« 8/25a flood of circle@新宿LOFT | トップページ | 「パワー系181」 墨谷渉 »

2010年8月27日 (金)

「キラレ×キラレ」 森博嗣

キラレ×キラレ (講談社ノベルス) キラレ×キラレ (講談社ノベルス)

著者:森 博嗣
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


森博嗣は一体いつから社会派ミステリ担当になったのだろうか……、
と首をかしげた本だった。確かに森さんなんだけど、かつて、
「これぞ森博嗣」と言わしめていたその部分が、とても薄まっていて
どこにでもあるミステリ小説になってしまったなぁ、と思った。

椙田探偵事務所助手である小川は、同じく探偵である鷹知祐一郎と共に、
ある事件について調べることになった。ある日の満員の通勤電車内で、
三十代女性OLが、何者かによって背中を切りつけられたのだ。
体が密着し、身動きが取れなくなること数分。駅に着き、
電車の扉が開くと同時に、彼女たちはカッターのようなもので、
何者かに切りつけられられていた。傷は軽症で一度目は事件として扱われ
なかったが、現時点では三回の切り裂き事件が起きており、
いよいよ事件性を帯びてきた。合わせてその事件と関係性の高いと
されていた精神科病院の調剤師が殺される事件が発生し……。

森さんなんだけど、森さんじゃないような。スイカの赤くて美味しい
部分が、すでに誰かに食べれてしまった後、のようなスイカだった。
……と変な例えをしてみたが、あまり面白さ・面白み、といものを
感じられずに読了した。そもそも、通勤電車内で30代女性を切りつける、
なんていう事件を森博嗣が書くことにまず驚きである。なぜこんな
平凡な……云々、まずそこで文句。森博嗣、と言ったら、おいおい、
そりゃないだろ、的な死体の数々と、おいおい、そりゃないだろ、
的なトリックの数々が売りだったはずで、しかし今回の本ではそのような、
森博嗣味をまったく感じなかったのだ。おまけに、ストーリーが進む
過程において、登場人物が全て怪しい、という状態が、最初から
最後までつきまとう。助手の真鍋ですら、もしや犯人なんじゃ?
と思わせぶりな展開を見せるのに、結論に向けて犯人が、証拠などで
特定されてゆかない。登場人物中、全員誰が犯人でもOKみたいな
状態から、犯人はあの人でした!、と突然結論が出るので、
後からの説明(もはや後述談)がすべて、あとづけがましく、
大変残念な気分になる。例えばこの設定であっても、あいつが犯人かも、
そいつが犯人かも、と読者を左右に引っ張ることが出来たら、
もっと面白みがあった気もするけれども、それがないので、
本当、蜜のないスイカ、みたいな話だった。スイカって言われりゃ、
スイカだけど……みたいな、森さんって言われりゃ、森さんだけど、
な、納得のいかなさである。うーん。いや、森さん大好きですけどね。

★★☆☆☆*75

|

« 8/25a flood of circle@新宿LOFT | トップページ | 「パワー系181」 墨谷渉 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/36903500

この記事へのトラックバック一覧です: 「キラレ×キラレ」 森博嗣:

« 8/25a flood of circle@新宿LOFT | トップページ | 「パワー系181」 墨谷渉 »