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2010年3月14日 (日)

【アンソロジー】「川に死体のある風景」

川に死体のある風景 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ん 5-1) 川に死体のある風景 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ん 5-1)

著者:大倉 崇裕,有栖川 有栖,歌野 晶午,佳多山 大地,黒田 研二,綾辻 行人
販売元:東京創元社
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お薦めいただいたので読んでみました。とてもインパクトのある
タイトルの本であります。そう言えば、綾辻さんを綾辻さんと
意識して読んだのは初めてでした。なるほどなるほど、好みだと
思います。ちょこちょこ他の本も読んでみようと思います。

「悪霊憑き」 綾辻行人
私の住む街の東地区を流れる一級河川、黒鷺川の支流の一つに、
深陰川と呼ばれる川がある。地元の者でもなければ名も知らないような、
ささやかな川である。その川である日ある事件が起こったのだが、
あろうことか、その第一発見者が私であった。それは、
川沿いの道を十分ほど登った場所であった。気持ちよく晴れた空の下、
私はある女性の死体を見つけた。成り行き上、女性の身元を
確認することになった私は、その顔を見て言葉を失った。
私はその女性の事を知っていた。その上、彼女の顔にほどこされた、
「メイク」に驚愕を覚えていた。そもそも彼女との出会いとは……。

今までアンソロジーを避けてきた節があるのだけれど、読んだことの
ない作家の新規開拓にもいいしなぁ、というわけで、最近は
アンソロジー強化中だったりする。アンソロジーはご存知の通り
いろんな作家が寄せ集められて出来ているので、自分の選り好み、
でかなり評価の変わってくる本だと思う。しかし、この本は、
なかなかだった。もちろん、この作家はちょっと肌が合わない、と
思った作家も実のところいたのだが、それにしても作品のレベルが
それぞれ高かった。それとミステリ、という分野は他よりも「競い」
と言うものがあり、茶目っ気の多い作家が多いので(わたしの感覚で)
「他の作家が思いつかないものにしよう」という強い意図を感じた。
どれもが濃い味。自分色全開で、だけど全力で同じテーマを貫く。
自分が一番この本で輝いてやる!という意気込みを感じたのだった。
テーマは勿論、タイトル通り「川に死体のあるミステリ」である。
わたしが一番面白かったのは、綾辻さんの「悪霊憑き」だった。
たぶん何かのシリーズものなのだろう、と思われる主人公が突然
語り始める川で死んだ女の話。実は怨霊に取りつかれていたのだ、
と話は頓珍漢な方へと進み、作られた世界につれてゆかれる。
しかし最後の方で(実に間抜けな感じで)真実が語られ、信じていた
世界がころり、と変わる様子が面白かった。何より、この綾辻さんの
物語は、今回の本について、まったくもってお誂え向き、ではなかった。
このアンソロジーのために書いたんです、という雰囲気は微塵もなく、
何かのシリーズの一つなんですよ、というさり気なさ。川、川、川、
とごり押しするのではなく、面白みは違う場所にある、という創り方が、
明暗を分けたように思う。他によかったのは、「捜索者」大倉崇裕や、
「玉川上死」歌野晶午だった。両者とも上記のような、さり気なさ、
を生かしていた。大倉さんは本当、山に死体がある、って感じでは
あったけれども、長編で読んでみたいなぁ、とも思える作だった。
上質ミステリアンソロジー。ちょっと味見をしてみたい時にお薦め。

★★★★☆*86

■収録
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「玉川上死」歌野晶午
「水底の連鎖」黒田研二
「捜索者」大倉崇裕
「この世でいちばん珍しい水死人」佳多山大地
「悪霊憑き」綾辻行人
「桜川のオフィーリア」有栖川有栖

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