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2010年9月 5日 (日)

「長い長い殺人」 宮部みゆき

長い長い殺人 (光文社文庫) 長い長い殺人 (光文社文庫)

著者:宮部 みゆき
販売元:光文社
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久しぶりに宮部さん。いつもそう言いながら読んでいる気がする。
宮部さんは昔よく読んでいたが、最近はめっきりである。けれども、
ふと忘れた頃にそわそわと読みたくなってくるのは、やはりこの宮部味
の吸引力によるだろう。どこからどう読んでも宮部みゆき。他に類はない。

殺された人間は森元隆一、三十三歳。森元は保険金をたっぷり
掛けられており、どう見ても保険金目当ての殺人として間違いなさそう
である。また容疑者もいる。森元の妻である法子の愛人・塚田だ。
あるいは、法子も塚田と共謀し、保険金を狙った可能性もある。
久しぶりの大きな事件に、わたしのあるじは緊張しているようだ。
そう、わたしは、あるじの財布である。事件の数日後、
今度は塚田の婚約者が何者かに殺された。こちらもまた保険金である。
事件は新たな展開を見せ始めたが、塚田も法子も今一歩逮捕には至らず……。

この本の一番の特徴と言えば、なんと言ってもこれだろう、
財布が主人公なのである。正確にいえば、主人公の財布が主人公、
と言うべきか……物語は連続短編になっており、財布は次々に
変わってゆく。警察官を始め被害者や関係者の財布が、事件を語るのだ。
なんとも風変わりな作品であり、ある意味小説でしか味わえない、
面白みがあるだろう。(ドラマでこれをやったら、
滑稽さが先にたって物語の面白みをかき消してしまうと思う)
と、褒めてみたものの、この財布効果がどれほどのものか、
いまいち図りかねる、というのが正直なところ。別に普通の描写でも
よかったのでは、と思いつつ、これぞ宮部みゆきのみぞなせる
エンターテイメント、とも思ったりする。物語については、
『模倣犯』を彷彿とさせる、犯人の猟奇的な感情が描かれている。
「俺は他の誰よりも偉いのだ」という狂った感情をもった人間が、
ひつように行うマスコミとの応報。何でもない一人の人間の
狂気に至るまでの描写が簡易でありながらとても納得でき、
さすが宮部さんだなぁと思った。いつしかの榊原事件のような、
ただ人に持て囃されたいだけの歪んだ意識が、
ポップな作風の中に、とても上手く描かれていたように思う。
少し雫井さんの『犯人に告ぐ』を思い出したりもした。
あれもある意味エンターテイメント性に富んだ面白い作品であるな。
やはりここに宮部みゆきあり、と思う。

★★★★☆*85

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