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2010年1月 6日 (水)

「パレード」 川上弘美

パレード パレード

著者:川上 弘美
販売元:平凡社
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そういえば、「はじめての文学」シリーズを読んでみたいなぁ、
と思いつつ、かれこれ数年経っている。川上さんのも、当然ある。
村上春樹もあったし、重松清もあったし、小川洋子もあった気がする。
吉田さんはまだない。しかし、なんとなくよしもとばななとかが、最適ね。

「昔の話をしてください」とセンセイが言った。センセイの家でそうめんを
食べ、眠くなったからと2人ごろりと横になったときである。
センセイはわたしのてのひらをぽんぽんと叩きながら、言った。
センセイの手が、温かい。叩かれている部分から、温かいものが
からだじゅうに広がってくる。「昔、っていうほど生きていませんけど、
小さいころの話でも、しましょうか」わたしは話し始める。
小学生のときに、わたしの前に現われた、2人の赤い天狗の話を。

「センセイの鞄」の続編、というか、サイドストーリー的な本。
出てくるのはツキコとセンセイである。あとがきにもあるように、
もしかしたら、あったかもしれない2人の時間、が描かれていた。
小説を読んでいるといつも思うのだが、登場人物が「生きている」本
というものがある。生き生きしている、というか、なまめかしいというか、
一言で言ってしまえば、キャラクターが立つ、というものなんだけど、
本の中で生きていて、その本の上のストーリー以外でも、生活を想像して
しまうような登場人物がいる。ミステリではほぼ感じられない分野である。
もちろん、ミステリでだってキャラクターは感じられるけれども、
そうじゃないんだよな、その奥の温かい部分、私生活の部分を、なのだ。
そう言った描きが、川上さんは抜群に上手い。まるでそういう人が
もともと存在していたような(もちろん本の中で、なのだが)
気持ちになるし、本を閉じた後も、その本の中で生きつづけているような
不思議な感覚を得る事が出来る。そして、この本の内容は、とても川上さん
らしい内容になっている。「センセイの鞄」ではやや抑えられていた、
現実にはありえない存在の登場が描かれている。ありえない、というより、
あったらいいな、なのだが。その空想が具現化するという面白さを、
この本でも感じることが出来た。こんなやつがいたら、自分を間接的に
もっとよく知る事が出来ていいな、と思う。「昔の話」は特に、
「センセイの鞄」とは繋がっていないので、別ストーリーとして出てきても
面白かっただろうな、と思う。「いつごろまでいたんですか」「ひみつ」
「なるほど」ゆっくり流れる、温かい会話を堪能したいときに。

★★★★☆*87

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