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2010年3月 8日 (月)

「覆面作家は二人いる」 北村薫

覆面作家は二人いる (角川文庫) 覆面作家は二人いる (角川文庫)

著者:北村 薫
販売元:角川書店
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北村さんを久しぶりに読みました、本自体も再読です。これ読んだの
いつだろうなぁ……。まだ北村さんが覆面作家で男性なのか女性なのか、
わからなかった時だと思うんですけど。読んでいたら、懐かしくなり
ました。それでもって、解説が宮部さんで、おおおと驚きました。笑

「覆面作家のクリスマス」
新妻千秋。ペンネームだとしたら、時代がかった、今時流行らない
ものだろう。先日投稿された小説の作者の名前である。小説の題も
『クリスマス』とあまりにそっけないものであったが、編集長の命令で
その自宅に執筆交渉に伺うことになった。ミステリを書くくらいだから、
貧相な男に違いない。こちらの予想を裏切り、辿り着いた先は、
超がつくほどの大豪邸であった。そこにはなんと執事までいるのだ。
奥の間に通され、いよいよ対面したのは天国的美貌を持つ十九歳の
令嬢だった。天然な彼女の、しかし頭の回転の速い話しを聞いていると
ふと、ある話をしてみたくなった。とある学園で起きた、クリスマスの
悲劇。未解決の殺人事件を語って聞かせると、彼女は顔色一つ変えず、
謎を解いてしまった。そしてすぐに現場に向かわなくては、と言う。
二人、豪邸の門を豪邸の門をくぐり街にくりだすのだが……。

ライトタッチで読みやすい、軽快なミステリ。見事なのは、人物の個性。
キャラクターが粒だっていて、感嘆の一言。名前を忘れることも
なければ、他の人物と間違えることもない。これだけの少ない描写で
ここまで濃厚な個性を描けるのは本当に凄いの一言である。
それと、最後の解説で宮部さんが書いているように「本格原理主義」
といえる物語の質が存在しており、筆がライトでありながら、
他にない上質な作品に仕上がっている。まさに「本格原理主義」とは、
上手いこと表現されている、と思う。このブレのない芯の部分には、
並々ならぬ信頼感があるだろう。トリック重視。誰でも可能であり
ながら、絶妙なひねり加減の工夫(トリック)が利いている。その上、
最大の重要ポイント「不自然でない」。トリックを重視するあまり、
絶対やらないだろうという不自然な行動をしないし、むしろ偶発すら
装う絶妙なしかけが施されている。ふわりとした描写に、隠された、
芯あるトリックに、読んでいるこちらは、驚くばかりである。
一つ(わたし個人的なものかもしれないが)欠点は、説明描写が
少なく、また作者自身の中で完結してしまっている描写、というものが
あり、一度読んだだけではよく分からない文がある点。もう少し説明が
あったら、その面白さ(ギャグ?)をもっと堪能できるだろうに、と
思う。何となく、漫才を見ていて、理解するのに時間がかかり、
ワンテンポ遅れて笑い始める、と言ったような、変な「間」を感じる
のだった。まぁそれも「味」と言えるのかもしれないのだが。
それとそう、この本には人称がない。僕も、俺も、ないので、
こちらでもまた不思議な感覚を得られる。また北村さん読もうっと。

★★★★☆*87

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