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2010年8月 9日 (月)

「死国」 坂東眞砂子

死国 (角川文庫) 死国 (角川文庫)

著者:坂東 真砂子
販売元:角川書店
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坂東さん2冊目かな、前に「狗神」挫折した記憶が……。たまたま
ブックオフで手に取ったのだけれど、相変わらずなんとも言いがたい
吸引力のある作家だと思う。「山姥」のときは、もう感嘆、って感じ
で何も言えなかったけれど、この本はまだ人間味があるかもしれない。

恋人と仲たがいした比奈子は、昔住んでいた高知の村へと
気分転換に出かけることにした。名目では知人に貸していた村の
家の売却について検討するためである。村に近づくにつれ、
ふと当時一番仲のよかった莎代里とのことを思い出した。
今はどうしているだろう? 村に着き、旧友に莎代里の事を尋ねると、
衝撃的な事実を知らされた。莎代里は死んだというのである。
そして莎代里の母は今、莎代里を生き返らせようとしているらしい。
莎代里の家は元々霊的な家系でもあった。その上高知には、神の谷、
と呼ばれる山があり、そこにはたくさんの霊がいると言われていた。
不気味さに恐れを抱いたが、恐怖はそれだけでは済まなかった。
旧友たちが莎代里を思い出し始め昔話をするたび、比奈子は
霊的現象に遭い、莎代里の声を聞くようになってゆくのだが……。

なんだかなぁ、というのは人間関係の部分でしょうか。幼い頃
仲のよかった少女のことを、三十女になってから思い出し、
今も友だち、なんて思うのだろうか。あの頃の莎代里はあぁだったから、
今もきっとわたしのような気持ちで、なんて思うのだろうか。
わたしだったら思わない。しかも小学生だしなぁ。中学生だったら、
あの男の子が好きだのなんだのって、三角関係があってもおかしく
ないような気がするが、小学生のときの恋人について、三十になった
今も取り合うような、そんな心境になるのだろうか、とも思った。
という動機不足の逆恨みからの心霊現象で、なんだか納得がいかない
ような、気持ちになった。これがせめて中学生〜高校生くらいだったら、
その怨念がはっきりしたものになってよかったのではなかろうか。
……と、さておき、このおどろおどろしさは相当良質である。
「山姥」のときも思ったが、歴史を絡めた風土話がとても上質で、
読んでいるこちらにもっともらしい印象と、不気味さを与えてくれる。
四国が昔は死国と呼ばれていた、とかかなり安直な設定ではあるが、
踏み込むのを躊躇う森林の気配や、怨霊から逃げ切るための焦りが
大変上手くて、それでも突き進んでく主人公たちに、
「おい、やめとけって」と声を掛けたいくらいの気持ちになった。
最後のシーンが何とも微妙だったので、ここでもまた惜しいなぁと
感じたのだけれども、物語の魅力と言うよりも、歴史や怨霊という
見えないものに支配される人間たちの様子の描写に価値があるように
思えた。しばらくプチ坂東さんブーム続きそう。次は何読もうかしら。

★★★☆☆*82

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