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2010年4月20日 (火)

「ZOO 2」 乙一

ZOO〈2〉 (集英社文庫) ZOO〈2〉 (集英社文庫)

著者:乙一
販売元:集英社
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続きまして、乙一。久しぶりに読むと、本当にいい感情を持てる。
好きな作家だ、と言ってその作家ばかり読み続けると、わたしの場合、
絶対に飽きてしまう上に、マンネリを敏感に感じ取ってしまうため
(まぁその部分が個性とも言うが)時おり手に取るのが言いなと思う。

「Closet」
ミキは夫の弟であるリュウジに、部屋に来るようにと言われた。
部屋は散らかっており、片隅に大きなクローゼットが置かれている。
リュウジはミキが予想していた通り、ミキが犯した事故の
話しを持ち出した。ミキはその昔友人と車を運転していたところ、
飛び出してきた中学生の自転車をひっかけて、転ばせてしまった。
そして、あとになりその中学生が亡くなったことがわかったのだった。
弱みを握ったリュウジは、ミキに取り込もうとする。
しかしミキが一度部屋を出、再び戻ってくると、リュウジは
ソファの上で殺されていたのだった。ミキは自分が犯人だと疑われる
ことを恐れて、リュウジの死体をクローゼットの中に隠すのだが……。

乙一はカテゴリ分け不能、と言われているが、限りなくミステリ寄り、
であることは確かである。それ以前に、「狂気」カテゴリ、や、
「猟奇的」カテゴリがあるなら、まず最初にそちらに該当するだろう
けれども。さておき、内容はというと、この「Closet」が『ZOO』
の中では一番ミステリっぽい雰囲気である。最後の犯人がびっくり!系。
特にこの『ZOO』では猟奇的な味を全面に押し出しているけれど、
どちらかというと乙一の本領は、このびっくり!である。
「Closet」はそのびっくり!の中でも、かなり完成度の高い秀作だと思う。
ネタバレをしてしまうと、語り手が犯人形式。デビュー作である
『夏と花火と~』の「死体が主人公形式」を彷彿とさせる、
とんだ設定。頭の堅いミステリ畑の方々には非難轟々そうだが、
間違いなく新しい領域に踏み込んでいる、という感覚を得られる。
しかし、ミステリとなると、このスカスカした感じ(ライトノベル
だから、仕方ないのだが)あともうちょっと、と感じてしまうあたりが、
惜しい感じもするし、書き込みすぎるとライトノベルではなくなるし、
という中間地点にいるため、ミステリ好きとしては絶賛までに至らない。
だが新領域開拓には、伊坂幸太郎と並んで、成功した作家だと思う。
収められている他の作品は、『ZOO 1』と同じく、笑顔で狂気、満載。
「血液を探せ!」とか、本当に笑ってしまう。けれども、ふと我に
返り、笑ったその内容を冷静に見てみると、とても残酷なのである。
血を流し今にも死にそうな人を前に、指をさして大笑いする、この感覚。
笑いと残酷さ、それから悲しみと狂気のミスマッチの威力には、
いつも脱帽である。とりあえず「ライトノベルなんでしょ?」とか
ぶつぶつ言っていないで、一度は読んでみる価値のある本である。

★★★★☆*87

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