« 「りすん」 諏訪哲史 | トップページ | 「IN」 桐野夏生 »

2010年6月18日 (金)

「姑獲鳥の夏」 京極夏彦

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫) 文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

著者:京極 夏彦
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


『死ねばいいのに』という新刊が出たので、とても読みたかったのだけど、
ちょっと買うには躊躇われたので、家にある京極さんを探したら、
この本しかありませんでした。いやはや懐かしいです。買ったまま読んで
なかった本だし。一番最初に読んだのは、確か中学生の時です。

雑司が谷にある個人病院には、ある嫌な噂が流れていた。病院の娘の夫が、
密室の部屋から失踪したらしい。その上その娘の腹には夫との子を
授かっているが、夫が消えた呪いからか二十ヶ月も身籠ったままらしかった。
奇本の原稿を執筆している私はぜひともこの真意を調べあげ、
とある事実として匿名で寄稿しようと考えていた。昔からの友人である
古本屋の京極堂に相談したところ、話は奇妙な方向に流れた。
妖怪の仲間には、姑獲鳥という赤子を喰らう女の妖がいるという。
そうこうしているうち、もう一人の友人、探偵榎木津の元へは、美しい女性から
依頼が来ていた。なんとその女性は二十ヶ月身籠っている女の姉だと言うが……。

この本を岡山の後楽園で読んでいたのだが、なんとも場違いな本だった。
とても懐かしいなぁ、京極さん。このだらだら続く理詰め感、とか。
最後の方で、最初に熱弁したことがあれ?ひっくり返ってないか?、な
所とかも。言わずと知れた妖怪系小説のトップに立つ京極さんだが、
やはりわたしはこの本が一番印象深い。デビュー作であるこの本は、
出版社に持込みで編集者の目に留まったらしいが、こんな本を持込まれたら
そりゃあ驚きのあまり、プロに担がれてるんじゃないか、と思うよな、
思った。秀逸なのはやはりおどろおどろしさ。暗闇で後ろを振り返りたく
なる不気味さ。この本の中では失踪事件を隠蔽しようとした家族の
信じがたい行為(まぁ小説の中だからね……)と、京極堂が語る実しやか
な妖怪の話、そして主人公のねじれた記憶、という3つがとてもうまい具合に
混ざり合って、真実を疑い実体のない妖の力を信じてしまいそうになる
その心理をとても上手く利用していた。つらつらと妖怪話を続け、
読むこちら側を恐怖を植えつけておきながら、実は妖怪などいるはずは
ないのだ、と締めくくる京極堂に、今回も清々しさすら感じた。笑
それにしても長い。もうちょっと短かったら持運びに便利なのに……と
思いつつ、姑獲鳥の夏はまだ薄いほうだったなぁ、と思い出した。
やっぱり『死ねばいいのに』読みたいなぁ。

★★★☆☆*85

|

« 「りすん」 諏訪哲史 | トップページ | 「IN」 桐野夏生 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/35884082

この記事へのトラックバック一覧です: 「姑獲鳥の夏」 京極夏彦:

« 「りすん」 諏訪哲史 | トップページ | 「IN」 桐野夏生 »