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2010年2月 7日 (日)

「雪が降る」 藤原伊織

雪が降る (講談社文庫) 雪が降る (講談社文庫)

著者:藤原 伊織
販売元:講談社
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なかなか好みが分かれる作家だと思う。内容、というか文章の運びや、
読みやすさにはまったく問題はないのだが、主人公のハードボイルド
具合や、すべてにおいての過去回想モードが何とも画一的。村上春樹
より柔らかく、本多孝好よりしっかりしたハードボイルドを求める方に。

「雪が降る」
トイレの鏡に対照的な四十代の男がふたり映る。
職場で徹夜をし、よれよれのネクタイを締める志村の姿と比べ
高橋一幸は男性誌の広告に載るエリートのようだった。お互い
男やもめだが、差はでるものである。所属の部署も、高橋は、
売り上げ三千億の食品部門のマーケティング部の次長である。
同期の仲間ではあるが、今さら競う気も起きない。高橋は社内に流れ
ている悪い噂について話そうとしたが、志村はそれに興味すら持てず
話を聞かずにトイレを出た。席に着き、パソコンでメールをチェックする。
すると、そこには見覚えのないアドレスからメールが届いていた。
タイトルは「雪が降る」。差出人を確認すると、高橋道夫、高橋の
息子からであった。「母を殺したのは、志村さん、あなたですね。」
志村は道夫に早速返信をし、会う約束を取り付けるのだが……。

いつも思うのだけども、ミステリの定義と言うのは難しいものだ。
この本も確か何に「珠玉のミステリ」みたいなことが書かれていたが、
まったくもって「ミステリ」ではないとわたしは思う。まぁ、広義の
意味では、純文学でもない?からミステリになるのかもしれないが、
「珠玉の」なんて、つけてしまっては、「もの凄くミステリ」みたい
ではないか、とかぶつぶつ。さて置き、内容はとてもハードボイルド系。
村上春樹をたくさん読んでいた頃に数冊読んだ覚えがあるのだが、
よく覚えていなかった。その時は特に感じなかったけれど、この本も
かなりハードボイルドな、感じに仕上がっている本だった。そもそも、
藤原さん自体がハードボイルド系を書く作家なのか……一冊では
判断がつきかねるが、まぁ、たぶんそうなんじゃないか、と。ちなみに
往々にしてハードボイルドはそうだけど、過去回想が多用されている。
何かが起きると「そう言えばあの時はああだった」みたいな回想が入り
しみじみし、何にしても覚めた眼差し、というのがハードボイルド的、
ではないかと思うのだが、そこが格好いいとされるポイントなのだろう。
しかし、この本は一遍の八割近くが回想なのであった。
クールな眼差しよりも、そこに至るまでの感情の方が多く描かれている。
それを好きと思うか、嫌いと思うか、だいぶ差が出るのでは、と思う。
わたしは、実はそこがあまり好みではない。それと、現実と、回想内
での感情がとても不一致に見えるというのも、少し原因なのだけど。
一番良かったのは表題作「雪が降る」かな。男性が読むと、
わたしなどよりも深く、こんなに格好いい中年男性の心情を書けるなんて
と思えるのかもしれない。あるいはそうなりたいとか、そういう方向に。
男くさく、子どもを書くのが上手い作家。解説にもあるけれどね。
長編を読んでみたい。

★★★★☆*85

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