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2010年4月17日 (土)

「シンデレラ・ティース」 坂木司

シンデレラ・ティース (光文社文庫) シンデレラ・ティース (光文社文庫)

著者:坂木 司
販売元:光文社
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坂木さんお初。いや、前に『ワーキング・ホリデー』を読んだ記憶が
あるような気がするんですが(とても曖昧)、よく覚えていないので、
読んでいないことにします。今回は女子大生が主人公。本当に男性作家
ですか、と疑う文筆。北村薫を初めて読んだときの衝撃に似ています。

夏休み、楽しいアルバイトをしようと計画していたのに、
ママの作戦にまんまとはまった私は、大嫌いな歯医者の受付で
仕事をすることになってしまった。きゅいーんっていうあの音、
それからガガガガっていうあの音。それを聞いただけで、
固まってしまうくらい大嫌い。けれど、ここの歯医者には伯父さんも
いるし、黙って逃げ出すわけには行かなかった。最初は怯えながらの
接客だったものの、つづけるうちもっと大事なことに気づいた。
歯医者にくるお客さんの本当の気持ちである。来るなり不機嫌な
様子で受付から一番遠い席に座る男性。不機嫌なのにはどうやら
理由があるようなのだが……。

この女の子特有の、甘ったるい口調。これを女性作家が書いていたら、
きっとわたしは読むのを止めていただろう。けれども坂木さんは男性、
である。この本を薦めてくれた方曰く、この本が初めての女性主人公、
なのだそうだが、もう何ていうか、感嘆、としかいいようがない、
「女の子」がそこにいたのだった。裏を返せば、「裏のない女の子像」
(男性の理想というかキャラクター的というか)と、言えなくもないが
それにしても圧巻。女の子の気持ちをどうしてわかるんですか、
な領域で、ストーリーよりもその部分に感心して読んでしまった。
(むしろわたしよりも女の子の気持ちをわかっているような……)
内容はというと、一風変わったサロン型歯医者の受付女性の葛藤
である。歯医者、という怖い場所を、サロンという形式をとること
によって、もっと気軽に利用してもらおうというもの。そのためには、
普通の歯医者の「医者」的な部分を極力取り除き、もっと密接な
人間関係を築く。その工夫や、試行錯誤、もしくは人間の温かさ、
などが描かれている。これはミステリなのか? いや、ミステリでは
ないような気がするのだが、ちょっとしたなぞなぞ程度のミステリが
用意されている。あの男性はなぜ怒っていたのか、という問いに、
ストーリー上のヒントで、解決を導き出す。正直その部分は、
少々強引、というか、物語的、な感じもしなくもなかったのだが、
しかし、全体のこのふんわりとした女性感、他に類を見ない。
その部分を味わうために読むだけでも価値のある本だと思う。
雰囲気は、北村薫、濃い味。心理描写が美しい。

★★★★☆*87

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