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2010年7月 9日 (金)

「幽霊人命救助隊」 高野和明

幽霊人命救助隊 (文春文庫) 幽霊人命救助隊 (文春文庫)

著者:高野 和明
販売元:文藝春秋
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久しぶりにだいぶ泣いた本だった。日本では毎日30分に一人、
自殺で亡くなっている。それはわたしたちの周りの人間かもしれないし、
いつしか関わった誰かかもしれない。人はなぜ死にたくなるのだろう。
そう思い続けて、15年くらい経つけど。たまにまだ死にたくなる。

受験勉強で精神的に追いつめられた裕一は、神社の木にロープをかけ
首吊り自殺を図った。足を浮かせた瞬間、首にロープに食い込んで、
たちまちもの凄い後悔が襲った。そして意識を失った。
次に気がついたときには、過酷な崖を必死に上っていた。
いつまで続くか知れない崖だったが、ようやく頂上に辿り着くと、
そこには三人の人間がいた。強面のヤクザに気弱なサラリーマン、
それからアンニュイな笑みを浮かべる美女。どうやらこの四人は
現世で自殺をしたらしかった。現世の話で盛り上がるのもつかの間、
神と名乗る人物が空から現れ、四人に指令を出した。なんでも
自殺した人間は地獄にしかいけない、天国へ行くためには、
現世に戻り自殺しようとしている人間を百人救えというのだが……

世の中には勘違いしている人が多い。死んでしまいたいと思いつめる、
うつ病にかかった人間がいたとして、あなたはどうするだろうか。
話しかけないようにする、もしくは避ける。そんなに親しくないし、
悩んでいることを聞いてあげるような間柄でもない、それに自分が
聞いたとしても相手は答えたくないかもしれないから迷惑だろう。
なんて、考えるのは大きな間違いである。人それぞれ色々なパターンが
あるだろうが、うつ病にかかる大体の人間は、親身になって相談を
聞いてくれる人間を迷惑などと感じはしない。それよりも、
急によそよそしくなったり、あるいは返事をもらえなくなると言った
「距離を置かれる」状態に極度の不安を覚えるように思う。
大きな悩みがあるとして、その悩みで鬱々としている。自分は
世の中に必要ないのかもしれないと思う。死んでしまおうと思う。
周りの人間を見てみると、どうやら自分を避けているようである。
やはり自分は必要のない人間なのだ。死んでしまって当然だ。……
といった具合に感情に負の悪循環が生まれ、思考は絶望の一途を辿って
ゆくのである。それを阻止するためにはどうしたらいいか。
それはやはり率先して周りが声をかけることではないだろうか。
相談に乗らなくたっていい。例えば元気に一言声をかけるだけで、
ほんの僅かかもしれないが、その人のためになるはずなのだ。
もしもあの時一言わたしが声をかけていたら、彼は死を選ばなかった
かもしれない。わたしは何年も何年も悩み続けた。あの時どうして
わたしは声をかけなかったんだろう。そのときの気持ちが、
この本にはたくさん詰まっていた。また、落ち込んでいるときに、
誰かがかけてくれるたった一言の言葉が、何よりも感情を温めてくれる。
わたしは身をもって知ったその効果を、巧に描いていて感嘆だった。
救おうとする気持ちも、救われたいと願う気持ちも、この本には
溢れている。その両方の気持ちを知っているということは、
高野さんはどちらの気持ちをも味わったことがあるのだろうと思う。
死にたい気持ちはどこからやってくるのだろう。楽しく笑っている
ときには感じもしない小さな蟠りが、少しの気分の落ち込みで
増殖してゆく。ぐるぐると渦巻いて、思考を放してくれない。
二度と味わいたくないと思いながら、きっとまた思う日が来るだろう。
この本を読んで一人でも自殺する人が減ったらいいな、と思う。
わたしを含め。どちらの気持ちも知っている、それはしかし
ある意味でとても幸運なことのように思う。強く生きたいものです。

★★★★★*93

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