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2010年4月22日 (木)

「gift」 古川日出男

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著者:古川 日出男
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古川さんは『ベルカ、吠えないのか?』が直木賞候補になった時に
少し読んで放置しました……。わたしは極力読了派なので、なかなか
波長が合わなくても読み進めるのですが、図書館の期限が迫り
返しました(言い訳)。候補になったの5年前か……早いです。

「アルパカ計画」
ここでちょっとアルパカの話しをしよう。
簡単に言えば、アルパカは南米大陸のラクダである。
かわいいか? けっこうかわいい。ヒツジ好きにはたまらない
生き物だろう。その上、毛質は最高級で、しかも長毛種では、
四十センチにも達して織物には美しい光沢が具わる。だが、生産量は
一頭につき三キロ程度と、ほんのわずかだ。生産の効率をいかに
あげるか? 輸入コストを下げる必要もある。そこで登場するのが、
《アルパカの方舟》である。アルパカは太平洋航路に乗った。
出港から七日間、天候は穏やかで、その   と書いたところで、
玄関の呼び鈴が鳴った。「どちらさんですか?」「あたしよ」
その声には確信が満ちていて、ぼくはすっかりアルパカを忘れ去る。
太平洋に旅立ったアルパカたちよ、おまえらはいま、どこにるんだ?

例えばこの短編集を絵画として妄想し表現してみると、
印象派のキリスト絵、ではないだろうか。大変居心地の悪くなる
本だった。『ベルカ、吠えないのか?』を放置してしまった理由も、
どこかで垣間見たような気もする。古川さんは「神」の存在を
信じているのか(洒落的な要素なのかもしれないが)、いたるところに
「あぁ神よ」的な発言があり、はたまた「妖精」などと言う非現実物も
実存していると押し込めてくる物語が多かった。突飛な転換により
作り出されるラストシーン(ショートショートに近いので、
もはや「オチ」とすら言える)が持ち味で、一瞬「尻切れトンボ」の
ように「虚」を突かれたのちに、「実はこういう心境の変化だったの」、
という感情変化のねじれが、この本の面白みのようだった。
だが、わたしは突然突き放される話があまり好きではないのと、
細部を描きながらも、抽象的な印象を出そうと物語をぶった切っている
ような気がしてしまい、あまり好きになれなかった。
もう少しねじれを浅くすれば万人受けするだろうものを、
ついてこれるものなら、ついてこいよ、とフルねじれを描いているのも
才能を感じると言うよりも、突き放している印象を受けるのだった。
しかし、「ありえない現実がもしも現実になったら」という部分に、
楽しみを見出せる人は、とても楽しい本なのだと思う。
濃い味、サイケな感じが、はまったら、面白いだろう。
わたしは「ありえない現実がもしも現実になったら」が、そもそも
ダメなので、ダメなのだけれど。他も読んでみるかなぁ、うーん。

★★☆☆☆*75

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