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2010年5月 7日 (金)

「鷺と雪」 北村薫

鷺と雪 鷺と雪

著者:北村 薫
販売元:文藝春秋
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これで直木賞ですか……。なんかちょっと残念ですね、うーん。
ここ数年の直木賞はどうもなんかちょっと、という本が多い気が
します。確かに面白いんです。でもそれは「普通に」面白いのであって、
天下の「直木賞レベル」なのか、と考えると、うーんって感じで。

「不在の父」
桐原家のお嬢様、道子さんとお話ししていたところ、
遠い親戚である子爵・吉広様が行方不明であるという話が出た。
良家であるため、子爵がいなくなったとなれば大騒ぎである。
そのため現在桐原家では、吉広様は病気で臥せっていることに
なっており、真実は他言無用らしかった。その話を聞き、
わたしはふと先日の雅吉兄さんの話を思い出した。
東京――浅草の町で、吉広様によくにたルンペンさんを見かけた、
という話である。いなくなった時期と、雅吉兄さんの見かけた時期も
合っている。わたしは家に仕えているベッキーさんの力を借り、
吉広様を探そうと動き出すのだが……。

子爵、とかいう単語が出てきている時点である程度予想できるだろうが、
この本の舞台設定は、大正昭和初期ころの日本である。なんとも微妙な
時代設定である。その上、その微妙さを助長している原因は、筆者が
大正時代の人間ではない、という拭いがたいものだった。
まぁ、今を生きているのだから、仕方がないことではある。
もちろんそれに限りなく近づけることは、技巧として可能だろうが、
北村さんがそれをできているか、と聞かれると、ノーと答えたい。
まず雰囲気を想像できない。理由は、景色や建物、衣装、品物などの
描写が乏しく、想像を読者に任せているからだ。大正時代……もはや
わたしを含め若い世代には、想像のつきにくい、むしろ江戸時代と
変わらないくらいの平成との「時代の差」なるものを感じる時代である。
例えば芥川龍之介なんかは、もろに大正を生きた人だが、芥川の
書く物語には、自然と「大正」が息づいているのだった。書かれている
品々が、大正じみているというか、まぁそこにあったのだから当時
としては当たり前のものなのだけど、それはまさしく「大正」なのだ。
でも、北村さんのそれは、大正ではない。「大正、のようなもの」
といった微妙な違和感を感じ、「大正時代に作られた映画」ではなく、
「大正時代を模し作られた平成映画」といった感じがするのだった。
まるでそう、時代劇のような。主人公は平成の人間ではないか?と
思われるような思考回路。まわりは平成に作られた「大正の模倣風景」
といった、なんともいえない居心地の悪さがつきまとうのだった。
話は「普通に」面白い。北村さん、って感じがする。けれども、
これが直木賞なのか? と首を傾げる。何度も候補になっているから
妥協したのでは、と嫌な考えすら頭を過ぎる本だった。『スキップ』
三部作で取っておけばよかったんじゃ……みんなそう思うのではと。

★★★☆☆*82

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