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2010年3月 6日 (土)

「ウインクで乾杯」 東野圭吾

ウインクで乾杯 (ノン・ポシェット) ウインクで乾杯 (ノン・ポシェット)

著者:東野 圭吾
販売元:祥伝社
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何とも昭和の香り漂うタイトルですが、タイトルもさることながら、
内容も昭和の香りがぷんぷんしてました。こういうスタイルって、
どこで生まれるものなんでしょうね。雰囲気は、火曜サスペンスより
土曜ワイド劇場「美人コンパニオンの推理日誌」とかそういう雰囲気。

有名宝石店「華屋」のパーティにコンパニオンとして参加した香子は、
一人の男に目をつけていた。男の名は高見俊介――「華屋」の常連客で
あり、高見不動産の有力な跡取として噂されている男である。
宝石が大好きな香子は、是が非にでも高見と恋人となり、あわよくば
高級な宝石や財産を手に入れようと、玉の輿を狙っていたのだった。
パーティが終わり、偶然ホテルのラウンジで高見を見かけた香子は、
チャンスを逃すまいとして、接近していく。話が弾み、場所を変えて
食事をすることになった。店を移動し、高見を待っていたが、その間に
衝撃的な事件が起こった。同じコンパニオンとして働いていた絵里が
ホテルの客室で死んでいたのだった。現場は密室。しかし、絵里には、
自殺の動機がない。真相を暴こうと絵里は刑事の芝田に協力するが……。

土曜ワイド劇場「美人コンパニオンの推理日誌」、まさに言い当て妙。
くるくるの巻き毛に、真っ赤なルージュ、ボディコンのような衣装で、
笑顔を振りまく女。まさにバブルの女の描写だが、主人公香子は、
まさにそのような女である。これが流行っていた、というよりも、
それこそが普通、というような、動かしがたい何かが息づいている本、
である。それは宮部みゆきの古い本を読んでいる時にも、とてもよく
思うことなのだが、ある意味、価値があるもではないかと思う。
数十年経って、数百年経って読まれたときに、伝わる何か、である。
バブルというものをまったく知らない人間が読んだとしたら、決して
「古臭い」ではなく、違う感覚を得るのだろう、と思えるからである。
しかし、それ以外の、ミステリは、そのような時代の流れの何か、
で変わるものではないわけで。まぁ最先端の科学的なトリックなら
別だが、この本には一切そのようなトリックは使われていない。上に、
小学生でも思いつく呆気ないトリックであるために、そのバブル時代を
克明に描いている美点を全て打ち消して、「しょうもない感じ」、
いわゆるどこにでもありそうな、量産可能な物語(まさに土曜ワイド)、
に成り下がった、という感じであった。残念極まりない。
セロテープって……。本格推理小説!と押しているのが泣けてくる。
それに、もう一つの失点は、警察の捜査が一般人にだだ漏れであること。
しかも、その漏れ方が、男女の友情。これはちょっと……。
まぁまぁ文句は書いたけれど、まさに、土曜日にテレビで見られる
殺人事件という感じである。このスタイルは果たしてどこで生まれるのか。
そう言えば「華屋」はこんなときから、考えられていたのか、と驚き。
佐竹という男も、だいぶ登場するし、思い入れがあるんだろうな、と。

★★★☆☆*75

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