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2010年4月26日 (月)

「板尾日記」 板尾創路

板尾日記 板尾日記

著者:板尾 創路
販売元:リトルモア
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友人が半ば強引に貸してくれました。誓ってもいいですが、
自分から選ぶことは絶対にない本だったので、重い腰ながらも
どんなものやらとても好奇心が湧きました。だってお薦めらしいんです
もの。最初に言うと、わたしは人の日記やエッセイを読むのが嫌いです。

(Amazonより)
「人の日記を読んだりするのは最低やと思います。」板尾創路
可笑しくて、優しくて、心ざわめく365日。
板尾創路が1日も欠かす事なく
大学ノートに綴った日記を完全初公開。

はて、板尾創路。実のところ名前を聞いて顔をすぐに思い出せなかった。
もちろん見れば「あぁあの人ね」と分かったし、板尾さんが出ている
映画やテレビを何度となく観たことがあった。けれども、わたしに
とっての板尾さんの存在は、やはり「あぁあの人ね」と、それくらいの
重量でしかなく、だから、まるで知らない人の日記を盗み読んでいる、
そんな妙な気分になったのだった。テレビに出ているのだから、
どんな顔かも、どんな声かも知っている。そうして
どんな仕事をしているのかも知っているつもりであったが、読んで
感じたのは、わたしが思っていた板尾さんではなかった、ということだ。
一日数行。来る日も来る日も打ち合わせと撮影に明け暮れ、
月に一度は名古屋へ足を運ぶ。一般的なサラリーマンに比べたら、
撮影毎にテーマが変化し動いている分、分かりづらい気もするが、
しかしそこにあったのは、同じ物事がルーティンで繰り返されるだけの
単調な毎日だった。短い文章から漂ってくる、そこにひとりの人間が
生きている、という濃密な空気。似たような、同じような、
日を過ごしながら、その日その日、それぞれの事柄に悩んでいる。
確かに何かを作り出してはいるが、けれどその作り出すことさえも、
作業の一部のように思え、人間の営みなどこんなものかと愕然とした、
というのが一番の感想だった。芸能人は、人びとが羨望し
一番輝かしく思う人たちではないだろうか。そんな人たちの生活もまた
他の誰かと変わらない単調な生活のうえで成り立っている。悩みだって
人間くさく、また振り返れば馬鹿らしくもあり、けれどそのときは
いたって真剣で、そうして乗り越える小さなハードルこそが、
成長、もしくは経年の証であるように、改めて確認することができた。
この本で一番好きなところは、後半、ステージの上で地震に見舞われる
ところである。「どうせなら一緒に笑って死のう」というようなことを
板尾さんは言う。繰り返されてきた毎日が、途切れるその瞬間を覚悟し、
なんだかハッとした一行だった。自分の意思ではなく、人生が
終わってしまうかもしれないなどど、人間は常には考えていない。
そうした一瞬に何を考えるのか、それがある意味人間の本意だとも思う。
わたしは日記をつけるのが苦手で、いつも途中で挫折する。
読み返すのもあまり好きではない。けれど、例えば感情を書きとめない
にしろ、日々の生活を留めておくことは、いい事のように思う。
「記憶に残らなさそうな一日だった」と何箇所か出てくるが、
わたしの日常はそんな日であふれている気がして、そんな忘れられた
ひたちを、少しだけ、読み直してみたい気分になった。

★★★★☆*86

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