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2010年6月14日 (月)

「ごめん」 原田マハ

ごめん ごめん

著者:原田 マハ
販売元:講談社
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原田さん2冊目。読んでいて気付いたのだが作風が西川美和によく似ていた。
女性作家というとなんだかパターン化しているような気もし、角田さんの
ようにだらだらと書き連ねるタイプの作家と、女ハードボイルド傾向の強い
作家が多いように思う。わたしは中性的な桐野夏生とか好きなんですけどね。

『ごめん』
陽菜子の隣のベッドには夫が眠っている。頭には白いキャップが被さり、
顔の三分の二は呼吸器に覆われている。体には無数の管が取り付けられ、
名の知らぬ液体がその中を満たしていた。夫の純一は恐らくこのまま
目を覚ますことはないのだろう。そんな絶望と同時に陽菜子は、
正哉のことを考えたいた。純一が建設現場で事故に巻き込まれた
と知らせが来たとき、陽菜子は不倫関係のある正哉と旅行していたのだった。
家に戻り部屋を掃除していると、陽菜子は見知らぬ通帳を見つけた。
その帳面には毎月給料日に10,210円の金がどこかの口座へ振り込まれている。
そうしてその翌日にはそれと全く同じ金額が元の通帳へと振り込まれている
のだった。純一は借金でもしていたのだろうか? それとも何か理由が
あってのことだろうか。不思議な金のやりとりに、陽菜子は急に不安に
駆られそれらを解明をしようと動き出すのだが……。

短編集。どれも過去回想型の物語であった。そういうテーマだったのか、
よくわからないが、どの話でも過去の出来事がキーになっており、
良くも悪くもそれらの過去によって現在の姿があると物語られていた。
前回読んだ『キネマの神様』とはだいぶ作風が違うように思えて
(新しい職業に就いて頑張ってみよう、な話だったので)こんなドロリ、
とした話もかけるんだなぁ、と思った。特にその過去が何らかの負の
要素を含んでおり、今の自分にとっていい影響を齎していない、
と強く押し出されているのだが、けれどその中で選んだ(過ぎた事によって
選択された)人生の経路は、決して間違いではなかった部分もあるし、
あるいは負だ負だ、と凝り固まって考えていた過去には、実は自分の
知らない一面が存在しており、それを知った時、まるで持っていた過去が
がらりと姿を変えるような気持ちの切り替えになる要素を含んでいる
と締めくくっているところが、西川さんととてもよく似ているような気がした。
そんなことを考えながら読んでいたら、面白いのだけれど、
なんだかパターン化した女性作家の作風と言うようなものがあるような
気がして、素直に手放しで楽しめなかった。前にもこんな話を読んだこと
あるよなぁ、と思ってしまうような、そんな感想も得た。批判的な
気持ちが生まれるのは矛盾にも、的確に人物の心を描いている、
という描写の上手さのせいでもある気がする。もっと文章が下手くそだったら、
味が出るようにも思うし、もっと感情を理解できていなかったら、
それが個性ともなり得るような、なんともパラドックスを感じた本だった。
物語的には、上質この上ない。「ごめん」なんかは、とても共感を得られて、
最後には不倫していた夫と自分の過ちの無念さと寂しさで胸が熱くなる
ほどだ。だけど何かが足りない。足りないそれが埋まったら、
敵なしのすごい小説になるだろうなぁ、と思う。でもまだ、足りない。

★★★★☆*87

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