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2010年4月27日 (火)

「ななつのこ」 加納朋子

ななつのこ (創元推理文庫) ななつのこ (創元推理文庫)

著者:加納 朋子
販売元:東京創元社
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初、加納さん。かなり昔に誰かにお薦めされたのですが、すっかり
読むのを忘れていました。すみません、誰か。ちゃんと読みました。
面白かったです。雰囲気は北村薫。(最近北村似多くないか?)
もしくは米澤穂信の毒気とミステリ要素を抜いたような感じかな。

「六 白いタンポポ」
私はふみさんの誘いを受け『低学年を対象とする、サマーキャンプ』
にボランティアの指導役として参加することになった。
小学校に入学したての子どもたちに、早く集団生活に慣れてもらうため
の試みである。食事の準備の時間になり、グループの中に女の子が一人
足りないことに気づいた私は、心当たりのあるウサギ小屋へと向かった。
真雪ちゃんは人見知りをするたちなのか、他の子どもたちと混ざろうと
しない。担任の先生によると、花の色塗りをする授業で、
タンポポを白い色に塗ったと言う話であった。情緒が欠落しているの
ではないだろうか。そんな中真雪ちゃんを任された私は、
何とか仲良くなろうと、『ななつのこ』という本の話をするのだが……。

主人公は女子大生だが、雰囲気はかなり優しいほわほわした
感じで進んでゆく。物語の中に出てくる『ななつのこ』という本も、
児童向けの本であるし、主人公を高校生くらいにして、読む層を
下げた方がいいのではないか、と思えた本だった。一応ミステリ、
と言うことになっているが、書かれているのは日常のなぞなぞ程度。
しかも解決してくれるのは、文通相手である。物語の中では、
「主人公が『ななつのこ』を読む」→「『ななつのこ』に関連した
事件の発生、内容を思い出す」→「謎を抱えて『ななつのこ』の作者
に手紙を出す」→「作者から手紙の返事がきて、問題解決」という
パターンを繰り返している。確かに面白いし、なぞなぞが解けたときの
なるほど!と思う感じも絶妙である。けれども、謎が発生し、
本を思い出し、手紙を書いて、謎解決、という回りくどい感じが、
少しの読みづらさを上長しているようにも思えた。
しかし、その複雑さをしのぐ形で、子どもでいて、子どもでない、
大人になりかけの少女の姿が自然に描かれており、とてもいい印象。
「白いタンポポ」では、少女と別れる際に、なぜか涙が流れそうになる、
その様子が、手に取るように分かり、共感を得ることができた。
読み始め「作者=私」なのではないか、という感じがするのが
少しいただけなかったけれど、読み進めると、どうやら違うらしい、
と分かる。これがデビュー作か、と思うと、単純に凄いと思う。
ちょっと詰め込み、な感じが処女作っぽいけれど、表現力と、
キャラクターの個性や表情を描く力は抜群である。他も読んでみよう。
ただ北村薫似、とか、誰かに「似ている」と分類されてしまうのが残念。

★★★★☆*88

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