが角田さんだなぁ、
と言う感じ。初めて他人の旅行記で魅力を感じたように思う。
中には登山ルートの図解しかなかったので、写真くらいあっても
よかったかも、とも思う。一度読んでみる価値はある。

★★★★☆*88

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