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2010年1月19日 (火)

「まぶしくて見えない」 山本文緒

まぶしくて見えない (集英社文庫) まぶしくて見えない (集英社文庫)

著者:山本 文緒
販売元:集英社
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なんかいつもと違うと思ったら、案の定コバルト文庫復刻版でした。
そうなんです、山本さんは少女小説出身の作家さんなのです。
わたしも知ってはいましたが、読んでみるのは初めてでした。
作風はそれもありかな、という感じで、しかし大変だな、と思いました。

七生は泳げない。飛び込み台に立っただけで、足がすくんでしまう。
その日も結局溺れてしまい、同じく泳げない伊戸川と共に教師に
怒られたのだった。教師は勉強だけは優秀な二人を前に、テストが
良ければ、なんでも許されるなんて思ってるだろう、と嫌味を言った。
頭にきた七生だったが、泳げるようになる自信はなかった。
高校受験が近づき、偏差値の高い高校を狙うことにした七生は、
評判がいいという伊戸川のいる塾に通うことにした。
風変わりな樺木による授業は面白く、また苦手な水泳も教えて
もらえることになり、充実した日々だった。何より年上の樺木を好きだ
と言う気持ちが芽生え、よりどきどきする。そんな時、受験する高校の
見学に行った七生は、その高校で樺木の彼女を見つけてしまうのだが……。

なんだか、読む気をなくさせてしまいそうなので、純粋に読んでみたい、
という方は、この感想を読まずにまずこの本をお読みになってください。
大変だな、というのは、「少女」という枠の中で描く、ということ。
わたしは山本さんの大人向けの他の本をだいぶ読んでいるので、
なんとなく羽を伸ばさず縮こまって頑張っている、という感じがした。
特に山本さんの魅力は、ストレスや苛立ち、そのストレスから解放
された時の開放感、何かへの固執、破滅的な恋愛、気持ちの蟠り、
などなど、どこからどう見ても「負」の描き方だと思う。しかし、
こういった少女向けにこれらを持ち込むことは出来ない。だから、
仕上がっている本は、それ以外を利用した物語であった。俗に言う
ピュアな恋愛、というヤツである。もちろん、まさしくピュアな
感じがしたし、それもありだなぁ、と言う気がしたけれど、持ち味、
と呼ばれるものは何も感じることが出来なかった。そこら辺の少女小説
と一緒に並べられ、著者名を伏せられたら見分けられないだろうな、
というような感じである。アサッテな言い分かもしれないが、
そんなことから、少女小説から一般小説に移ってくれてありがとう、
と感謝したくなった本だった。一方で、あとがきでも「今ならもっと
上手く書けそうだ、とむず痒い」「片腹痛い」などと山本さんも書いて
いるが、今大人の表現力と直木賞を得た山本さんの少女小説は、
ちょっと読んでみたいとも思う。しかし、このタイトル、ちょっと
賛成しない。まぶしい先にあるものが、どうも黒すぎるのである。
ピュアな恋に、初々しい学生という枠組み、そんな少女たちが、
まぶしくて眼を細めるのが、そんなものなのか? と残念に思った。
一度読んでみる価値あり、この本の後に「恋愛中毒」を読むべし。笑

★★★☆☆*83

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