« 2/28a flood of circle@十三ファンダンゴ『PARADOX PARADE』 | トップページ | 「整形美女」 姫野カオルコ »

2010年2月28日 (日)

「夫婦茶碗」 町田康

夫婦茶碗 (新潮文庫) 夫婦茶碗 (新潮文庫)

著者:町田 康
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


何だかだいぶ前にお薦めされて読み、放置されていたのだが、
改めてもう一度読んでみた。面白いねぇ、このセンス大好きだわ、
とか思いながら、喫茶店でむふむふ笑いながら読了。町田さん最近姿を
見ないなと思っていたけど、一昨年くらいまでは本を出しているようで。

「夫婦茶碗」
金がない。そんなこたぁわかってるのだが、働くのも面倒なので
わたしは黙ってソファーに座っている。何か一言でも発しよう
ものなら、隣にいる妻と不毛な問答が繰り広げられるのが経験的に
察知せらるるからである。というのは、「おまえさん、いったい
どうするつもりだい」「どうするったってしょうがねえじゃねえか、
まあ、なんとかならぁな」「じゃあ、なんとかおしよ」
なんて具合で、つまり、かのような問答を百年続けたところで、
得るところは無であって、それならいっそ黙っておいた方がよいのだ。
しかし、とうとう金はないのである。家族円満にくらすためにも
わたしは金を工面しようと、塗装工の職を得るのだが……。

短編2編収録。「夫婦茶碗」の方が面白かった。何より美点は、
この文章である。明治の、まるで太宰治を思わせる、だらり、とした
文章の中に、ここまで詰め込むか、と感心するユーモアなセンス。
テンポよく転がるように文字が進み、主人公の滑稽さに、思わず
笑ってしまうほどだった。漫画で笑うならまだいいが、小説で笑って
いるのは結構恥ずかしいものである。と、言いつつ、堪えることが
できずに、カフェオレを飲みながら、喫茶店でにやにや笑ってしまった。
さっき調べてみたら、色々文学賞をそう舐めしているようで、驚いた。
確かに、現代の人間で、このような崩れた文章を書ける人はそういない。
上質な小説が生まれ、積み重なるうちに、いいものだけが選りすぐられ、
受け継がれて、ちょっと変わった形式や、文章の個性といったものが、
なくなってきているように思う。あ、これは、と思っても、誰か
昔の作家の真似事のような雰囲気であったりして、新しさは感じない。
それを考えると、この町田さんの文章は、他にみないユーモアさ、
「古めかしい新しさ」というような、絶妙なセンスを感じたのだった。
一つの欠点は、これも太宰治のように、「言いたいことは唯一つ」
という命題である。主人公が変わっただけで、生まれ育ちや境遇が
似通っている。同じような起伏で挫折し、同じような上昇を見せる。
と言ったような「似たような話」をたくさん書くという人に分類
されがちな作風であった。ストーリーを生み出す、というよりも、
その中で生まれる感情の方の描き方が上手いというような。
まぁこの本しかちゃんと読んでいないので、定かではないけれども。
他の本もぼちぼち探ってみようと思います。

★★★★☆*87

|

« 2/28a flood of circle@十三ファンダンゴ『PARADOX PARADE』 | トップページ | 「整形美女」 姫野カオルコ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/126354/33628933

この記事へのトラックバック一覧です: 「夫婦茶碗」 町田康:

« 2/28a flood of circle@十三ファンダンゴ『PARADOX PARADE』 | トップページ | 「整形美女」 姫野カオルコ »